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第14回 荷為替手形決済の仕組みと為替手形の形式

取引・契約・債権回収
宮田 正樹

 本稿では、「荷為替手形決済」の仕組みと、その応用編である信用状なし荷為替手形決済(D/P、D/A)、信用状付荷為替手形決済(L/C決済)で用いられる為替手形の形式について解説します。

荷為替手形決済

 「第13回 貿易決済の種類と条項」で、荷為替手形決済を「遠隔地に所在する顧客との間で「キャッシュ・オン・デリバリー(cash on delivery)」と同じ効果を発揮する手段」と紹介しました。その荷為替手形決済の仕組みを下の図を使って解説します。なお、輸出者と輸入者との間で売買契約が結ばれていることを前提としています。

荷為替手形決済の仕組み

  1. 輸出者は商品を船積みし、輸入者宛に出荷する

  2. 商品を受け取った船は、輸出者に船荷証券(bill of lading:B/L)を交付する

  3. 輸出者は商品代金の金額に相当する為替手形を発行する
    ここで発行される為替手形は名宛人を輸出者自身とする自己受為替手形や名宛人を仕向銀行(銀行A)とするもので、D/AやD/Pにおいて発行されるものです。実務で用いられる為替手形の形式については、後記2-3を参照ください。

  4. 輸出者は、発行した為替手形とB/Lとをセットにして輸出者の取引銀行A(「仕向銀行」と呼ばれる)に渡し、輸入者から手形金額を取立てるべく依頼する
    輸出者の取引銀行A(仕向銀行)が単に取立依頼を受けるのでなく、手形を買い取る(手形割引する)場合もあります。銀行としてはB/Lすなわち商品が担保として付いているので、買取のリスクが少ないと判断するからです。その場合には、輸出者はただちに輸出代金を現金化することができることになります。
    なお、「手形割引」とは、満期のまだきていない手形の所持人(割引依頼人)から金融機関がその手形を譲り受け、手形金額から満期までの利息 (割引料といいます)を差引いた金額を割引依頼人に交付する融資方法の一つで、金融機関の貸付業務の一種です。

  5. 銀行Aは輸入者の居る国に存在する自行のコルレス銀行B(「取立銀行」と呼ばれる)に為替手形とB/Lのセットを送り、輸入者から手形金額を取立てるべく依頼する
    「コルレス」とは「correspondent(コレスポンデント:文通者、取引先)」の略です。「コルレス銀行」とは、送金の支払委託や手形の取立依頼、信用状の授受、決済勘定などについてあらかじめ取決めを行っている他の銀行(まさに「取引先」銀行)をいいます。

  6. 輸入国の銀行Bは、為替手形とB/Lのセットを輸入者に呈示し、当該手形を決済したなら、その引き替えにB/Lを渡すとして、輸入者に手形決済を迫る

  7. 輸入者は手形金額を銀行Bに支払い、引き替えにB/Lを受け取る(輸入者は、受け取ったB/Lで船から商品を引き取ることができる)。
    この⑥および⑦が、「キャッシュ・オン・デリバリー(cash on delivery)」と同じ効果」と表した由縁です。

  8. 銀行Bは、輸入者から受け取った現金を銀行Aに送金する

  9. 銀行Aは、銀行Bから送金された現金を輸出者に送金する

為替手形

 国内取引において手形決済の比率が減少し、現金振込や電子手形(「でんて」)あるいはファクタリングの比率が増えてきている現在、日本で流通している手形の大半を占める「約束手形」でさえ、それを目にした経験のある人は少ないことでしょう。ましてや「為替手形」となると、現物を知っている人はほとんどいないことと思います。

 そこでまず、「為替手形」についてその基本を紹介しておきます。

為替手形とは

 為替手形とは、手形の振出人(発行者)が、第三者(支払人)に委託し、当該手形の受取人またはその指図人に対して一定の金額を支払ってもらう形式の有価証券のことです。
 これに比べ、約束手形は、振出人が、受取人またはその指図人もしくは手形所持人に対し、一定の期日に一定の金額を支払うことを約束する有価証券のことです。

