要配慮個人情報とは?

IT・情報セキュリティ

 平成27年の改正個人情報保護法では、機微情報(センシティブ情報)について、「要配慮個人情報」として定められるとのことですが、その具体的内容について教えてください。

 「要配慮個人情報」には、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実等が該当します。

解説

※本QAの凡例は以下のとおりです。

  • 個人情報保護法:個人情報の保護に関する法律及び行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の一部を改正する法律(平成27年9月9日法律第65号)に基づく改正後の個人情報保護法
  • 施行令案:個人情報の保護に関する法律施行令の一部を改正する政令(案)に基づく改正後の同法施行令
  • 規則案:施行後の個人情報の保護に関する法律施行規則(案)

「要配慮個人情報」について改正された背景

 EUデータ保護指令においては、機微情報(センシティブ情報)を取得することが原則として禁止されています。日本がEUから「十分性の認定」を得るためには、この定めを法律上定める必要があり、今回の改正へとつながりました。

 「十分性の認定」とは、EUのデータ保護指令において、EU域内から個人データを第三国に移転するには、EUから見て十分なレベルの保護措置を確保している場合に限定していることをいいます。

 個人情報保護法を改正する前の日本は、この「十分性の認定」を受けておらず、EU域内から日本国内へ個人データを移転することが非常に困難な状態になっていました。
 詳細については「個人データを外国にある第三者に提供する場合どのような規制があるか」を参照ください。

要配慮個人情報の定義と規制の概要

 「要配慮個人情報」とは、「本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報」をいいます(個人情報保護法2条3項)。
 個人情報取扱事業者は、法令に基づく場合等一定の例外を除き、あらかじめ本人の同意を得ないで、要配慮個人情報を取得してはなりません(個人情報保護法17条2項)。

要配慮個人情報には何が該当するか

 法律上、「要配慮個人情報」としては以下のものが定められています(個人情報保護法2条3項)。

要配慮個人情報
(個人情報保護法2条3項)
意義(※)
人種 人種、民族的又は種族的な出身を意味し、「アイヌ人」、「在日韓国・韓国人」のような情報がこれに該当します。単なる国籍は「人種」には該当しません。
信条 個人の基本的なものの見方、考え方を意味し、思想と信仰の双方を含みます。
社会的身分 ある個人にその境遇として固着していて、一生の間、自らの力によって容易にそれから脱し得ないような地位を意味します。単なる職業的地位はこれに該当しません。
病歴 病気に罹患した経歴を意味します。
犯罪の経歴 いわゆる前科(有罪判決を受けこれが確定した事実)が該当します。
犯罪により害を被った事実 身体的被害、精神的被害及び金銭的被害の別を問わず、一定の犯罪の被害を受けた事実を言います。
その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報 2-1を参照ください。

(※)「一問一答 平成27年改正個人情報保護法」(商事法務)21頁参照

「政令で定める記述等」とは

 上表にもある、「政令で定める記述等」とは、次に掲げる事項のいずれかを内容とする記述等(本人の病歴又は犯罪の経歴に該当するものを除く)とするとされています(施行令案2条各号)。

ア 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の個人情報保護委員会規則で定める心身の機能の障害があること。
イ 本人に対して医師その他医療に関連する職務に従事する者(「医師等」)により行われた疾病の予防及び早期発見のための健康診断その他の検査(「健康診断等」)の結果
ウ 健康診断等の結果に基づき、又は疾病、負傷その他の心身の変化を理由として、本人に対して医師等により心身の状態の改善のための指導又は診療若しくは調剤が行われたこと。
エ 本人を被疑者又は被告人として、逮捕、捜索、差押え、勾留、公訴の提起その他の刑事事件に関する手続が行われたこと。
オ 本人を少年法に規定する少年又はその疑いのある者として、調査、観護の措置、審判、保護処分その他の少年の保護事件に関する手続が行われたこと。

 上記アの「個人情報保護委員会規則で定める心身の機能の障害」とは、次に掲げる障害をいいます(規則案5条各号)。

a  身体障害者福祉法における身体上の障害
b  知的障害者福祉法における知的障害
c  精神保健及び精神障害者福祉に関する法律における精神障害(発達障害者支援法における発達障害を含み、bに掲げるものを除く。)
d  治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病であって障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律4条1項の政令で定めるものによる障害の程度が同項の厚生労働大臣が定める程度であるもの

要配慮個人情報として指定された理由

 上記のうち、施行令案2条にあげられたアからウまでは、「病歴」に準ずるもの、エ及びオは、「犯罪の経歴」に準ずるものです。第10回個人情報保護委員会の資料によれば、それぞれが要配慮個人情報として指定された理由は以下のとおりです。

施行令案2条に定める記述等 指定された理由
ア 障害(身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害を含む。) 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律第8条及び障害者の雇用の促進等に関する法律第35条等の他の法令においても、障害を理由とした差別や権利利益の侵害を禁止していることを勘案するもの。
イ 健康診断の結果、保健指導の内容 健康診断の結果等は、ある個人の健康状態が明らかとなる情報で、病気を推知又は特定させる可能性があることを勘案するもの。
ウ 診療情報、調剤情報 ある個人の健康状態が明らかとなる情報で、病気を推知又は特定させる可能性があることを勘案するもの。
エ 被疑者又は被告人として刑事手続を受けた事実 被疑者又は被告人として、刑事訴訟法に基づき、逮捕、捜索、差押え、勾留、公訴の提起等の刑事手続を受けた事実は、有罪判決を受けていなくとも刑事手続を受けたのであれば、犯罪への関与があったものと強く推測され、社会から不利益な扱いを受けることが考えられることから、本人としては秘匿したいと考えることが一般的と考えられることを勘案したもの。
オ 非行少年として少年保護事件の手続を受けた事実 非行少年として、少年法に基づき、調査、観護の措置、審判、保護処分等の一切の少年保護事件に関する手続等を受けた事実は、成人の場合における犯罪の経歴や 刑事手続を受けた事実と同様に、差別や偏見を生じさせ本人の更生を妨げ得るもの と考えられることを勘案する。なお、同様の観点から、少年法61 条において、家庭裁判所の審判に付された少年について本人であることが推知できるような記事等を出版物に掲載してはならない旨を規定している。

 なお、個人情報保護委員会の検討段階においては、「ゲノム情報」についても要配慮個人情報として規定することが検討されましたが、遺伝子検査を実施する者は「医師その他医療に関連する職務に従事する者」に含まれ、また、その結果は上記イの「健康診断その他の検査の結果」及び上記ウの「診療」にも含まれ、重ねて規定する必要はないことから、規定されていません。

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