非識別加工情報制度の概要

IT・情報セキュリティ
日置 巴美弁護士

 行政機関個人情報保護法および独立行政法人等個人情報保護法の平成28年改正において、新たに非識別加工情報という類型が設けられたと聞きました。企業で当該情報を取り扱う場合の留意点を教えてください。

 非識別加工情報(行個法2条8項、独個法2条8項)とは、個人情報を加工して得られる、特定の個人を識別することができず、かつ、元の個人情報を復元することができないものであって、匿名加工情報に相当するものといえます。行政機関が保有する個人情報について、一定の制約の下に作成する「行政機関非識別加工情報」(行個法2条9項)と、独立行政法人等が保有する個人情報について、一定の制約の下に作成する「独立行政法人等非識別加工情報」(独個法2条9項)とがあります。これらの情報を企業が取り扱う場合、匿名加工情報の取扱い規定の適用を受けます(個情法38条等)。

解説

※本QAの凡例は注のとおりです1

その他、「健康・医療に関する情報」「非識別加工情報」に関しては、下記をご参照ください。

行政機関非識別加工情報と独立行政法人等非識別加工情報

 非識別加工情報とは、平成28年改正において、行政機関個人情報保護法および独立行政法人等個人情報保護法に新たに設けられた情報の類型です(行個法2条8項・独個法2条8項)。
 総務省、経済産業省といった省庁が作成するもの行政機関非識別加工情報(行個法2条9項)、国立大学(附属病院を含む)、国立がん研究センターや理化学研究所のような国立研究開発法人といった、独立行政法人等が作成するもの独立行政法人等非識別加工情報(独個法2条9項)となります。
 個人情報保護委員会が公表する「ガイドライン(行政機関非識別加工情報編)」および「ガイドライン(独法等非識別加工情報編)」において、「「非識別加工情報」は、個人情報を個人情報の区分に応じて定められた措置を講じて特定の個人を識別することができないように加工して得られる個人に関する情報であって、当該個人情報を復元して特定の個人を再識別することができないようにしたものをいう」と説明されています。

個人情報保護法の匿名加工情報に相当する情報

 非識別加工情報は、個人情報保護法の匿名加工情報(同法2条9項)に相当する情報であるといわれています。匿名加工情報は、個人情報保護委員会が公表する「ガイドライン(匿名加工情報編)」において、「個人情報を個人情報の区分に応じて定められた措置を講じて特定の個人を識別することができないように加工して得られる個人に関する情報であって、当該個人情報を復元して特定の個人を再識別することができないようにしたものをいう」と説明されています。
 このように、非識別加工情報は、いわば “公的な機関が作成する匿名加工情報のようなもの”ということとなります。

行個法規則11条・独個法規則10条の基準に従って、特定の個人を識別できず・元の個人情報が復元できないように加工したものが、行政機関非識別加工情報・独立行政法人等非識別加工情報

 このことは、非識別加工情報を取得し、活用する個人情報取扱事業者が、匿名加工情報と同様の取扱い義務を課せられるとされていることからも明らかです(個情法38条参照。「ガイドライン(匿名加工情報編)」では、匿名加工情報に包含されるとしています)。
 なお、企業が行政機関非識別加工情報または独立行政法人等非識別加工情報の提供を受けた場合、以下の取扱いが求められます。

国の行政機関・独立行政法人等における非識別加工情報の制度のあらまし

出典:個人情報保護委員会「国の行政機関・独立行政法人等における非識別加工情報の制度のあらまし

企業が非識別加工情報の提供を受ける場合の対応

 企業が行政機関非識別加工情報または独立行政法人等非識別加工情報の活用を望む場合、行政機関に対しては行政機関個人情報保護法第4章の2に規定される諸手続に従い、また独立行政法人等に対しては独立行政法人等個人情報保護法第4章の2に規定される諸手続に従って、提案を行って審査を受けるなどすることとなります。対象となる個人情報についての問題は、「行政機関非識別加工情報・独立行政法人等非識別加工情報の対象となる個人情報」をご参照ください。

【非識別加工情報の利用に関する提案から非識別加工情報の提供までの主な流れ】

国の行政機関・独立行政法人等における非識別加工情報の制度のあらまし

出典:個人情報保護委員会「国の行政機関・独立行政法人等における非識別加工情報の制度のあらまし

 企業が行政機関非識別加工情報または独立行政法人等非識別加工情報の提供を受ける場合、その取扱いは匿名加工情報と同様となることから、これらのデータを合わせて活用することが考えられます。ただし、行政機関非識別加工情報の利用は提供元の行政機関と、また、独立行政法人等非識別加工情報の利用は提供元の独立行政法人等と、提供を受ける者が契約を締結することとされており(行個法44条の9、行個法規則10条、8条1項、独個法44条の9、独個法規則9条、8条1項)、この契約は内容について行政機関、独立行政法人の裁量を認めていると考えられ、この契約内容にも留意して取り扱う必要があります。  


  1. ・個人情報保護法・個情法:個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)
    ・行政機関個情法・行個法:行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第58号)
    ・独立行政法人等個人情報保護法・独個法:独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第59号)
    ・ガイドライン(行政機関非識別加工情報編):「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(行政機関非識別加工情報編)」(平成29年3月個人情報保護委員会)
    ・ガイドライン(独法等非識別加工情報編):「独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(独立行政法人等非識別加工情報編)」(平成29年3月個人情報保護委員会)
    ・ガイドライン(匿名加工情報編):「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(匿名加工情報編)」(平成28年11月(平成29年3月一部改正)個人情報保護委員会)
    ・行個法規則:行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律第四章の二の規定による行政機関非識別加工情報の提供に関する規則(平成29年3月31日個人情報保護委員会規則第1号)
    ・独個法規則:独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律第四章の二の規定による独立行政法人等非識別加工情報の提供に関する規則(平成29年3月31日個人情報保護委員会規則第2号) ↩︎

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