欠陥はどのような場合に認められるのか

取引・契約・債権回収
村松 頼信弁護士

 当社が製造した機械を販売したところ、販売先からその機械に不具合が見つかったとの連絡があり、無償で修理を行ったため多額の損害が発生しました。不具合の原因はどうやらその機械に使用した部品にあったようですが、この部品に欠陥があったとして部品メーカーに対して製造物責任を問うことはできるのでしょうか。

 製造物責任の要件である欠陥は、「製造上の欠陥」、「設計上の欠陥」および「指示・警告上の欠陥」の3類型に分けられ、多くの裁判例で類型ごとに欠陥の有無に関する判断が示されています。また、欠陥の主張においては、事故の原因となった製造物の性状を具体的に特定して主張する必要がありますが、製造物を通常の用法に従って使用しているときに通常の使用からは起こり得ない現象が発生して事故に至ったという場合には、それをもって欠陥の主張として一応足りるとされています。

解説

「欠陥」とは何か?

 「欠陥」とは、製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることを指します(製造物責任法2条2項)。
 欧米諸国では、この欠陥を「製造上の欠陥」、「設計上の欠陥」および「指示・警告上の欠陥」の3類型に分類し、類型ごとに欠陥の判断基準が論じられています。日本の製造物責任法は「欠陥」の定義においてこうした類型を採用しなかったものの、有用であれば裁判において類型に沿った主張立証を行うことも可能とされており、実際に類型ごとに欠陥の有無について判断した裁判例も多数見られます。

「製造上の欠陥」とは何か?

 「製造上の欠陥」とは、製造物が設計・仕様どおりに作られなかったことによって安全性を欠く場合の欠陥であり、製造工程における製品安全に着目する点に特徴があります。他方、設計上の欠陥や指示警告上の欠陥は安全設計段階に着目した欠陥類型といえます。
 設計・仕様どおりに製造されていなかったことに起因して損害をもたらす製造物は、当然に「通常有すべき安全性」(製造物責任法2条2項)を欠いていたと評価されることになります。
 典型例としては、何らかの理由で異物が混入している場合が該当します。一般に、製造過程での品質、工程の改善を図っても、一定の比率で設計・仕様から逸脱した不良品(アウスライサー)が発生することは避け難いとされており、そうした不良品が製造業者の無過失で発生したとしても、「製造上の欠陥」として製造物責任の対象となり得ます。
 製造上の欠陥の有無を判断する基準としては、設計書、仕様書等に定められた標準から逸脱していたかどうかを標準とする考え方標準逸脱基準)が一般的です。

「設計上の欠陥」とは何か?

 「設計上の欠陥」とは、製造物が設計・仕様どおりに製造されたものの、その設計・仕様自体が安全性を欠いており、製造物の設計・仕様そのものに由来する欠陥類型です。設計を変更しない限り、その設計に従って製造された製造物すべてに欠陥があることになります。
 設計上の欠陥の判断にあたっては、どのような設計が適切であったか(事故を防止し得る合理的な代替設計)を判断する必要があるため、消費者期待基準(通常の消費者が期待する安全性を製造物が有しているか否かを基準とする)や危険効用基準(製造物の有する効用を危険が上回るか否かを基準とする)が用いられます。
 このうち危険効用基準によって欠陥の有無が判断された裁判例は、医薬品分野、特に医薬品の有効性に関する欠陥が判断されたケースに限られます。

「指示・警告上の欠陥」とは何か?

 「指示・警告上の欠陥」とは、製造物に残存する事故発生のリスクを防止するのに足りる適切な指示および警告がなされていない場合をいいます。
 指示・警告上の欠陥は、製造工程における製品安全に着目する「製造上の欠陥」と異なり、安全設計段階における製品安全に着目している点で「設計上の欠陥」と共通しており、基本的に設計上の欠陥と同様の基準で判断されています。
 ただし、設計上の欠陥において考慮要素とされる「あるべきであった代替設計」には物理的な限界があるのに対し、指示・警告上の欠陥における「あるべきであった指示警告」には容易かつ無限に想定される点で異なっています。

【欠陥の判断基準】

類型 段階 判断基準
製造上の欠陥 製造工程における製品安全 ・標準逸脱基準
→設計書、仕様書等に定められた標準から逸脱していたかどうか
設計上の欠陥 安全設計段階 どのような設計、指示・警告が適切であったか

・消費者期待基準
→通常の消費者が期待する安全性を製造物が有しているか否か

・危険効用基準
→製造物の有する効用を危険が上回るか否か
「あるべきであった代替設計」
→物理的な限界がある
指示・警告上の欠陥 「あるべきであった指示警告」
→容易かつ無限に想定される

欠陥についてどの程度具体的に特定して主張立証する必要があるか?

 製造物責任を主張する原告は、欠陥の存在を基礎付ける事実および欠陥を特定する事実として、事故発生の原因となった製造物の性状を具体的に特定して主張する責任を負います。
 事故発生の原因となった製造物の部位や事故発生に至るメカニズムが解明されている場合には欠陥の特定は困難ではありません。
 これに対し、製造物に起因して事故が発生したことは証明可能であるものの、製造物の構造が複雑で、原因となった部位や事故発生に至るメカニズムが明らかでない場合には、どこまで具体的に特定して主張する必要があるかが問題となります。
 裁判実務では、こうした場合でも、製造物を通常の用法に従って使用しているときに、通常の使用からは起こり得ない現象が発生して事故に至ったという場合には、そのような異常な現象が発生すること自体が製造物の危険な性状であると主張することで、欠陥の主張として一応足りるとされています。

おわりに

 欠陥の3類型は、欠陥の有無の判断において有用であることから実務でも採用されているものなので、問題となっている不具合がどの欠陥に該当するかというよりも、各欠陥類型の判断基準に照らして、どの類型であれば欠陥の存在を基礎付ける主張立証を行いやすいかという観点から検討すべきものといえます。
 また、不具合の具体的なメカニズムが明らかではない場合には、製造物を通常の用法に従って使用しているときに通常の使用からは起こり得ない現象が発生して事故に至ったとの主張立証を行い、製造業者等が製造物の製造過程などについて具体的に反論するのを待ち、その主張を踏まえてさらに欠陥を基礎付ける再反論を行うことも考えられます。

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