著者に聞く「債権法改正対応版 契約実務と法」執筆のねらいは?

取引・契約・債権回収
河村 寛治

2017年5月26日に「民法の一部を改正する法律」(平成29年法律第44号)が国会で可決され、債権法改正まであと2年と迫っている(2020年4月1日施行)。契約書を中心とした法律文書について、リスク回避や紛争の予防の目的を達成するためには、どのような方法で作成すればよいのだろうか。
その疑問に答えるべく、具体的な契約事例から考えうるリスクを理論化し、債権法改正による契約書への影響の有無と、そのチェックポイントを解説した書籍「債権法改正対応版 契約実務と法 −リスク分析を通じて−」が出版された。本書の著者で、明治学院大学名誉教授・一般社団法人GBL研究所代表理事の河村 寛治氏に、おすすめポイントを伺った。

本書のねらい

債権法改正の施行が近づいてきています。

河村氏
今回の債権法改正(改正民法)は、現行民法の内容を総点検し、これまで難解、あるいは不合理とされていた規定の整理や、条文に書かれていない原則等を明文化し、かつ判例によるルールの明文化を行うことを目的としたものです。しかし、実務が十分に考慮されているとはいえない面も存在しています。

そんな中出版された著書「債権法改正対応版 契約実務と法 −リスク分析を通じて−」はどんな内容でしょうか。

河村氏
本書は、契約実務において、改正内容をすべてカバーしているものではありませんが、実際に企業が使っている契約書を取り上げ、これら契約書の条項に関連すると考えられる民法の基本的ルールに絞って解説しています。改正民法への変更点とともに、現行規定の改訂版を示すことを目指したものです。

「債権法改正対応版 契約実務と法 −リスク分析を通じて−」93頁

「債権法改正対応版 契約実務と法 −リスク分析を通じて−」93頁

読者に読んでほしいポイント

著書を執筆された際に、気をつけた点はありますか。

河村氏
特に意識したことは、これまでわが国の契約実務でもあまり考慮されてきていなかった契約の目的規定を設けることの重要性、債務不履行による損害賠償の帰責事由の明確化、契約解除の要件に関する見直し、売主の瑕疵担保責任の見直し、原始的不能の場合の損害賠償規定の新設、また危険負担に関する規定の見直しが必要かどうかなどです。

多くの条項について再度検討することになるのですね。

河村氏
もちろんすべての契約条項を変更する必要はないものの、2年後の施行までの間に、現在締結済の取引基本契約書や関連条項などの見直しをしてもらうために、参考にしてもらいたいというのが願いです。

【本書で取り上げられている個別具体的契約に関する契約書】
  • 機械売買契約書
  • 販売特約店契約書
  • 賃貸借契約書
  • 商標ライセンス契約書
  • 業務委託契約書
  • 請負契約書(システム開発契約書)
  • 合弁基本契約書
  • フランチャイズ契約書
  • 動産譲渡担保契約書
  • 保証契約書
  • 保証委託契約書

債権法改正によって契約実務はどう変わるか

今回の債権法改正によって、契約実務ではどんな対応が求められますか。

河村氏
これまでの契約実務では、今回の債権法改正の目的である条文に書かれていない原則や判例によるルールの明文化等に関しては、ある程度すでに取組みが済んでいるものの、新たな考え方が導入されている点なども少なくありません。
なお、今回の改正に関しては、契約実務には、あまり影響はないということを指摘する実務家もいます。
しかし、少なくとも、現在の契約書が十分に適応できているかどうかを見直すとともに、新たな考え方が導入されている点に関しては、裁判によりその解釈が行われるまで待つのではなく、あらかじめ契約書において、対応しておくべきでしょう。

「債権法改正対応版 契約実務と法 −リスク分析を通じて−」345頁

「債権法改正対応版 契約実務と法 −リスク分析を通じて−」345頁

法務パーソンへのメッセージ

最後に、本書を手に取る法務パーソンへ向けて、メッセージをお願いします。

河村氏
改正民法では、これまでの判例等がルール化されています。よって、契約書の作成や検討をする法務パーソンにとっては、改正民法を把握することで、契約書の条項の必要性やその規定の仕方について、従前より理解しやすくなっていることは間違いありません。
また、今後、新たな解釈などが出てくる可能性もあります。将来の紛争を未然に防ぐためにも、これらが契約実務にどのように必要か、あるいは適正かなどの点を改めて検討しておくことが望ましいでしょう。

債権法改正対応版 契約実務と法-リスク分析を通して-

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