所有地から発見された石綿(アスベスト)に関する法令上の規制

資源・エネルギー
猿倉 健司弁護士

 所有地から発見された石綿(アスベスト)について、どのような法令上の規制があるか教えてください。

 アスベストの規制は複数の法律によって規律されています。具体的には、アスベストを取り扱う労働者の健康確保を目的とする労働安全衛生法、じん肺法等の規制が存在しており、そのほか、大気汚染防止法、建築基準法や廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)、特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(PRTR法)等によって規制が定められています。アスベストを処分する場合には、各法令等にのっとった処理基準・方法に従って行う必要があります。

解説

目次

  1. アスベストについて
  2. アスベストに関する法令上の規制
    1. 一般的なアスベストに関する規制
    2. アスベスト含有廃棄物等に関する規制(廃棄物処理法)
    3. アスベスト含有土壌に関する規制
  3. さいごに

アスベストについて

 アスベスト(石綿)は耐熱性、耐薬品性に優れており機械的強度もあることから、かつては、吹付耐火被覆、スレート、プラスチックタイル、煙突の内貼材、空調ダクトのフレキシブル継手、パッキン、通気配管用のセメント管などに使用されていました。しかし、微細な繊維が、肺線維症(じん肺)、悪性中皮腫、肺がんの誘因になるとされ、現在では炭素繊維などの代替品に置き換えられてきています。

参考裁判例(東京地裁平成24年9月27日判決・判時2170号50頁)
 石綿(アスベスト)は、天然の鉱物繊維であり、石綿蛇紋石族と角閃石族に大別され、前者として、クリソタイル(白石綿。世界で使われた石綿の九割以上を占めるとされる。)が、後者として、クロシドライト(青石綿)、アモサイト(茶石綿)、アンソフィライト石綿、トレモライト石綿、アクチノライト石綿がある。石綿は、極めて細かい繊維で、熱、摩擦、酸やアルカリにも強く、丈夫で変化しにくいという特性を持っていることから、建材(吹き付け材、保温・断熱材、スレート材など)、摩擦材(自動車のブレーキライニングやブレーキパッドなど)、シール断熱材(石綿紡織品、ガスケットなど)といった工業製品に使用されてきた。このうち、クロシドライト(青石綿)およびアモサイト(茶石綿)は、吹付け石綿として使用されていた。石綿は、極めて細かい繊維からなっており、飛散すると空気中に浮遊しやすく、吸入されて人の肺胞に沈着しやすい特徴があり、肺の繊維化(石綿肺)やガンの一種である肺ガン、悪性中皮腫などの疾病の原因となるとされている。

 アスベストは重大な健康被害を生じさせうる可能性があるものであり、アスベストが露出する建物で勤務していた者が悪性胸膜中皮腫に罹患した事例で、テナントビルのオーナーがその責任を負うとする最高裁判決(最高裁平成25年7月12日判決・判時2200号63頁)も出るなど大きな問題となっています。  

アスベストに関する法令上の規制

一般的なアスベストに関する規制

 アスベストの規制は複数の法律によって規律されています。具体的には、アスベストを取り扱う労働者の健康確保を目的とする労働安全衛生法等の規制が存在しており、一般環境への汚染防止を目的とする大気汚染防止法のほか、建築基準法廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)等により建築物の建築、解体・改修の際におけるアスベストの厳格な管理が求められています。

【主なアスベスト規制法一覧】

法令名 条文・コメント
労働安全衛生法 55条施行令16条1項4号、同9号 等
石綿障害予防規則 6条10条 等
じん肺法 2条1項3号、施行規則2条別表24号 等
大気汚染防止法 2条9項(施行令2条の4)、2条12項(施行令3条の3)等
なお、平成26年より、吹付け石綿等が使用されている建築物の解体、改造、補修作業の実施の届出義務者の変更等、石綿飛散防止対策が強化されているので注意が必要です。
建築基準法 28条の2別表第二(ぬ)1項30号
廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法) 施行令2条の4第5号ヘ、施行規則1条の2第9項、7条の2の3 等
特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(PRTR法) 施行令別表第1第33号 等

 平成18年9月からは、労働安全衛生法施行令の改正により、アスベストおよびアスベスト含有物(重量の0.1%を超えて含有するもの)の製造、輸入、譲渡、提供、使用が禁止されることになりました労働安全衛生法55条施行令労働安全衛生法施行令16条、1項4号、同項9号)。その半年前の同年3月には、石綿による健康被害の救済に関する法律(アスベスト新法)が施行されました。同法は、アスベストによる被害者等の迅速な救済を図ることを目的として(アスベスト新法1条)、医療費等の支払等について規定しています(アスベスト新法3条以下)。アスベスト新法の制定に伴い、大気汚染防止法、建築基準法および廃棄物処理法等が改正されています。
 各法令による規制経緯の詳細は、東京地裁平成24年9月27日判決(前掲参考裁判例)においても判示されています。  

アスベスト含有廃棄物等に関する規制(廃棄物処理法)

(1)アスベスト含有廃棄物等

 廃棄物処理法において、事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならず、自ら産業廃棄物の運搬または処分を行う場合には、政令で定める産業廃棄物の収集、運搬および処分に関する基準に従わなければならないとされています(廃棄物処理法3条1項、12条1項)。
 特に、アスベストを含有する廃棄物については、「廃石綿等」(廃棄物処理法施行令2条の4第5号ト、廃棄物処理法施行規則1条の2第9項)、「石綿含有一般廃棄物」(廃棄物処理法施行規則1条の3の3)、「石綿含有産業廃棄物」(廃棄物処理法施行規則7条の2の3)として特に規定され、厳格な処理を行うことが求められます。一般廃棄物または産業廃棄物のうち、爆発性、毒性、感染性その他の人の健康または生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有するものとして政令で指定されたもの特別管理産業廃棄物であり(廃棄物処理法2条5項)、廃石綿等は特別管理産業廃棄物に該当します。

種別 分類 詳細
廃石綿等 特別管理産業廃棄物 廃石綿および石綿が含まれ、または付着している産業廃棄物のうち、石綿建材除去事業(建築物その他の工作物に用いられる材料であって石綿を吹き付けられ、または含むものの除去を行う事業)に係るもの等で、飛散するおそれのあるものとして、下記に定めるもの

一 建築物その他の工作物(建築物等)に用いられる材料であって石綿を吹きつけられたものから石綿建材除去事業により除去された当該石綿

二 建築物等に用いられる材料であって石綿を含むもののうち石綿建材除去事業により除去された次に掲げるもの

 イ 石綿保温材
 ロ けいそう土保温材
 ハ パーライト保温材

 ニ 人の接触、気流および振動等によりイからハに掲げるものと同等以上に石綿が飛散するおそれのある保温材、断熱材および耐火被覆材

(以下、略)
石綿含有一般廃棄物 一般廃棄物 工作物の新築、改築または除去に伴って生じた一般廃棄物であって、石綿をその重量の0.1パーセントを超えて含有するもの
石綿含有産業廃棄物 産業廃棄物 工作物の新築、改築または除去に伴って生じた産業廃棄物であって、石綿をその重量の0.1パーセントを超えて含有するもの(廃石綿等を除く)

(2)アスベスト含有廃棄物等の処理の流れ

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