行政機関非識別加工情報・独立行政法人等非識別加工情報の対象となる個人情報

IT・情報セキュリティ
日置 巴美弁護士

 行政機関非識別加工情報と、独立行政法人等非識別加工情報は、どのような性質・内容の個人情報から作成されるのでしょうか。また同制度によって、行政機関や独立行政法人等が保有する健康・医療に関する情報について、企業が活用することはできるのでしょうか。

 行政機関非識別加工情報(行個法2条9項)作成対象を制限しており、個人情報ファイルを構成する保有個人情報から、行政機関情報公開法5条1号以外の不開示情報を除くとともに、当該保有個人情報が、個人情報ファイル簿に掲載されるものであること等の要件を満たすものであることが求められます。また、独立行政法人等非識別加工情報(独個法2条9項)についても、同様の制約が設けられています。
 この制約から、健康・医療に関する情報が行政機関非識別加工情報および独立行政法人等非識別加工情報の対象とされていないことがほとんどであり、非識別加工情報の制度によって企業が健康・医療に関する情報を活用することは困難となっています。

解説

※本QAの凡例は注のとおりです1

その他、「健康・医療に関する情報」「非識別加工情報」に関しては、下記をご参照ください。

企業のデータ取得に対する法令の制約

 行政機関非識別加工情報および独立行政法人等非識別加工情報は、匿名加工情報と合わせてビッグデータとしてのデータ活用の一助となるものと期待されていました。
 しかしながら、行政機関個人情報保護法および独法等個人情報保護法は、さまざまなハードルを設けているため(後述の点のほか、提案に際して事業内容等が審査されること(行個法44条の7・1項4号、独個法44条の7・1項4号)や、反対の意見書を提出する者の個人情報が除かれること(行個法44条の8、独個法44条の8)、実際に企業が取得し得るデータの種類、数等はかなりの制約を受けています。

 以下では、最初のハードルとなる加工対象について、行政機関個人情報保護法と独立行政法人等個人情報保護法の規律がおおむね同じであることから、行政機関個人情報保護法を用いて説明をしていきます。

行政機関非識別加工情報の要件

 行政機関非識別加工情報は、一定の要件をみたす個人情報ファイルを構成する保有個人情報の全部または一部を加工して得られるものとされており、この一定の要件によって作成対象とできる個人情報を限定しています(行個法2条9項)。そしてまず、作成対象からは、行政機関情報公開法5条1号以外の不開示情報を除くとされています(同条同項柱書)。

 この一定の要件については、行政機関個人情報保護法と下位法令に細かな要件が定められており、また、その要件の中には情報公開法の参照を求めるものがあります。このため、以下では、作成対象とできる個人情報がイメージできるよう、要件の概要を説明します。

個人情報ファイル簿に掲載されるものであること(行個法2条9項1号)

 個人情報ファイル簿(行個法11条1項)に掲載されない例としては、下記があります(行個法11条2項)。

  • 国の安全、外交上の秘密等の国の重大な利益に関する事項(行個法10条2項1号)
  • 犯罪捜査・犯則事件の調査等のために作成されるもの(行個法10条2項2号)

 また、本人の数が1,000人に満たない個人情報ファイルも作成の対象とはされていないため、除かれます(行個法10条2項9号、行個法施行令8条)。

個人情報ファイルに行政機関情報公開法による開示請求(情報公開請求)があったならば、次のいずれかを行うこととなるものであること(行個法2条9項2号)

  • 個人情報ファイルに記録されている保有個人情報の全部または一部を開示する旨の決定をすることとなるもの
  • 行政機関情報公開法13条1項または2項の規定により意見書の提出の機会を与えることとなるもの(第三者に関する情報が記録されている場合の任意または義務的意見提出機会の付与等)

行政の適正かつ円滑な運営に支障のない範囲内で、非識別加工情報を作成することができるものであること(行個法2条9項3号)

個人情報ファイル簿の確認方法

行政機関非識別加工情報の場合

 行政機関非識別加工情報について、対象となるデータが含まれる個人情報ファイル簿は、e-Govの「個人情報ファイル簿の検索」のページで確認することができます。これは、対象となるものが明らかとなるよう、個人情報ファイル簿への記載が義務づけられているためです(行個法44条の3、11条1項。行政機関非識別加工情報の提案の募集をする個人情報ファイルである旨の記載)。

出典:個人情報保護委員会「国の行政機関・独立行政法人等における非識別加工情報の制度のあらまし

 「行政機関非識別加工情報の提案の募集をする個人情報ファイル」という項目の「募集する」のボックスにチェックを入れて検索すると、対象となるものが表示されます。当記事の執筆時点(2018年7月)で、募集対象は225件、非対象が1,386 件となっています。

独立行政法人等非識別加工情報の場合

 独立行政法人等非識別加工情報については、総務省でデータを一元管理していないため2、e-Govで検索することはできません。同ウェブサイトには、「各独立行政法人等の個人情報ファイル簿(国立大学法人・大学共同利用機関法人)」のページが設けられていることから、活用したいと考えるデータの性質から推測しつつ、自身のニーズを満たし得るデータを保持すると考える独立行政法人等のサイトを逐一確認していくことが考えられます。

非識別加工情報の制度活用の障壁

 3.で説明した個人情報ファイル簿の記載事項を筆者が確認するかぎり、行政機関、独立行政法人等ともに、健康・医療に関する情報が含まれる個人情報ファイル簿には、行政機関非識別加工情報の提案の募集をする個人情報ファイルである旨の記載につき、非該当とされていることがほとんどであるようです。
 したがって、行政機関、独立行政法人等が保有する健康・医療に関する情報は、非識別加工情報の制度を用いて活用することは難しいものと言わざるを得ません。


  1. ・個人情報保護法・個情法:個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)
    ・行政機関個情法・行個法:行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第58号)
    ・独立行政法人等個人情報保護法・独個法:独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第59号)
    ・行政機関情報公開法:行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号)
    ・行個法施行令:行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律施行令(平成15年政令第548号) ↩︎

  2. 独立行政法人等は、所管省庁が異なることに起因すると考えられます。個人情報ファイルの保有等に関する総務大臣への事前通知(行個法10条)に相当する義務もないため、データの集約・反映が難しいように思われます。 ↩︎

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