最新税務判例ポイント解説

第2回 「公正妥当な会計処理」の判断基準はどこか?

税務

債権流動化の会計処理をめぐる税務訴訟

 東京高裁は、平成26年8月29日、債権流動化の会計処理をめぐる税務訴訟において、注目すべき納税者逆転勝訴判決を下しました。

 法人税法上の税務処理は、原則として、一般に公正妥当と認められる会計処理(「公正妥当な会計処理」)の基準に従うこととされています(同法22条4項)。ただし、法人税法に「別段の定め」がある場合は、「公正妥当な会計処理」とは異なる税務処理をすることとされており(同法22条2項、3項)、実際に同法には多数の「別段の定め」が存在します。

 ところが、近時、法人税法には「別段の定め」が明示的には存在しないにもかかわらず、納税者が採用した会計処理とは異なる税務処理をすべきとする判決が下されるケースが発生しています(東京高裁平成25年7月19日判決等)。本件でも、第一審は、納税者が採用した会計処理は「公正妥当な会計処理」ではないため、当該会計処理とは異なる税務処理をすべきとする納税者敗訴判決を下していました(東京地裁平成24年11月2日判決)。

 そのため、納税者が採用した会計処理が「公正妥当な会計処理」ではないとして税務上否認されるのは、どういう場合か、その線引きが実務的に問題となっています。本件は、この点の判断が第一審と控訴審とで割れた例として注目されています。

本件の争点

 本件は、住宅ローン債権の流動化取引の会計処理が問題となりました。納税者は、資金調達を目的として、その保有する住宅ローン債権につき、納税者を委託者、信託銀行を受託者とする信託契約を締結して信託譲渡しました。そして、この信託契約に基づく信託受益権(信託譲渡した資産から発生する経済的利益を受ける権利)として、優先的に元本が償還される優先受益権と、優先受益権の元本が全額償還された後に元本が償還される劣後受益権を創設し、優先受益権は投資家に売却、劣後受益権は納税者が保有することとしました。

 前記の取引の結果、納税者が保有する劣後受益権の帳簿価額は、その元本金額よりも大きくなりました。このような場合の会計処理について、金融商品会計実務指針105項では、以下のように定めています。

金融商品会計実務指針105項

債権の支払日までの金利を反映して債権金額と異なる価額で債権を取得した場合には、取得時に取得価額で貸借対照表に計上し、取得価額と債権金額との差額について償却原価法に基づき会計処理を行う。

 そこで納税者は、劣後受益権の帳簿価額(取得価額)と元本金額(債権金額)との間の差額は市場の金利水準と住宅ローン債権の約定金利が異なることにより生じたものであり、債権の支払日までの金利を反映したものと考えられることから、金融商品会計実務指針105項を適用し、償却原価法により会計処理することとして、この会計処理に従って税務処理を行いました。

 これに対し、税務当局は、納税者が採用した会計処理は「公正妥当な会計処理」ではないとして、当該会計処理とは異なる税務処理に基づく処分を行いました。具体的には、上記差額のうち償却原価法により会計上費用とされた部分を税務上損金算入することを否定しました。そのため、納税者が採用した会計処理が「公正妥当な会計処理」といえるのかが争点になりました。

裁判所の判断と実務上の留意点

裁判所の判断ポイント

 この点について、前述したとおり、東京地裁では納税者が採用した会計処理は「公正妥当な会計処理」ではないとしました。

 東京高裁では、まず、金融商品会計実務指針105項は債権を第三者から購入して取得する場合に適用されるものであるため、本件のように、もともと保有していた住宅ローン債権を信託譲渡したことにより保有することになった劣後受益権には適用されないとしました。しかし、次の理由から、結論としては納税者が採用した会計処理は「公正妥当な会計処理」といえると判示しました。

 すなわち、 取引の経済的実態からみて合理的なものとみられる収益計上の基準の中から、特定の基準を選択し、継続してその基準によって収益を計上している場合には、法人税法上も、その会計処理を正当なものとして是認すべきといえます。

 したがって、納税者が劣後受益権について、金融商品会計実務指針105項を類推適用した場合と同様の会計処理をし、継続して同様の処理基準により収益を計上したことが、取引の経済的実態からみて合理的なものである場合には、「公正妥当な会計処理」として認められるというのが裁判所の理由です。

実務上の留意点

 この裁判所の判断は、会計基準を類推適用した会計処理であっても「公正妥当な会計処理」といえる余地を広く認めたものということができます。もっとも、法人税法が企図する公平な所得計算の要請に反するような会計処理が行われた場合には、「公正妥当な会計処理」とはいえないという理解を前提とするものと考えられます。

 今後の対応としては、このような裁判所の判断を踏まえ、納税者が採用する会計処理が「公正妥当な会計処理」といえるかについては、会計と税務の専門家と協働して検証することが有益といえます。

東京高裁は、平成26年8月29日、債権流動化の会計処理をめぐる税務訴訟において、注目すべき納税者逆転勝訴判決を下しました。納税者の会計処理が「公正妥当な会計処理」といえるかについては、会計と税務の専門家と協働して検証することが有益です。
コンテンツの更新情報、法改正、重要判例をもう見逃さない!メールマガジン配信中!無料会員登録はこちらから
  • facebook
  • Twitter

関連する特集