民法改正(債権法改正)と不動産取引への影響

第3回 不動産売買契約の留意点(表明保証責任)

取引・契約・債権回収
猿倉 健司弁護士

 前回(『第2回 不動産売買契約の留意点(契約不適合責任)』)に引き続き、民法改正による不動産取引への影響および不動産売買契約の注意点について、土壌汚染や地中障害物の存在が疑われる土地の売買契約を中心に説明します。本稿においては不動産売買契約のうち表明保証責任に関する条項について説明します。なお、『第1回 売買契約に関連する民法改正のポイント』での説明もあわせて参照ください。

参考:民法改正を踏まえた不動産取引の実務対応ガイド・売買契約書のサンプル付き

不動産売買契約における表明保証責任に関する留意点

表明保証責任の要件に関して留意すべきポイント

 たとえば、土地の買主が、“対象地に土壌汚染が存在せず、地中障害物等も存在しない”ことを売主に確約させたいという場合、売買契約書において、表明保証条項としてその旨の条項(概括的な条項)を設ける、または、対象地の地歴や関係書類、売主の説明等からみて後に発見される可能性があると考えられる土壌汚染や地中障害物について具体的な条項として明記することなどが考えられます。

表明保証責任の要件に関して留意すべきポイント

 いずれの方法によるべきかはケースバイケースですが、それぞれのメリット・デメリットがあるため、どのような契約文言にすべきかは慎重に検討することが必要となります。特に、表明保証の対象となる土壌汚染(有害物質)や地中障害物を具体的に明記する場合には、対象となる有害物質や基準値(基準値がない場合の任意数値基準)、その検査方法等についても検討することが必要となります。地歴や関係書類、売主の説明等からみて後に発見される可能性があると考えられる土壌汚染や地中障害物については、その取り扱いについて契約に明記することを検討すべきと考えられます。
 なお、このような条項は、表明保証条項において明記することが一般的ではありますが、『第2回 不動産売買契約の留意点(契約不適合責任)2-1(2)で説明した地中調査・対策義務に関する条項で規定することも考えられます。

【留意すべきポイント】
  • 表明保証の対象となる土壌汚染(有害物質)や地中障害物が明確となっているか?
  • 表明保証の対象となる有害物質を明記する場合には、対象物質や基準値(基準値がない場合の任意数値基準)、その検査方法等が明確になっているか?

 そのほか、土壌汚染に関する表明保証条項については、対象地の地中に「禁止有害物質」や「価値減損物質」が存在しない旨の条項として規定されることも多く見受けられます。一般に、禁止有害物質とは、法令や条例等において製造、輸入、使用が禁止、規制されている物質であり、また、価値減損物質とは、対象地の所有、使用や改良等が行われる場合に、当該物質に関して法令や条例上の規制に基づいて負担するおそれのある責任を回避するために、費用、義務または何らかの制限を負うこととなるような物質のことをいいます。
 売買契約書においてこのような規定を入れるかどうか、入れるとしてもその具体的な内容をどうするべきかについても検討すべきであると考えられます(井上治「不動産再開発の法務」(商事法務、2017年1月)・80頁等)。

表明保証責任違反の効果に関して留意すべきポイント

 表明保証条項が規定される場合には、通常、一方当事者により表明保証された事項が“真実・正確ではなかった場合”の損害補償義務等が定められます(『第1回 売買契約に関連する民法改正のポイント』参照)。
 もっとも、表明保証条項は、日本の民法で当然に予定されているものではなく、裁判例の蓄積も多くないため、表明保証条項に違反した場合に認められる効果は必ずしも明確ではありません。
 そのため、売買契約書において、表明保証条項違反による補償条項を設けて補償内容を明記するほか、契約解除条項において表明保証条項違反が契約解除事由となることを明記することなどが考えられます(前掲井上・80頁等)。

【留意すべきポイント】
  • 表明保証責任違反の効果(補償、契約解除)について明確となっているか?

表明保証責任と契約不適合責任の適用関係に関して留意すべきポイント

 表明保証条項と契約不適合責任の関係は必ずしも明らかではなく、ある表明保証事項に反する事実が判明した場合において、現行民法では当該表明保証違反が「瑕疵」とまでの評価を受けないものであっても、改正民法下においては、表明保証事項が「契約の内容」(売主の給付義務の内容)として、表明保証事項違反が「契約の内容に適合しない」(現行民法562条等)と評価されることにより、結果的に売主の契約不適合責任を生じさせる余地があります。
 そのため、売買目的物の性状等に関する表明保証規定を置く場合には、契約不適合責任その他の責任と表明保証責任の適用関係や整合性に留意すべきと考えられます。
 この点を明確にするために、契約不適合責任や売買契約上の地中調査・対策条項に基づく義務とは異なる独立の責任として表明保証条項を規定したうえで、それぞれの要件を満たす限り選択的または重畳的に行使することができる旨を規定することも考えられます(前掲井上・83頁等)。

【留意すべきポイント】
  • 契約不適合責任と表明保証責任の適用関係や整合性が明確になっているか?

関連法の改正についての留意点

 具体的な取引においては、宅地建物取引業法(売主が宅建事業者、買主が個人のケースなど)、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)(新築住宅の売買のケースなど)、消費者契約法(売主が事業者、買主が個人のケースなど)、その他の法令等の適用がないかどうかも確認のうえで、適切な契約条項とする必要があります。
 そのため、関連法の改正について規定している「民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」についても、注意が必要です。

さいごに

 以上のとおり、3回にわたって不動産取引契約(売買契約)において、“改正民法を踏まえてどのような点に注意すべきか”というポイントを説明してきました。
 もっとも、本稿で説明したのは、極めて多岐にわたる売買契約条項の一部にすぎません。実際の契約条項を見直すうえでは、案件に応じた柔軟な対応が必要となりますので、改正民法の解釈が固まらない段階においては特に、具体的にどのような条項とすべきかについて専門家に相談のうえ検討することが必要不可欠であると考えられます。

 次回以降、不動産取引に関し、売買契約以外の契約(建物請負契約、不動産賃貸借契約等)について民法改正による影響をご説明します。

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