役員報酬を支給する際に留意すべき役員の範囲

税務

 法人税法上の役員、使用人兼務役員の範囲について教えてください。

 法人税法上の役員とは、会社法上の役員に加えて、使用人以外の者で法人の経営に従事しているものを含みます。たとえば、会社法上の役員の地位を伴わない会長・顧問などの名誉職であっても、法人税法上は役員とされることがあります。

 法人税法上の使用人兼務役員とは、役員のうち、部長、課長その他法人の使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事するものをいいます。副社長、専務、常務などは使用人兼務役員から除外されますが、自称専務、自称常務などは除外されません。

解説

法人税法上の役員

(1)法人税独自の「役員」概念

 法人税法は、会社法の「役員」概念を借用せずに、独自の定義規定を設けています。すなわち、法人税法において、「役員」には、取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事および清算人に加えて、以下の者も含まれます法人税法2条15号、法人税法施行令7条。みなし役員)。

  1. 法人の使用人以外の者でその法人の経営に従事しているもの

  2. 同族会社(法人税法2条10号)の使用人のうち、次の要件のすべてを満たしている者で、その会社の経営に従事しているもの

    (a) 当該会社の株主グループにつきその所有割合が最も大きいものから順次その順位を付し、第一順位の株主グループの所有割合に第二順位および第三順位の所有割合を加算した場合において、その役員が次のいずれかに属していること

    • 第一順位の株主グループの所有割合が50%超である場合のその株主グループ
    • 第一順位および第二順位の株主グループの所有割合を合計した場合にその所有割合がはじめて50%超となるときのこれらの株主グループ
    • 第一順位から第三順位までの株主グループの所有割合を合計した場合にその所有割合がはじめて50%超となるときのこれらの株主グループ

    (b) 当該役員の属する株主グループの所有割合が10%超であること


    (c) 当該役員(配偶者およびその者の所有割合が50%超である他の会社を含む)の所有割合が5%超であること

(2)創業者の相談役就任は要注意

 の典型例は、会社の創業者が代表取締役を退任して、会長、相談役、顧問など会社法上の役員としての地位を伴わない名誉職に就くような場合です。

 代表取締役としての地位を有していないとはいえ、創業者の意向は無視できないことも多く、その結果、創業者が従来と変わるところなく経営の重要事項について報告を受け、その意思決定に関与し続ける例は少なくありません。

 このような会長、相談役、顧問などは、会社法上は役員としての地位を有しませんが、経営に従事しているとして、法人税法上は「役員」とされる可能性があります。そうすると、たとえば、創業者の「退職」を機に支払った役員退職金が、退職給与(法人税法34条1項)ではなく、役員賞与(同項各号に該当しない役員給与)として損金不算入とされる可能性が出てくることになります。

(3)「経営に従事」の判断基準

 問題は、「経営に従事」の判断基準です。これまでの裁判例や裁決例をみると、会社の重要事項の意思決定に参画しているかどうかが重視されているようです。最近の裁決例でも、代表取締役として署名押印している契約書が存在していたとしても、実際に意思決定に関与した状況が明らかでない場合には、「経営に従事」したとはいえないと判断しています(国税不服審判所平成28年3月31日裁決・裁決事例集102集)。

 ただ、意思決定への関与の程度については、中小企業の意思決定過程が明確でないこともあって、やや相対的に判断される傾向があるように思います。相対的な判断とは、たとえば、使用人であることについて争いがない者と同程度の関与ということになると、「経営に従事」していないと判断されやすいということです。逆に、他の役員と同程度の関与をしている場合には、「経営に従事」していると判断されやすいといえます。

 なお、会社法上の役員については、意思決定の関与の程度を特に問うことなく、法人税法上も役員として取り扱われることになります。仮に職務執行停止中の取締役であったとしても、法人税法上は「役員」です。

使用人兼務役員

(1)使用人兼務役員の意義

 使用人兼務役員とは、役員のうち、部長、課長その他法人の使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事するものをいいます(法人税法34条5項)。

 ただし、次の役員は、使用人兼務役員から除外されています。

  • 代表取締役、代表執行役、代表理事および清算人
  • 副社長、専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員
  • 合名会社、合資会社および合同会社の業務を執行する社員
  • 指名委員会等設置会社の取締役、監査等委員である取締役、会計参与、監査役、監事
  • 前記1(1)のみなし役員

 使用人兼務役員に対して支給される給与のうち、使用人部分の給与に対しては、相当な金額の範囲内で損金の額に算入されます。つまり、使用人兼務役員の給与のうち、使用人部分は、役員給与部分と異なり、定期同額等の要件を満たすことなく、損金算入されるということです(法人税法34条1項。ただし、過大性の判断は役員部分との合計額で判断することとされています)。

使用人兼務役員の給与

(2)副社長、専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位

 前述のとおり、使用人兼務役員から、「副社長、専務、常務」などが除かれています。しかし、「副社長、専務、常務」という概念は会社法その他の法律で定義されていません。あくまで、会社の内部組織上の地位に過ぎません。そのため、「専務」や「常務」という肩書が付されていても、「経営に従事」する程度は、使用人と大きく異なるところはないという場合もあります。

 課税実務では、「専務」や「常務」という地位が定款・取締役会決議等により付与された場合にはこれにあたるが、単なる通称はこれにあたらないとされています(法人税基本通達9−2−4)。

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