消滅時効についての民法改正の概要

取引・契約・債権回収
西中 宇紘弁護士

 現在国会に提出されている民法改正法案では、消滅時効に関する民法の規定についても大幅に改正されると聞きました。どのような改正がされるのか概要を教えて下さい。

 消滅時効制度に関して改正民法において、現行民法から大きく変更がされる点は以下の4点です。

  1. 債権の消滅時効期間が、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間、権利を行使することができる時から10年間に変更された。
  2. 「中断」という概念が「更新」に、「停止」という概念が「完成猶予」にそれぞれ変更された。
  3. 「更新」事由と「完成猶予」事由の整理が行われた。
  4. 協議による時効の完成猶予に関する規定を新設した。

解説

目次

  1. 債権の消滅時効期間
    1. 民法の改正内容
    2. 改正による影響
  2. 「中断」と「停止」から「更新」と「完成猶予」へ
    1. 改正内容
    2. 改正による影響
  3. 「更新」事由と「完成猶予」事由の整理
    1. 改正内容
    2. 改正による影響
  4. 協議を行う旨の合意による時効の完成猶予
    1. 改正内容
    2. 改正による影響

債権の消滅時効期間

民法の改正内容

改正民法第166条(債権等の消滅時効)

1 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
 一 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
 二 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。
2 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは、時効によって消滅する。
3 前2項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を更新するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。

 改正民法においては、債権者が権利を行使できる時(客観的起算点)から10年が経過したときに加えて、債権者が権利を行使することができることを知った時(主観的起算点)から5年が経過したときも、債権は時効によって消滅するとされています(改正民法166条1項)。

 現行民法では、債権の消滅時効の原則的な時効期間を、「権利を行使することができる時」(客観的起算点)から10年と定め(現行民法166条、167条)、その上で商行為によって生じた債権については5年間(商法522条)とし、その他職業別に短期間の時効期間を別途定めています(現行民法170条~174条)。

 したがって、改正民法においては、主観的起算点から5年間による消滅時効を認める点が現行民法から大きく変わった点になります。また、職業別の短期消滅時効期間を定めている現行民法170条~174条は削除されました。さらに、商事債権の時効期間を5年間と定めている商法522条の規定も削除されることになります。

 以上により、債権の種類ごとに、まちまちになっていた時効期間は、原則として「 主観的起算点から5年間・客観的起算点から10年間」に統一されることになります。

時効期間は原則として「 主観的起算点から5年間・客観的起算点から10年間」に統一

改正による影響

 改正民法においては、客観的起算点と主観的起算点の2つを認めていることから、一見すると時効管理が大変になるように思いますが、契約に基づく履行請求権について言えば、通常は期限が到来した場合に債権者はそのことを認識しているため、客観的起算点と主観的起算点は一致します。そのため、原則的な時効期間は債務の履行期から5年となります。これは、商事債権については、現在の商法による結論と同じです。

 また、商品の売掛金債権や工事請負代金債権など、現行民法において短期消滅時効の対象となっている債権については、消滅時効期間が長期化することになります。

「中断」と「停止」から「更新」と「完成猶予」へ

改正内容

 現行民法においては、消滅時効の進行や完成を妨げる事由として、「中断」と「停止」を定めていました。「中断」とは、時効進行中に時効の基礎となる事実状態の継続が破られたことを理由に、それまで進行してきた時効期間をリセットして1から時効期間を再スタートさせるもの、「停止」とは、時効完成の直前に、権利者による時効中断を不可能又は著しく困難にする事情が生じた場合に、その事情が解消された後一定期間が経過する時点まで時効の完成を延期するものです。

 改正民法においては、これら「中断」と「停止」という概念を、意味内容はそのままにそれぞれ更新」と「完成猶予という言葉に変更しています。

 この変更は、意味内容と語感を一致させる趣旨です。すなわち、現行民法の「中断」という言葉は、その時点で一旦止まり再度その時点から進行することをイメージさせ、「停止」という言葉は、その時点で確定的に止まることをイメージさせるため、それぞれの意味内容と照らし合わせれば必ずしも法律専門家以外の一般の方にわかりやすい言葉ではありませんでした。
 そこで、「中断」については、リセットするという意味内容をより端的に表現する「更新」という言葉に、「停止」については時効の完成を延期するという意味内容をより端的に表現する「完成猶予」という言葉にそれぞれ変更されたのです。

「中断」と「停止」から「更新」と「完成猶予」へ

改正による影響

 概念の変更にすぎないため、改正による影響はほぼないものと思います。

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