債権譲渡担保権とは?どう実行して債権回収を図るべきか

取引・契約・債権回収
下西 祥平弁護士

 弊社は、新たな取引先に対して継続的に商品を販売するのですが、取引先の信用力に不安があります。取引先には現状有益な担保がないのですが、取引先は当社から仕入れた商品を転売しているので、取引先が販売先に対して有する将来の債権を担保に取っておき、万一の場合には回収を図りたいと考えますが、可能でしょうか。

 将来発生する債権を集合体として担保に取ることは可能です。担保に取るためには、(集合)債権譲渡担保契約書を締結する必要があります。さらに、集合債権譲渡担保権を第三者に対抗するためには、販売先に対して確定日付ある通知をするかまたは販売先から確定日付ある承諾書を取得するか、若しくは債権譲渡登記を具備する必要があります。担保実行時には販売先に対して直接取立の意思表示を通知して債権の取立てを行うことが可能です。

解説

目次

  1. 集合債権譲渡担保とは
    1. 債権を裏付けとした担保設定
    2. 集合債権譲渡担保権を設定する契約の法律構成とは
  2. 集合債権譲渡担保設定契約における留意点
    1. 譲渡禁止特約が付いていないか
    2. 将来債権の特定がなされているか
  3. 集合債権譲渡担保権設定を第三債務者および第三者に対抗する方法
    1. 担保権を確実なものとするための対抗要件具備
    2. 第三債務者に対する対抗要件
    3. 第三者に対する対抗要件
    4. どの対抗要件を具備するのがいいのか
  4. 将来債権譲渡担保権の実行
    1. 担保実行前に確認すること
    2. 実行通知の発送
    3. 債権の回収
  5. まとめ

集合債権譲渡担保とは

債権を裏付けとした担保設定

 最近は金融機関においても、不動産担保に依存することなく、企業が保有する在庫や売掛債権、機械設備等およびその他の債権等の事業収益資産を活用した融資の取組が推奨されるようになりました(これをABL(=Asset Based Lending)といいます)。

 事業会社においては、取引先に対して債権を抱える取引を開始する場合、不動産については金融機関が優先して担保をとっている、取引先が保証金を積むほどの余力がないまたは保証金を積むことに対する抵抗が強い場面が想定されます。そのような場合に活用されるのが、将来事業によって発生する見込みの高い一定期間の売掛債権等を担保にとる「集合債権譲渡担保」という方法です。

集合債権譲渡担保権を設定する契約の法律構成とは

 集合債権譲渡担保権の設定は、当事者間の契約により行われます。その際、一般的な集合債権譲渡契約では、外形的には債権者が債務者から債権の譲渡を受けるのですが、債務者は、債権者への弁済を継続する限り、債権者から委任を受けて第三債務者から債権の取立てを行い、その代金を直接受領することができます。これが債権譲渡「担保」と言われる所以です。要するに、将来発生する一定の債権を相手方に譲渡するけれども、相手方に対する弁済を続ける限りは、これまでと変わらず取引を継続することができるという特徴があります。

集合債権譲渡担保権を設定する契約の法律構成

集合債権譲渡担保設定契約における留意点

譲渡禁止特約が付いていないか

 まずは、担保に取ろうとする債権について、両当事者間(例えば取引先と販売先との間)で譲渡禁止特約が設定されていないかに注意する必要があります。仮に、貴社が、取引先と販売先との間で発生する債権に譲渡禁止特約が設定されていることを知っていた場合や、容易に知ることができた場合には、せっかく設定した集合債権譲渡担保自体が無効とされてしまいます(民法466条2項、最高裁昭和48年7月19日判決・民集27巻7号823頁)。特に、業界の取引慣行上、債権譲渡禁止特約が付いていることが一般的である場合には注意が必要となります。例えば、建設業界においては、契約書に標準約款を引用し、譲渡禁止特約を設定していることが一般的です。  

将来債権の特定がなされているか

 将来の債権を担保に取ることは、担保の目的となる債権が特定されていれば有効と解されています。現在は、債務者(説例では「取引先」、以下同じ)の第三債務者(説例では「販売先」、以下同じ)に対する債権が他の債権と「識別」できる程度に特定されていればよいと考えられています(最高裁平成12年4月21日判決・民集54巻4号1562頁)。

