訴訟の途中における会社の合併・代表取締役の変更

訴訟・争訟

 当社は、業界最大手のX社に吸収合併されることとなり、X社との間で合併契約を締結して、当社株主総会の承認決議も得ましたが、今般、反対株主から、株式買取請求訴訟を提起されてしまいました。
 合併の効力発生日は、約2か月後とされています。合併の効力が発生すると、当社の法人格は消滅するはずですが、係属中の訴訟については、どうなってしまうのでしょうか。

 訴訟当事者である会社の合併による消滅は、訴訟手続の中断事由とされており、その後に合併存続会社が訴訟手続を受け継がなければならないのが原則ですが、訴訟代理人が選任されている場合は、訴訟手続は中断しません。ただし、この場合でも、中断事由の発生を書面で裁判所に届け出る必要があり、実務上は、会社の登記事項証明書等を添付資料とした上申書を裁判所に提出することになります。

解説

訴訟当事者である会社の合併による消滅

訴訟手続の中断事由

 訴訟当事者につき、以下の①~⑥に記載する事由(訴訟手続の中断事由)が生じた場合、訴訟手続は中断し、それぞれ以下の受継者が訴訟手続を受け継がなければならない(訴訟手続の受継こととされています(民事訴訟法124条1項1~6号)。

中 断 事 由 受 継 者
当事者の死亡 相続人、相続財産管理人その他法令により訴訟を続行すべき者(例:遺言執行者)
当事者である法人の合併による消滅 合併によって設立された法人または合併後存続する法人
当事者の訴訟能力の喪失(例:成年後見の開始)
または法定代理人の死亡もしくは代理権の消滅
法定代理人(例:成年後見人)または訴訟能力を有するに至った当事者
当事者である受託者等の信託の任務終了 新受託者等
一定の資格を有する者で自己の名で他人のために訴訟の当事者となるもの(例:破産管財人、遺言執行者)の死亡その他の事由による資格の喪失 同一の資格を有する者
選定当事者(民事訴訟法30条。例:公害訴訟における多数の被害者の中から訴訟追行者として選ばれた1名または数名の者)の全員の死亡その他の事由による資格の喪失 選定者の全員または新たな選定当事者

 訴訟当事者が会社である場合は、上記②が生じやすいものと思われますが、あくまでも当事者が合併消滅会社であるときに訴訟手続の中断事由となるものであって、合併存続会社であるときはこの限りではありません。  

訴訟代理人が選任されている場合

 訴訟手続の中断事由が生じたとしても、訴訟代理人が選任されている場合は、訴訟手続は中断しないものとされています(民事訴訟法124条2項)。この規定は、法律上は、訴訟手続の中断および受継という原則に対する例外を定めるものと位置付けられますが、実務上は、会社が訴訟当事者となる場合、弁護士に訴訟代理人を委任することがほとんどでしょうから、訴訟当事者である会社が合併により消滅したとしても、この規定により訴訟手続の中断は生じないことが多いものと思われます。

 ただし、上記の場合でも、訴訟代理人は、訴訟手続の中断事由が生じた旨を裁判所に書面で届け出なければならないこととされており(民事訴訟規則52条)、実務上は、訴訟当事者である会社が合併により消滅した旨を上申書に記載して、裁判所に提出するのが一般的です。また、このときは通常、訴訟手続の受継時(民事訴訟規則51条2項参照)に準じて、会社の合併を証するための登記事項証明書等を上申書に添付します。なお、合併登記(会社法921条)の手続が法務局において完了するまでには一定の期間を要し、この間は登記事項証明書等の発行を受けることもできませんので、裁判所に対しては、先に上申書のみを提出し、後日登記事項証明書等を追完するという方法をとることもあり、具体的にどうするかは裁判所書記官と協議して決めればよいでしょう。

訴訟当事者である会社の代表取締役の変更

 上記に対し、訴訟当事者である会社の代表取締役が訴訟の途中で変更したというだけであれば、そのことは訴訟手続の中断事由には該当せず、裁判所への届出も、明示的に義務付けられているわけではありません。
 もっとも、会社が訴訟当事者となる場合、その訴訟の判決書や和解調書には、当事者の記載として、会社名のみならず代表取締役の氏名も記載されます。そのため、実務上は、代表取締役の変更があった場合、その旨を裁判所に連絡するのが一般的であり、上申書を提出するとともに、代表者事項証明書等を添付資料とすることになります。

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