不動産の証券化(流動化)における不動産特定共同事業スキームの仕組み

不動産

 不動産の証券化(流動化)における不動産特定共同事業スキームの仕組みは、どのようなものでしょうか。

 不動産特定共同事業法(以下「不特法」といいます。)2条6項に定める「特例業務」として不動産の証券化(流動化)を行う仕組みであり、SPC(「特例事業者」、不特法2条7項)を投資ビークルとして用い、特例事業者が投資家との間の出資契約の締結の代理または媒介を第四号事業(不特法2条6項3号)の許可を受けた業者に委託して投資家から出資を受けること等により資金を調達したうえで、現物不動産を取得し、第三号事業者(不特法2条6項2号)の許可を受けた業者に現物不動産の売買その他の不動産取引に係る業務を委託して運用し、その利益を投資家に分配する仕組みです。

解説

不動産特定共同事業スキームの概要

 不動産の証券化(流動化)において不動産特定共同事業スキームを利用する場合、SPC(Special Purpose Company;特別目的会社)が投資家から匿名組合契約に基づき金銭の出資を受け、金融機関等からの借入れで調達する資金とあわせて購入代金にあてることで現物不動産を取得することにより、不動産に対する投資を行い、不動産投資から生じる収益を投資家に分配する仕組みが想定されます。
 この場合、SPCと投資家が締結する匿名組合契約が「不動産特定共同事業契約」に該当し、SPCが不動産の賃貸、売買等の不動産取引から生ずる収益または利益を投資家に分配する行為が「不動産特定共同事業」に該当することになります。

不動産特定共同事業スキーム

出典:国土交通省「不動産証券化の解説

 そこで、SPCは、自ら不動産特定共同事業の許可を受けるか、「特例事業」として行う必要があります。
 しかし、SPCは、投資ビークルにすぎないため、自ら不動産特定共同事業の許可を受けることは事実上不可能であるため、「特例事業」として行うことが必要になります。
 SPCの法人形態としては、合同会社が選択されることが想定されます。

投資対象の形態

 不動産特定共同事業における投資対象は、不動産(不特法2条1項)に限られるため、このスキームでは不動産信託受益権を投資対象とすることはできません

「特例事業者」について

他業の禁止

 「特例事業」に利用するSPCは、不動産特定共同事業を専ら行うことを目的とする法人(特例事業者)でなければならない不特法2条6項1号)ため、他の事業を行うことはできません
 たとえば、不動産信託受益権を運用対象とするファンドのSPCを兼ねることはできません。

届出

 特例事業を営もうとする法人(SPC)は、あらかじめ、主務大臣に届出をする必要があります

宅地建物取引業法の適用

 特例事業者(SPC)は、宅地建物取引法の一部の規定の適用について宅地建物取引業者とみなされます
 たとえば、以下の規定が特例事業者(SPC)に適用されます。

  • 営業保証金の供託(宅地建物取引業法25条1項)
  • 違約金等の額の制限(宅地建物取引業法38条
  • 手付の額の制限(宅地建物取引業法39条
  • 瑕疵担保責任についての特約の制限(宅地建物取引業法40条

「特例投資家」の範囲

 「特例事業」において投資家となることができる者は、「特例投資家」に該当する者に限られる点に注意が必要です(不特法2条6項4号)。
 「特例投資家」には、以下が該当します。

  1. 銀行
  2. 信託会社
  3. 不動産特定共同事業者
  4. 取引一任代理等の認可を受けた宅地建物取引業者
  5. 不動産投資顧問業の登録を受けた者(不動産投資顧問業者)
  6. SPCに不動産を譲渡等した者で、不動産投資顧問業者との間で投資判断に関する助言契約または一任契約を締結している者
  7. 金融商品取引法上の特定投資家
  8. 資本金の額が5億円以上の株式会社

 この点、⑦金融商品取引法上の特定投資家は、金融商品取引法2条31項に定める特定投資家のほか、金融商品取引法34条の3または34条の4の手続(いわゆるオプトイン)を経て特定投資家とみなされる者も含まれます。

