営業現場で使える!英文契約書のポイント

第5回 見積もりの依頼と申し込みの承諾

取引・契約・債権回収
宮田 正樹

 前回「第4回 取引条件を提示するときの伝え方」は取引における申し込みの考え方や、文章の例文などを紹介しました。今回は見積書の依頼をする場合、見積書の依頼を受けた場合の文章例などを紹介し、申し込みの「承諾」についての考え方を解説します。

見積(書)

 通常の売買取引では、「見積書」という形で価格を中心とする取引条件を提示するよう買主側から売主側に求めることになります。もちろん、買主側の求めを待つことなく、売主側が積極的に「見積書」を買主側に送ることもあります。

(1)買主側からの見積依頼の文章

貴社のプラスチック射出成型機モデル番号XL-1000の値段をお見積りください。

Please quote us a price for your plastic injection machine Model No.XL-1000 [商品名].


下記の商品に対する見積もりをお願いいたします。

Please send us a quotation [quote] for the items below.


プラスチック射出成型機10台につき、お見積もりを頂戴できれば幸いです。

We would appreciate it if you could provide a quotation for ten (10) units of plastic injection machine
[商品名].


下記の商品につきシンガポールまでの運賃込み(CFR)での見積もりをお願いできますか。

Could you give us a quotation〔またはPlease let us have a quotation〕on CFR Singapore basis
for the items listed below?


貴社のプラスチック射出成型機モデル番号XL-1000につきシンガポールまでの運賃保険料込み(CIF)での最低価格をお見積りください。

Please quote us the best prices on CIF Singapore basis for your plastic injection machine Model
No.XL-1000 [商品名].


貴社のプラスチック射出成型機モデル番号XL-1000につきシンガポールまでの運賃込み(CFR)での最低価格を米ドル建てでお見積りください。

We wish you to quote on your plastic injection machine Model No.XL-1000 [商品名] the best possible
CFR Singapore prices in U.S. dollars.

〔結語例〕
近日中にお見積りを頂けることとお待ちしています。

We look forward to receiving your quotation soon.


早期にご対応いただければ幸いです。

Your prompt [immediate] attention to this matter would be greatly appreciated.

(2)売主側からの見積提示の文章

お見積もりをご依頼いただきありがとうございます。〔文頭に置く言葉として〕

Thank you for your request for a quotation.


貴社のお引き合いにお答えして、以下のとおり見積もりをご提示いたします。

In reply to your inquiry, we are pleased to offer [submit] a quotation as follows:


当社のプラスチック射出成型機モデル番号XL-1000 10台に対する当社の見積書を3部送付いたします。

We are sending three (3) copies of our quotation for ten (10) units of our plastic injection machine Model
No.XL-1000 [商品名].


当社のプラスチック射出成型機モデル番号XL-1000のシンガポールまでの運賃込み(CFR)の価格を1台あたり22万米ドルでお見積りいたします。

We are pleased to quote you (a price) for our plastic injection machine Model No.XL-1000 [商品名],
at US$220,000.- per unit, on CFR Singapore basis.


価格見直し条項:上記の価格はすべて予告なく変更されることがありますのでご了承ください。

Please note that the above prices are all subject to change with or without notice.

〔結語例〕
近いうちにご注文を頂けるのをお待ちしております。

We look forward to receiving your order in the near future.

または、

We are looking forward to your first [initial] order.

(3)見積書のフォーマット

 一般的に、見積の提示は「見積書」(Price Quotation)という書面(自社のレターヘッドを使用した書面)をもって提示されます。

 書式例1のようなレター・フォーマットを使用したものや、書式例2のように専用のテンプレートを使用したものなど、その様式は各社自由ですが、価格その他取引条件に関しては、間違いなく、明確に記載する必要があります。

 価格に関しては、決済通貨・決済方法を明確化すること、船積条件はFOB、 CIFなどインコタームズで指定すること(が望ましい)など、留意事項が多々あるので、それらを網羅したフォーマットを用意しておくことによりモレを防ぐことができます。