 下の図が、現在日本で発行されている全国銀行協会連合会が規格、様式を定めた統一手形用紙に準拠した為替手形の見本です。

全国銀行協会連合会が規格、様式を定めた統一手形用紙に準拠した為替手形の見本

 見本の為替手形は、「振出人」であるB製作所が、債権者・C商事を「受取人」として発行したもので、支払金額4千万円の「支払人」をA機械としています。

 引受欄や支払地、支払場所は記載されていないことが多いです。そこで、この為替手形の「受取人」であるC商事は、これを「支払人」であるA機械に呈示して、引受してもらう、すなわち、引受欄に記名捺印し、支払地、支払場所を記載してもらう必要があります。

手形の引受による支払人の決済義務

 上記の「引受」により支払人・A機械に手形金額の支払義務(当該為替手形の決済義務)が生じます。

 なぜ、為替手形の場合、第三者である支払人が振出人に代わって支払いを行うのかというと、下の図のように、為替手形に登場する当事者間には、支払人・引受人であるCが振出人に金銭債務を負うという関係があるからです。手形決済は、原則として、図の矢印のように銀行経由で行われます。  

為替手形による決済の流れ

 上記の図における「受取人(A)」を振出人自身として発行した為替手形が「自己受為替手形」です。貿易決済に使われていた為替手形は、基本的には「自己受」の形態です。

実務での為替手形(Bill of Exchange)の記載内容

 現在の実務では、取引銀行との取決めもあることにより、D/A、D/PおよびL/Cに使用する為替手形(Bill of Exchange)の記載内容は、下の図のように受取人(支払先)を仕向銀行とするものとなっています。

実務での為替手形(Bill of Exchange)の記載内容

  1. D/A
    Documents against Acceptanceの略です(Documents against Paymentの場合は「D/P」)。

  2. 手形番号
    手形を振り出す輸出者の整理番号です。

  3. 手形金額
    数字で記入します。

  4. 手形の振出地と振出日(必須記載事項)

  5. 手形期限
    期限付きの場合には「sixty(60)days after 〔sight〕」(一覧後60日払い)のように、ユーザンス期間を入れます。見本は「At sight」(一覧払い:手形を呈示されたらただちに支払わないといけない)なので、xxxxxとスペースを埋めて消しています。D/P決済の場合は、一覧払いなので、必ずこの処理を行います

  6. 「SECOND of the same tenor and date being unpaid」
    この文言は、「第1券で支払いがなされたら、第2券は無効となる」という表示です。
    手形は、2通(2券)作成します。これは、輸出地の銀行から取立銀行(L/C取引の場合は信用状発行銀行)荷為替を送るときに、到着遅延や紛失に備えて2便に分けて送るためです。文言にもある通り、第1券(the First Bill of Exchange)で決済がなされると、第2券(the Second Bill of Exchange)は無効となります。

  7. 受取人(必須記載事項)
    「輸出地銀行(仕向銀行)」とします。
    「or order」と書いてあるのは、仕向銀行が「裏書譲渡した相手」のことを示しており、譲渡するには裏書が必要であることを明確化しているのです。

  8. 手形金額(必須記載事項)
    見本のように英字でスペルアウトするか、チェックライターで印字します。

  9. 名宛人(必須記載事項)
    支払人のこと。「輸入者」とします。

  10. 振出人(必須記載事項)
    「輸出者」とします。

※上記のBILL OF EXCHANGEの図に描き加えていませんが、日本で発行する場合には、これも手形の一種となりますから「印紙税」の対象となり、収入印紙を貼付し消印を施す必要があります。貿易決済用の「荷為替手形」はその額面が10万円未満であれば非課税ですが、10万円以上であれば税額は一律200円が原則です。
なお、⑥で「手形は、2通(2券)作成します」と説明していますが、この場合、収入印紙を貼付・消印するのは、第1券(the First Bill of Exchange)だけで良いことになっています。


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