【イベントレポート】法務&知財系ライトニングトーク2017 <リーガルテック祭> 主催者たちに聞く、リーガルテック普及のために必要なもの

IT・情報セキュリティ

10月6日、クックパッド株式会社(東京都渋谷区)において、法務&知財系ライトニングトーク2017 <リーガルテック祭>が開催された。
法務&知財系ライトニングトークは、法務・知財系専門職に就く人たちの相互啓発と交流を目的にしたイベントだ。主催者はブログ、「企業法務マンサバイバル」管理人のはっしー氏と「企業法務について」管理人のkatax氏。

今回はクラウド・ビッグデータ・AI・ブロックチェーンといったテクノロジーが法律業務にも応用されつつある現状を背景として、「リーガルテック」にテーマが絞られた。約20名の登壇枠、15名の聴講枠が設けられたが、受付から数日で定員の2倍を超える申し込みがあったという。

登壇者の顔ぶれは、基調ライトニングトークを行った株式会社Toreruの宮崎 超史氏、BUSINESS LAWYERSの運営元である弁護士ドットコム株式会社の橘 大地をはじめ、企業の法務部員、弁護士、エンジニア、官公庁に所属している方と様々。ライトニングトークのテーマは、国内外のリーガルテックの状況、人工知能による企業法務・知財業務の変化、リーガルテックの導入事例、リーガルテックが導入されることによる可能性と問題点、次世代の法務担当のあり方や、国のガイドライン、政治、裁判における活用の可能性など多岐にわたった。

世界のリーガルテック

橘 大地が紹介した世界のリーガルテックマップ。
出典:CB Insights「Legal Tech Market Map: 50 Startups Disrupting The Legal Industry

19時半から約2時間、休憩なしで行われたライトニングトークは、その熱量を保ったまま登壇者、聴講者交えての歓談を迎え、盛況のうちに幕を閉じた。

開催のねらいと当日の感想、リーガルテック普及への課題を主催者であるはっしー氏、katax氏、基調ライトニングトークを行なった宮崎 超史氏に聞いた。

「リーガルテック」が一時のブームとならないために

なぜ「リーガルテック」をテーマに開催されたのですか。

はっしー氏
今回の会の冒頭でも申し上げたのですが、一部のハイテクオタク・ビジョン先行派だけが騒いでいたリーガルテックという言葉が、ついに日本の法律実務家向けの雑誌1にも取り上げられるようになりました。

私自身、15年を超える法務・知財業務に携わる中で感じていた「いつまでこんなことを人がやっているのだろう」という疑問がいくつもあるのですが、これを前向きに解消する手段として、リーガルテックに本格的に取り組むべきときがきたのかなと思っています。

しかし、悪い意味での「バズワード」になり、実際にできることの少なさに失望してブーム終了となるのはよくないので、現状認識を共有したうえで、少しずつリーガルテックを業務に取り入れていくのがよいのではという思いを持っており、ちょうど同じような思いを持っていたkataxさんの協力を得て開催しました。

katax氏
何かイベントをやろうと思っていたところ、はっしーさんからお声掛けいただいたのがきっかけで、私の方にはあまり目的らしい目的はなかったのが正直なところです(笑)。強いて言えば、法務界隈でのプレゼンス向上かもしれません。

幅広い参加者によるライトニングトーク、注目の内容は

当日を振り返ってみて、どのような印象を持ちましたか。

宮崎 超史氏

宮崎 超史氏

はっしー氏
ブログ(「法務&知財系ライトニングトーク2017 <リーガルテック祭>を開催しました」)でも書きましたが、本当に幅広い顔ぶれに参加いただきました。ライトニングトークの内容もテーマ設定の意図を汲んでいたものが多く、当初ねらっていた目的は達成されたと思います。

katax氏
ツールの活用からAIまで、想像以上に幅広いお話を聞けたことが収穫でした。
これから様々な技術が実用化されていく中で、上手に技術を活用できる人と活用できない人とでは生産性に大きな差異が生まれるかもしれません。中長期的には今の「法務」という仕事はなくなっていくのだろうという危機感も感じましたね。