 見積において意外と盲点となるのが「梱包方法(packingまたはpackaging)」です。
 精密機械などで特殊な梱包方法が求められるものについては、梱包にかかる費用が見積に含まれていたかどうかが、後日、価格をめぐるトラブルになったり、輸送中の破損に関する責任の所在についてのトラブルにつながることがあるからです。

 なお、インコタームズの規定では「売主は、原則として、自己の費用でもって、当該運送に適した方法で、物品を梱包しなければならない」を原則としているので、インコタームズをベースとした取引である限り、梱包方法が適切なものであったか否かは、これを基準に判断されることになります。

見積書(レター・フォーマット)

書式例1

見積書(専用のテンプレート)

書式例2

承諾(acceptance)

 「承諾」とは、申し込みの内容を応諾して、契約を成立させようとする意思表示です。
 意思表示ですから、承諾は、申し込みと同様、手紙・電話・口頭・メールなどのほか、行為(実行行為など)によっても可能です。

 ところで、対話者間における意思表示は、それが表明されると同時に相手方に通じるので発信と到達の間に時間差はなく、その効果の発生時期を発信時とするか、到達時とするかについて論議する意味はありません。しかし、隔地者(直接的に意思表示が伝わる対話者間ではない意思伝達を行うのに時間を要する場所・状態にある相手方)に対する意思表示の効果が生じる時期を、発信時とするか、相手方に到達した時にするかが問題となります。

日本法の考え方

 日本の民法では、隔地者間における意思表示の効果(すなわち、その発信と相手方への到達との間に時間差が生じる場合)は、その意思表示が相手方に到達した時とするという当然といえる規定をおいています(民法97条)。これを「到達主義」と呼んでいます。

 ところが、隔地者間における契約の申し込みに対する「承諾」は、その通知が発せられたときに成立する(民法526条)という「発信主義」がとられています。郵便ならば、ポストに投函した時に承諾の効果が生じているということになります。その理由として、契約を申し出たものは、申出を行なった時点で契約の成立を期待していることから、一方が承諾を行った時点で契約を成立させることが合理的である、というような説明がされています。(英国法の影響ともいわれています)。

 ただし、平成13年12月25日に施行された民法特例法(電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律(平成13年法律第95号))によって、電子的手段(電子メール、ファックスなど)による承諾の場合には、その通知が相手方(申込者)に到達した時に承諾の効果が生じるという、到達主義が取り入れられることになりました。電子的手段による場合には、理論上発信と到達の間に時差はほとんど無いことと、電子的取引には到達主義が広く取り入れられている国際情勢を反映したとされています。

英米法の考え方

 大陸法では、先に説明した到達主義が原則です。それでは、英米法などでは「承諾」をどのように捉えているのでしょうか。

(1)承諾の到達についての考え方

①英米法

 英米法では発信主義が原則です。「posting rule」または「mailbox rule」といわれ、Adams v Lindsell(1818)[1B & Ald 681, EWHC KB159, 106 ER 250]をはじめとする一連の英国の判例で定まった原則で、郵送による承諾(acceptance)の通知は、投函された時または郵便局員に手渡された時に効果が生じるとするものです。その理由としては、申込者は黙示的に郵便局をその代理人(返事の受け取り代理人)として指名しているのであって、その代理人たる郵便局が受け取った時点で申込者本人が受け取ったものとして処理できるというものです。

 なお、申し込みにおいて承諾の通知の手段や通知が申込者に到達することを定めてあれば、その手段で申込者に到達することが承諾の効果発生の条件となります。

 米国法でも、基本的に発信主義です。UCCでも承諾に関して発信主義を採用しているので、ポスト (mailbox) に投函した時点で承諾が有効となり、契約が成立します。

【電子的通信による承諾の通知】
 電子的通信による承諾の通知をどのように扱うかは、英国法、米国法とも明確には定まっていません。

 アメリカでは、1999年に提案されたUCITA(Uniform Computer Information Transaction Act:統一電子情報取引法)において、電子的手段による承諾は到達主義とする旨が定められていますが、この統一法を採択しているのは今のところバージニア州とメリーランド州との2州でしかありません。

