企業の人材育成と雇用

人事労務
大津 克彦

 リストラクチャリング事業構造の再編であるが、投資家からはそれに伴う人件費削減の施策としても評価されるそうだ。経営者にとっては苦渋の選択であろう。財務上の数値が短期的には改善されるだろうが、一方やり方を誤れば従業員の士気は高まらず結果的には生産性が必ずしも向上しない。更には優秀な人材の流出につながる虞もある。今後は更に少子高齢化が進み、ますます労働力不足になる状況にあり本当に必要な時の優秀な人材の確保が可能か危惧される。

 平成28年版高齢社会白書(内閣府)によると15〜64歳の生産可能人口は全人口の60.6%まで減少している。一方、65歳以上の人口割合は26.7%まで拡大していることが分かった。このことからも企業を支える生産可能人口の減少は事業継続における重要な課題と言える。このような傾向の中、新規大学卒業者の入社3年目の離職率は32.3%、高校卒は40.0%となっている。これは決して離職する者だけの責任とは言えず、企業の人材育成の未整備による責任もあるように思われる。環境整備や仕組みづくりだけではなく、従業員とのコミュニケーションを心がけエンゲージメントを深めることが望まれる。また、組織の持続性を考える上で従業員の年齢構成も重要なファクターとなる。現在、多くの企業は60〜65歳が雇用の上限となっているため、従業員の高年齢化に備え人材を新たに確保しなければならないが、人材教育・雇用計画は重要課題として熟慮されているだろうか

 投資家が注目する企業の施策に「従業員の採用・人材教育」がある。昨今の「働き方改革」の問題も影響しているものと推察するが、上述した調査の結果も含め人材雇用計画を企業の将来のリスクと捉えているようだ。人手不足は企業の成長機会を逃し業績を圧迫しかねない。女性活躍推進法の制定やダイバーシティマネジメントもこうした状況を踏まえてのことだ。経済のグローバル化が進むことにより様々な環境に対応できる多様な人材の労働力が必要となる。また、企業もそれを受け入れるために既存の働き方を見直し、従業員の多様な働き方を受け入れる必要がある。年次有給休暇の取得率も平均8.8日(2014・「平成27年就労条件総合調査の概況」(厚生労働省))と過去10年ほど伸びておらず、長時間労働問題と共にワーク・ライフ・バランスを考えた職場環境の整備が求められる。近年、従業員の家族の高齢化に伴い親の介護のために職場を去る状況も出てきた。経験を積んだ優秀な人材を失うのは企業の損失になり組織力の低下にもつながる。

 「企業は人なり」これはよく耳にする松下幸之助の言葉だ。その人材が経験を積み、多くを学んで人として成長することが最終的には企業の発展に貢献し、企業価値を高めることになる。そのためには人材育成のための予算を確保し、人員計画も中長期戦略に織り込むことが望まれる。企業には従業員の尊重と、従業員が誇りを持って安心して働くことができる職場環境の醸成が求められる。企業が社会の公器として持続的に経済の発展に寄与することを期待する。

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