役員・従業員が不正行為を行った場合に重加算税が課されるケース

税務

 役員・従業員が横領等の不正行為を行った場合に重加算税が課せられるのは、どのようなケースでしょうか。

 ①不正行為を行った者の地位、②付与されていた権限、③不正行為の認識可能性、是正防止の可能性などを勘案して、不正行為を法人の行為と同視できる場合には、不正行為により過少申告等の結果が生じていれば、重加算税が課されます。

解説

重加算税の賦課要件

 納税者が課税標準等または税額等の計算の基礎となる事実の全部または一部を隠蔽・仮装し、隠蔽・仮装したところに基づいて、過少申告または無申告となっている場合には、重加算税が課せられます国税通則法68条)。

重加算税の賦課要件

 この重加算税という税金は、刑罰ではなく、行政上の制裁なので、原則として、過少申告または無申告となっていることを認識している必要はありません1。ただ、隠蔽・仮装という語義からして、隠蔽・仮装の故意は必要とされています。たとえば、誤って証憑を損壊した場合や過失により事実を誤認して真実と異なる内容を記載した証憑を作成した場合であっても、故意がないので、重加算税の賦課要件は満たしません。

隠蔽・仮装の主体

 重加算税の賦課要件を定めている国税通則法68条は、「納税者が・・・隠蔽し、又は仮装し」と規定しています。したがって、文理上は、納税者である法人と同一視できる代表者が、隠蔽・仮装した場合にしか、重加算税が課されないということになりそうです。しかし、それでは、法人が大規模であればあるほど、役割分担が進んだ結果、重加算税を課すことが困難になるという、やや非常識な結論となります(民法の使用者責任と同様の価値判断です)。

 そこで、代表者以外の役員、従業員が隠蔽・仮装を行ったときであっても、それを納税者自身の行為と同視できる場合には、重加算税を賦課することが、解釈によって認められています

 納税者本人の行為と同視できるか否かは、①隠蔽・仮装を行った者の地位、②付与されていた権限(事実上容認していたような場合も含みます)、③隠蔽・仮装の認識可能性、是正防止の可能性などといった注意義務違反の有無・程度などを考慮して判断されます(このあたりの判断要素も民法の使用者責任と通じるところがあります)。一般論としていえば、地位が高ければ高いほど、また、付与された権限が大きければ大きいほど、要求される注意義務違反の有無・程度は小さくなっています。

役員・従業員の不正行為を納税者の行為と同視できるか

 代表者以外の役員、従業員の隠蔽・仮装による重加算税が問題となる事例の典型が、役員、従業員が自らの利益を得るために行った架空外注費、売上除外を実行するという事例です(税務調査でもよく問題になります)。

 こういった役員・従業員の不正行為があったという事例では、法人は横領・詐欺の被害者ともいえます。ただ、架空外注費、売上除外を実行するための架空請求書を作成したり、請求書を破棄したりする行為が隠蔽・仮装の典型であるため、このような隠蔽・仮装が、納税者本人の行為と同視できる場合には、重加算税の賦課要件を満たすことになります。

 それでは、どのような場合に、役員、従業員が行った隠蔽・仮装が納税者本人の行為と同視できるのでしょうか。これまでの裁判例から、おおむね次のような傾向が見て取れます。

(1)取締役が自己の職務遂行の過程で隠蔽・仮装を行った場合には、認識可能性にかかわらず、納税者本人の行為と同視される。

(2)経理部長など特定の業務分野について裁量のある判断権が付与されている上級職員の場合には、認識可能性、防止是正の可能性など注意義務違反の有無・程度が検討されるが、結果として、認識可能性がない、是正防止の可能性がないとされたことはほとんどない。

(3)一般的な従業員の場合には、認識可能性、是正防止の可能性など注意義務違反の有無・程度が慎重に検討される。その結果、納税者本人の行為と同視できないとされることもある。

損害賠償請求権および貸倒損失の問題(過少申告の有無)

所得計算上加算と減算の両方が立つ

 重加算税を賦課するためには、隠蔽・仮装に加えて、過少申告が発生していることも必要です。

 架空外注費による横領・詐欺を例に取れば、法人は架空であることを知らず、その外注費を損金の額に算入して申告をしますが、架空の外注費ですので、損金の額に算入することはできません。したがって、架空外注費は所得計算上の加算項目ということになります。
 しかし、役員・従業員の不正行為によって法人の財産を詐取または領得されているので、架空外注費と同額の損失(損害)が生じます。つまり、役員・従業員の不正行為によって、同時に、横領損という所得計算上の減算項目も立つことになるわけです。

損害賠償請求権の収益認識時期

 次に、そのように損害を被った法人は、不正を行った従業員に対して損害賠償請求権を取得することになります。法人税法上は、損害賠償金の取得も、収益として認識することになりますが、その認識時期がさらに問題となります。役員・従業員の不正行為が認識しえず、実際に権利行使が困難であったとしても、損害が発生した時点で、収益として認識をすべきなのでしょうか。

 もともと重加算税が問題となる事例では、納税者の行為と同視するか否かという局面で、認識可能性、是正防止可能性が検証され、結果として、それが認められることが多いといえます。そのため、これまでの裁判例では、損害が発生した時点で、収益を認識すべきという判断が下される傾向が強かったと思われますが、地裁レベルでは、近時、客観的な権利行使可能性がないとして、損害が生じた時点で収益を認識すべきでないと判示した裁判例も出てきています。仮に損害が生じた時点で収益を認識しないということになると、過少申告の結果が生じないということになるので、重加算税も賦課されないということになります。

損害賠償請求権の貸倒れ

 最後に、貸倒れの問題があります。法人が不正行為を行った役員・従業員に対して損害賠償請求権を行使したとしても、回収できないことも少なくありません。そのような場合は、さらに、損害賠償請求権の貸倒れが問題となるわけです。仮に貸倒れが認められれば、過少申告の結果が生じないということになります。ただ、貸倒れの判定については、通常の貸倒れと変わるところはなく、簡単に認められるわけではありません。

 なお、架空外注費のように、直接、法人に損害を与える類型ではなく、リベート料など取引先から一定の経済的利益を収受する場合には、その経済的利益がそもそも法人に帰属するものなのか、という点も問題となります。仮に、法人に帰属しないということになると、そもそも法人に損害が生じていないので、過少申告が生じておらず、重加算税は賦課できないということになります。


  1. 積極的な仮装隠蔽行為を伴わない、いわゆる「ことさら重課」といわれる類型では、例外的に、当初から所得を過少に申告する意図が必要とされています。 ↩︎

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