 イギリスでは、テレックスによる承諾の通知の事例で、「電話やテレックスなど即時・リアルタイム(instantaneous)な通信手段による承諾の場合は、それが申込者に受け取られた時に有効となる」とする判例(Entores Ltd v Miles Far East Corporation(1955)[EWCA Civ 3, WLR 48, 2 All ER 493, 1 Lloyd's Rep 511, 2 QB 327])がありますが、電子メールに関する判例は見あたりません。

 以上より、実務としては、電子的手段による承諾(特に、稀に未着が生じる電子メールの場合)については、申込時に「契約の成立には承諾の通知の到着を要する」と記載しておくべきでしょう。

(例文)
if your messages, including a message accepting our offer, are sent in an electronic format such as e-mail,
such messages shall become effective only when received by us as readable messages.
貴方の通知(当方の申し込みに対する承諾の通知を含む)が電子メールのような電子的手段によってなされた場合には、その通知が判読可能な形で当方が受領した時にのみ有効とします。
②ユニドロワ原則

 基本的には到達主義です。ただし、申し込みに基づき、または慣習もしくは当事者がその間で確立させている慣行により、相手方が申込者に対して通知することなくある行為をすることによって同意を示すことが認められているときは、その行為がなされた時に承諾の効力が生ずる、として契約内容の履行などの行為による契約の成立を認めています。(ユニドロワ原則2.1.6条2項・3項)。

③ウィーン売買条約

 基本は到達主義です。ユニドロワ原則と同じく慣行や慣習に従い、行為による効力発生ルールが適用されます(ウィーン売買条約18条)。

(2)条件付き承諾の効果

 承諾にあたり、申し込みの内容と異なる条件や、追加条件を付して承諾した場合には、日本法では「新たな申し込み」となります(民法528条)。この問題については別稿「書式の争い」でより詳しく解説します。

 米国法では、「ミラ-・イメージ原則」(契約の申し込みの内容と承諾と内容とが、鏡で写したように全く同一でなくてはならないという、契約法上の原則)の厳格な適用がなされています。

 ユニドロワ原則では、申し込みの条項を実質的に変更しない回答は、承諾となります(ユニドロワ原則2.1.11条)。

 ウィーン売買条約では、承諾はミラ-・イメージの原則が適用され、申し込みの内容と異なる条件や、追加条件を付して承諾した場合には「新たな申し込み」となるのが原則ですが(ウィーン売買条約19条1項)、それらの変更内容が申し込みの内容を実質的に変更せず、申込者が異議を述べない場合には承諾が有効とされ、変更を加えた条件での契約が成立する(ウィーン売買条約19条2項)とされています。

(3)沈黙による承諾

 原則として、沈黙は承諾とはみなされません。

 ユニドロワ原則では、沈黙または不作為は承諾とならないという規定(ユニドロワ原則2.1.6条1項)があり、ウィーン売買条約でも、同様の規定(ウィーン売買条約18条)があります。

 一定期間内に諾否の通知をしない場合の効果として、日本の商法では「商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発し」ない場合には、「契約の申込みを承諾したものとみなす」という規定があります(商法509条)。

 アメリカのリステイトメントでは、§69において、それまでの取引などにおいて、被申込者が申し込みを拒絶する場合には、その旨を申込者に通知するのが当然とされている場合には、「沈黙」により承諾したものとされるとしています(§69(1)(c)参照)。

【(参考)RESTATEMENT (SECOND) OF CONTRACTS §69】

§69. Acceptance by Silence or Exercise of Dominion

(1)Where an offeree fails to reply to an offer, his silence and inaction operate as an acceptance
in the following cases only:

  (a)Where an offeree takes the benefit of offered services with reasonable opportunity
to reject them and reason to know that they were offered with the expectation of compensation.

  (b) Where the offeror has stated or given the offeree reason to understand that assent may
be manifested by silence or inaction, and the offeree in remaining silent and inactive intends to
accept the offer.