 具体的な債権の特定方法はケースごとに判断されますが、第三債務者(販売先)が特定されている場合には、第三債務者(販売先)との間で発生する債権の種類、発生年月日(発生期間)が特定されていれば足りると解されています。仮に、第三債務者(販売先)が特定されていない場合でも、債権の発生原因(例えば、不動産賃貸業を営む会社が、将来取得する不動産賃料債権を譲渡する場合は、債権発生原因は、「●●」所在の不動産の賃貸借契約に基づく賃料債権など、第三債務者の氏名・商号および債権の種類等以外で、目的債権を特定する情報を指します)により、対象となる債権を他のものと識別できように最低限の特定を行う必要があります。

債権を特定する方法
  • 債権の当事者
  • 債権の種類
  • 債権の発生年月日(発生期間)
  • 債権の発生原因

集合債権譲渡担保権設定を第三債務者および第三者に対抗する方法

担保権を確実なものとするための対抗要件具備

 せっかく集合債権譲渡担保契約書を締結しても、実際に債務者(取引先)に対して支払いをする第三債務者(販売先)や、債務者(取引先)に対して同じく債権を有している第三者に対抗できなければ担保としての意味がありません。

第三債務者に対する対抗要件

 第三債務者(販売先)に対する対抗要件を具備するには、第三債務者に対して通知を発するか、第三債務者から承諾を得る(民法467条)、若しくは動産および債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律(以下「動産債権譲渡特例法」といいます)による登記の登記事項証明書を交付するという方法があります。  

第三者に対する対抗要件

 第三者に対する対抗要件を具備するには、第三債務者に対して確定日付のある通知を発する、第三債務者から確定日付のある承諾書を受領する、若しくは動産債権譲渡特例法による登記を具備するという方法があります。

第三者に対する対抗要件の種類
  • 確定日付のある通知
  • 確定日付のある承諾
  • 動産債権譲渡特例法に基づく登記

どの対抗要件を具備するのがいいのか

 それぞれの方法に一長一短があり、取引先の意向もありますので、事案に応じて最も適切な方法を選択することとなります。ただし、例えば第三債務者(販売先)を特定しない将来債権の譲渡の場合は、第三債務者に対する通知または承諾という対抗要件具備の方法がそもそも選択できないため、動産債権譲渡特例法による登記によるほかなく、かつ実行時に特定した第三債務者に対して対抗要件具備のため登記事項証明書を交付しなければならない点に留意する必要があります。  

将来債権譲渡担保権の実行

担保実行前に確認すること

 実際に債務者(取引先)からの支払いが遅延した場合には、集合債権譲渡担保権の実行を検討しなければなりません。まずは、実行時における、第三債務者、債権の内容、金額等を確認しなければなりません。この時、ただちに実行に移行する為には日頃から債務者(取引先)から担保にとっている債権の内容について情報提供を受け、モニタリングしておかなければなりません(通常は担保権設定契約時にその旨の条項を整備しておきます)。

実行通知の発送

 そして、いざ実行する場面では、債務者(取引先)および第三債務者(販売先)に対して、集合債権譲渡担保権の実行通知を内容証明郵便により発送します。動産債権譲渡特例法による登記により第三者対抗要件を具備している場合は、この時に第三債務者(販売先)に対して登記事項証明書を別途配達証明郵便等で送達する必要があります。  

債権の回収

 実行通知を発送後、貴社は第三債務者(販売先)から直接債権回収を行います。第三債務者(販売先)が正当な理由になく支払いを拒絶しない限りは、裁判手続など経ることなく、簡易迅速に債権回収を図ることができます。ただし、第三債務者(販売先)が支払いを拒絶する場合には、訴訟手続により判決を取得し、強制執行の準備をしなければなりません。また、第三債務者(販売先)が集合債権譲渡担保権設定に対して異議をとどめず承諾をしていた場合を除き、債務者に対する相殺権、取消権や解除権等の支払拒絶事由をもって貴社の請求を拒絶できることに留意が必要です。  

まとめ

 以上のとおり、集合債権譲渡担保権による担保取得は、実行時における債権回収手続の迅速さに魅力はありますが、当初の契約書の作成(債権の特定を含む)、対抗要件の具備、実行手続の各場面で手続の遺漏なきよう慎重に対応する必要があります。

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