宮崎氏
リーガルテックの盛り上がりを肌で感じたのが、一番の印象です。去年までは全くそのようなことがなかったので。

気になった内容はありましたか。

はっしー氏
沢山ありすぎて絞れないのですが、GitHubについて何人もの発表者から法務・知財業務、そして行政や企業による情報公開との親和性を指摘する声が聞かれましたので、まずはここから取り組むのがよいかなと思います。

katax氏
どれも興味深かったのですが、強いていうと3つあります。
1つ目は官公庁の方による「GitHubを利用した政府系ガイドラインのパブリックコメント」。官公庁がここまでアグレッシブに業務効率化ツールの導入をしているのか、という驚きがありました。
2つ目は「不動産賃貸契約で発見した電子契約の真実」。業界全体で電子契約に関して勘違いしていた状況をリサーチによって覆したお話だったのですが、今後技術の導入に際して法規制が障害になることも少なくないと思います。そんな時に、グレーゾーンを攻める前に正攻法でつき崩せる規制もあるという気づきがありました。
3つ目は「特許データを用いた面白いアレコレ」。特許に関する膨大なデータを分析し、活用の可能性を発表いただきました。技術を活用することでできるようになることの幅広さに驚きましたね。

来場者も熱心に聴講されていました。懇親会も盛り上がっていましたね。

はっしー氏
ライトニングトークをしない方の参加を絞ったこともあり、参加者同士のコミュニケーションが濃いものになったようです。予定していた終了時刻を過ぎて解散をしたあとも、みなさま話がはずんでなかなか会場から出ていただけませんでした(笑)。
いつものライトニングトークは、プレゼンが上手なTwitterの有名人による「パワポ芸」を楽しみに来場されるお客様的な方が多いのに対して、自分も思うところがあってきた、という方が多かったのかもしれません。

リーガルテック普及のためには、法務・知財パーソンも技術を学んでいく姿勢が必要

リーガルテックは企業法務の現場でどのように活用され、普及していくと思いますか。普及のためには何が必要でしょう。

はっしー氏
10年後20年後もWordのファイル交換で契約書を作成しているイメージは、少なくとも私にはないのですが、みなさんはいかがでしょうか。もしそうだとすれば、次のスタンダードはどうあるべきか、法務・知財パーソンにも使いやすいテックサービスができるように声を上げていったほうがよいと思います。

エンジニアの方から法務・知財の仕事の仕方を見ているとあまりにも非効率でびっくりするという趣旨の発言が今回のライトニングトークでもありました。 法務・知財領域にいる方々がテック側の時流をキャッチアップし、そのスタンダードに合わせるべきこともでてくるかもしれません。世界の共通言語が英語・中国語になるならそれを学ぶ必要があるのと同様です。

弁護士・弁理士などの士業でも、企業内にいる法務・知財の担当者でも自分の相談者のニーズに応えるのが仕事であることはかわらないでしょうから、テックに関するニーズが一部でもあればそのニーズに応えるべく技術を学んでいく姿勢は必要なのではないかと、今回改めて感じました。

katax氏
まずはすでに実施されている様々な施策の延長線上にあるという意味で、「ツールを活用した業務効率化」の面から法務領域への技術の導入が進んでいくのは間違いないと思います。
業務効率化以外では、判断や意思決定をサポートしてくれるサービスや、さらに進んで判断や意思決定の一部を代わりに行ってくれるようなサービスはいかにも「リーガルテック」という感じはしますが、まだまだ先の話かもしれません。

普及のために必要なことは、弁護士や法務担当者が、今自分たちが担当し、価値を発揮している(と思っている)仕事をどれだけ進んで手放せるかにかかっているのではないでしょうか。

宮崎氏
最初は、IT系の会社から普及していき、そして、それを顧客としている法律事務所、特許事務所も率先して導入すると思います。
本格的に普及するための課題は、テクノロジーに対する理解ではないでしょうか。テクノロジーがいかに業務にインパクトがあるかとともに、テクノロジーは自分達の脅威ではなく、サポートツールであると認識してもらうことが必要です。

弊社が目指すリーガルテックが実現された世界は「法律を意識することなしに、法的リスクを排除できる世界」です。法律に時間や費用が取られることによって、本来企業が行うべき開発やマーケティングが行えなくなります。 もっと本業に集中できる世界。それがリーガルテックの実現された世界だと思います。

(取材、構成:BUSINESS LAWYERS編集部)


  1. 編注:NBL1107号24頁、ビジネス法務2017年7月号 ↩︎

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