  (c) Where because of previous dealings or otherwise, it is reasonable that the offeree
should notify the offeror if he does not intend to accept.

(2)An offeree who does any act inconsistent with the offeror's ownership of offered property is
bound in accordance with the offered terms unless they are manifestly unreasonable.
But if the act is wrongful as against the offeror it is an acceptance only if ratified by him.

69条 沈黙による承諾または意見の行使による承諾

(1)被申込者が申し込みに対して回答をしなかった場合、その沈黙または不作為が承諾となるのは次に掲げる場合に限定される:

  (a)被申込者が、それを断る機会が十分あったにも拘わらず、そして、その申し込みが対価を得るためであることを知り得たにも拘わらず、申し込みを受けたサービスの便宜を受けた場合

  (b) 申込者が被申込者に対して沈黙や不作為を承諾と了解する理由を告げあるいは提供し、被申込者が承諾する意思を持って沈黙または不作為を続けた場合

  (c) それまでの取引などの理由により、承諾の意思がないときにはその旨被申込者が申込者に通知すべきである場合

(2)申込者の申し込みに係る物品の所有権に反する行為を行った被申込者は、その申し込みの条件に拘束される(申し込みを承諾したものとみなされる)、ただし、そのように扱うことが明らかに不合理である場合はこの限りではない。しかし、その行為が申込者にとって不当なものである場合には、申込者がそれを承諾と認めて初めて「承諾」となる。

【日本の場合:商法509条】
 日本では商法509条1項で「商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければならない」とし、更に2項で「商人が前項の通知を発することを怠ったときは、その商人は、同項の契約の申込みを承諾したものとみなす」と定めているので、「商人」の場合には、ある程度継続して取引関係がある相手からの申込に対しては、本条が適用されることになります。取引基本契約書などに「甲が第〇項の発注を受けてから5営業日以内に諾否の回答をしないときは、甲は当該発注を承諾したものとみなす」というような規定が置かれることがあるのは商法509条の存在によるものです。

承諾の文章例

 契約成立要件としての「承諾」は、その形式が定まっているわけではないので、相手方の「申込」に対する「承諾」の意思表示と了解されるものである限り、事実行為(契約内容の履行)はもちろんのこと、口頭または書面を問わず有効となります。

 テレックス時代のビジネス・コレポンでは「CFMD」(”confirmed”の略語)という語をよく用いました。

  • CFMD UR OFR DTD 06/27/1985
    (正式にスペルアウトすると)We confirmed your offer dated June 25, 1985.

    「1985年6月25日付の貴社のオファー(申込)を確認(承諾)しました。」

 なんてのが代表的な文言です。

 Eメール時代を迎え、これらはより丁寧に詳しく通知できるようになりましたので、【offerを受けた側(offeree)の用いる文章】で例示した(「第4回 取引条件を提示するときの伝え方」参照)下記のような文章とします。

〔買主の場合〕
We are pleased to accept your offer of April 20, 2017 [日付], and are sending our Purchase Order
[Purchase Note] No. 123 for ten (10) units of plastic injection machine.

「2017年4月20日付の貴社のオファーを受諾し、プラスチック射出成型機を10台に対する当社の注文書(買約書)第123号をお送りいたします。」

〔売主の場合〕
We are pleased to accept your offer of April 20, 2017 [日付], and are sending our Sales Order
[Sales Note] No. 123 for ten (10) units of plastic injection machine.

「2017年4月20日付の貴社のオファーを受諾し、プラスチック射出成型機を10台に対する当社の注文書(売約書)第123号をお送りいたします。」

 売主・買主いずれの場合にせよ、注文書(買約書または売約書)をpdfで添付する場合には、次のように書き換えます。

We are pleased to accept your offer of April 20, 2017 [日付], and are sending our Purchase Note [またはSales Note] No. 123 for ten (10) units of plastic injection machine, of which copy is attached herewith as pdf data format.

 なお、添付したpdf書面を契約締結書面(相手方にカウンターサインしてもらって返送を受けるなどする正式契約書)として使用する場合については、次の「契約段階」の項で詳しく紹介します。

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