不動産特定共同事業者への委託

出資契約の締結の代理または媒介の委託

 「特例事業」に該当するには、特例事業者(SPC)が「特例事業者が当事者である不動産特定共同事業契約の締結の代理または媒介をする行為」(第四号事業)に関する許可を受けた者に、不動産特定共同事業契約(匿名組合契約)の締結の代理または媒介の業務を委託することが必要です。
 第四号事業の委託先は、1社である必要はありません。

不動産取引に係る業務の委託

 「特例事業者の委託を受けて当該特例事業者が当事者である不動産特定共同事業契約に基づき営まれる不動産取引に係る業務を行う行為」(第三号事業)に関する許可を受けた者に、不動産特定共同事業契約(匿名組合契約)に基づき営まれる不動産取引に係る業務を委託することが必要です。
 一つの「特例事業」に関して第三号事業の委託先は1社でなければならず、複数の事業者に第三号事業を委託することはできません。
 第三号事業の委託先は、委託特例事業者から委託された業務の全部を他の者に対し、再委託してはならないとされています(当該業務の一部の再委託は可能です。)(不特法26条の3)。

 なお、不動産特定共同事業契約の締結の勧誘の業務と不動産特定共同事業契約に基づき営まれる不動産取引に係る業務を同一の不動産特定共同事業者に委託することも可能です。

不動産特定共同事業(第三号事業・第四号事業)の許可の取得

 不動産特定共同事業の許可を受けるには、主に以下のような要件を充足する必要があります。

  1. 宅地建物取引業の免許を受けた法人であること不特法6条2号)
  2. 資本金の額(第三号事業は5000万円、第四号事業は1000万円)不特法7条1号、不特法施行令4条3号・4号)
  3. その資産の合計額から負債の合計額を控除した額が資本金または出資の額の90%に相当する額を満たすこと不特法7条2号)
  4. 事務所ごとに業務管理者を置くこと不特法7条4号)
  5. 不動産特定共同事業を適確に遂行するに足りる財産的基礎および人的構成を有するものであること不特法7条6号)

 また、第三号事業の許可については、上記に加えて、不動産特定共同事業契約約款の内容が不動産特定共同事業法施行令で定める基準に適合するものであることも必要となり(不特法7条5号)、第四号事業の許可については、第二種金融商品取引業の登録を受けていることが必要になります(不特法6条8号)。

約款規制

 「特例事業」においては、約款の内容が不動産特定共同事業法施行令で定める基準に適合していることが第三号事業の許可の要件となっており(不特法7条5号)、約款の追加または変更をしようとするときには認可を受けることが必要です(不特法9条1項)。また、この約款に基づいて不動産特定共同事業契約を締結しなければならないとされています(不特法23条)。
 この約款は、匿名組合契約などの出資契約の枠組みを定めるものであり、出資金額など具体的な事項については個別の投資家との間で締結する個別の出資契約の定めに委ねることが許容されています。
 なお、複数の約款を作成して許可または認可を受けることも可能です。

税制上の優遇措置等

 特定事業者が建替え、増築・修繕等を行うための敷地や建替え、増築・修繕等を行う建築物を取得する場合、一定の要件を充足することにより、不動産所有権の移転登記に係る登録免許税および不動産取得税の軽減を受けることができます租税特別措置法83条の3地方税法附則11条13項)。
 ただし、これらの軽減措置は時限立法によるため、随時確認が必要です。

不動産特定共同事業法の改正

 平成29年3月3日に、不特法の改正法案が国会に提出されており、この改正法案が成立した場合には、上記のうち、以下のような点が改正されることになります。

(1)「特例事業」における投資家の範囲(上記4関連)

 「特例事業」の対象となる不動産の修繕等の工事の費用の額が一定の金額を超えない場合における投資家の範囲が一般投資家まで拡大されます。

(2)第三号事業を行う者の資格(上記6関連)

 「特例事業」への投資家による出資総額等が一定の金額を超えない場合における第三号事業を行う者に関する資格要件が許可制から登録制(5年更新)に緩和されます(「小規模不動産特定共同事業」制度の創設)。

(3)約款規制(上記7関連)

 投資家が「特例投資家」に限定される不動産特定共同事業を行う場合について、約款規制が廃止されます。

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