動産譲渡担保権とは?どう実行して債権回収を図るべきか

取引・契約・債権回収
下西 祥平弁護士

 弊社は、取引先からの売掛金保全策として、取引先の製造機械設備や在庫商品を担保に取りたいと考えています。動産譲渡担保という方法があると聞きましたが、どのように設定すればよいでしょうか。また、実際に動産譲渡担保を実行して債権回収を図るにはどのようにすればよいでしょうか。

 機械設備等の特定動産についても、在庫商品のように倉庫内で流動する動産についても動産譲渡担保権を設定することができます。動産譲渡担保は契約により設定し、第三者に対抗するには、取引先に貴社の為に占有する旨の意思表示をさせた上で引き続き占有させる方法と、動産譲渡登記を具備する方法があります。動産譲渡担保権を実行する際は、取引先に対して実行通知を発出し、担保動産を自ら取得するか、担保動産を換価処分して債権回収を図ります。

解説

目次

  1. 機械設備や在庫商品を担保に取るには
  2. (集合)動産譲渡担保権はどうすれば設定できるか
  3. 対抗要件はどうすれば具備できるか
  4. なぜ担保設定後のモニタリングは重要か(特に集合物の場合)
  5. 担保権はどうすれば実行できるか
  6. まとめ

機械設備や在庫商品を担保に取るには

 民法は当事者間の合意によって動産を担保に取る方法として質権(民法342条以下)を予定しています。しかし、質権では、事業に用いる機械設備を債務者(説例では取引先、以下同じ)が手元に置いて使用することができません。
 そこで、取引先がそのまま事業に用いることができる状態で機械設備を担保に取る方法として、動産譲渡担保権という方法が認められています。さらに、動産譲渡担保権は、機械設備等の特定の動産について個別に担保に取る方法だけでなく、倉庫内等にある在庫商品のように一定期間流通する多数の動産の集合体を担保にとる方法(これを「集合動産譲渡担保」といいます)も認められています。

(集合)動産譲渡担保権はどうすれば設定できるか

 動産譲渡担保権は、債権者と債務者との間の譲渡担保権設定契約書にて設定されます。機械設備のように特定の動産を担保に取る場合は、当該機械の型番や製造番号などで動産を特定する必要があります。
 一方、在庫商品のように流動する集合物を担保に取る場合は、例えば、「●●倉庫1階Fブロックに保管する在庫商品の一切」などとして、動産の種類、保管場所及び量的範囲の3つの要素を基軸に特定する必要があります。

対抗要件はどうすれば具備できるか

 動産譲渡担保権を第三者に対抗するためには、「引渡し」(民法178条)が必要となります。ここでいう「引渡し」とは、現実の引渡しだけを意味するのではなく、債務者(取引先)に占有させたまま、債権者である貴社のために今後占有する旨の意思表示をさせる方法も含まれます(これを「占有改定」といいます、民法183条)。
 これにより、債務者(取引先)は担保にとられた機械設備を継続して利用することが可能であり、在庫商品を独自に搬入搬出させることが可能です。
 また、平成17年10月1日に施行された「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例に関する法律」(以下「動産債権譲渡特例法」といいます)にて、法人がする動産の譲渡については登記が可能となりました。
 この動産譲渡登記が具備された場合は、民法178条の引渡しがあったものとみなされ、対抗要件が具備されます。集合物についても、動産の種類、保管場所にて特定するなどの要件を満たせば、動産譲渡登記を行うことが可能です。

 上記のとおり、(集合)動産譲渡担保の対抗要件を具備するために外形上何らかの措置を講じる必要はありませんが、外形上占有者が明らかではないが故に、事後に当該動産の善意無過失の取得者であるとして、即時取得(民法192条)を主張されるリスクがあります。そこで、少なくともネームプレートをつける等の手段により、事実上誰の占有に置かれているかを公示しておくことが望ましいといえます

なぜ担保設定後のモニタリングは重要か(特に集合物の場合)

 機械設備等の動産も定期的に設置場所を訪問して現況確認をしておく必要がありますが、特に在庫商品のように保管場所内から搬出され、また新たに搬入される集合物を担保に取る場合は担保実行時に備えて厳格にモニタリングを行わなければなりません。
 なぜなら、通常の営業の範囲内で在庫商品は処分が許容されていますが、在庫商品が出ていくばかりでは担保価値は滅失してしまいますし、在庫商品の保管場所を移転されてしまったりすると、集合物としての特定の要件を欠き、担保としての効力が消滅してしまう恐れがあるからです。

 したがって、集合動産譲渡担保設定契約書締結段階において、保管場所への立ち入り権限のほか、在庫台帳等の作成提出、入出庫状況の報告義務などを課して、債権者となる貴社が常に担保となる集合物の状況と担保価値を把握できるように準備しておくことが極めて重要となります。

担保権はどうすれば実行できるか

 動産譲渡担保権を実行する為には特別な法的手続を必要とせず、単に債務者(取引先)に対して譲渡担保権を実行する旨の通知をすれば足ります。一般的には内容証明郵便で通知します。これにより、譲渡担保として供されている特定の動産の所有権は債権者である貴社に移転し、また集合物である在庫商品は集合物の構成部分が確定し、持ち出しが禁止されます。

 貴社が債権回収を図るためには、当該動産を処分して換価代金にて回収するか(処分清算)、当該動産を自らの財産として確定させ、その価値をもって弁済に充てることとなります(帰属清算)。
 いずれの方法によるとしても、適正な価格での換価・評価が不可欠となりますので、事後に争いにならないようにあらかじめ契約締結段階で鑑定評価を行う者を確定させておく場合もあります。仮に当該動産が、貴社の取引先に対する債権を上回る価値を有する場合は、清算して、差額を取引先に返還しなければなりません。
 なお、取引先には、清算金が支払われるか、第三者に売却処分されるまでの間に、貴社に対する債務を全額弁済することで、当該動産を受け戻す権利が認められています。

 このように、動産譲渡担保権は法的措置によることなく、極めて簡易かつ迅速に回収実現に向けた準備を進められますが、他方で動産を換価処分するにしても、自己の所有物にするにしても、債務者(取引先)の協力が必要となります。債務者(取引先)が協力せず、貴社の担保実行を免れるため、担保動産を隠したり処分したりする危険がある場合には、現場で監視する等の事実上の対応を要するほか、直ちに占有移転禁止の仮処分決定を裁判所から取得する、その後、動産引渡請求訴訟を提起する等、法的手続を踏まなければならない場面もあります。

まとめ

 上記のとおり、(集合)動産譲渡担保権は、外形上の担保資産がない取引先に対しても担保を取ることが可能であり、かつ実行時においても簡易かつ迅速に回収を実現できる可能性が高い半面、その設定契約時に適正なモニタリングを行うことができるようにするほか、実行時には緊急対応を要する場合があることに留意する必要があります。

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