未来の働き方を徹底討論! 会社との関係は個人が決めていく

人事労務

働き方改革関連法が今年7月に成立し、多様な働き方を選択できる社会の実現へ向けた動きが加速している。
最中となる同31日、最先端の働き方について考えるイベント「ビジネスマン働き方解体SHOW!! Supported by コクヨ」(主催:イッツ・コミュニケーションズ株式会社、協賛:コクヨ株式会社)が、東京カルチャーカルチャー(東京都渋谷区)にて開催された。

会場では「働き方意識調査2018」として、参加者にリアルタイムで本音を聞くアンケートを実施。その結果をもとに、実際に働く場所やコンテンツ、コミュニティづくりに関わる「働き方解体職人」たちが、未来の働き方について徹底討論した。河原あず氏(東京カルチャーカルチャー コミュニティ・アクセラレーター)がファシリテーターを務め、村上臣氏(リンクトイン・ジャパン 日本代表)、矢澤麻里子氏(Plug and Play Japan COO)、古川剛也氏(三井住友フィナンシャルグループ ITイノベーション推進部 部長代理)、山下正太郎氏(KOKUYO クリエイティブセンター 主幹研究員)、久我一成氏(コクヨ)が登壇。

新たな働き方を実践する人から自身の働き方に迷いがある人まで、出演者と参加者の垣根を超えて繰り広げられる「働き方エンタメトーク」の模様をお届けする。

働き方改革のキーワードは「人間中心社会」

「働き方改革」という言葉を耳にしながらも、実は皆それがどういったことを指すか分かっていないのではないか?という問題提起からトークが始まった。
河原氏が「出演者にとって、働き方改革をキーワードで表わすと何か?」と問いかけると、各人の働き方改革像が飛び出した。

山下氏
「自分改革」。海外の働き方改革事例を30か国ほど調査してきましたが、うまくいっている国の特徴は、自分がどう生きたいか、どういう状態が幸せかをきちんとイメージできているワーカーが多いことです。日本人は幸せのイメージをもつことが弱いのではないでしょうか。

古川氏
「未来の描き方改革」。当社でも労働時間の削減を行なっていますが、会社にいない時間を何に投資していくかは、個人がどう未来の働き方を描いていくか次第だと思います。

矢澤氏
「人が人として自分を表現できるようになること」。自分の得意なことや好きなことで能力を発揮して、お金をもらえる社会になったらよいですね。

村上氏
「人間中心社会」。今までは会社に一生面倒を見てもらおうと思い「就社」をし、キャリアを自分で計画しない人が多かったですよね。これからは人生の半分を働いて過ごしますから、個人が社会との接点を考え、会社との付き合い方を決めていく時代です。

参加者から一番共感を集めた働き方改革のキーワードは「人間中心社会」。写真左から、村上臣氏、矢澤麻里子氏、古川剛也氏、山下正太郎氏

参加者から一番共感を集めた働き方改革のキーワードは「人間中心社会」。写真左から、村上臣氏、矢澤麻里子氏、古川剛也氏、山下正太郎氏

働く意義を見出しづらい環境

働き方を考える上では、収入だけでなく、そもそも働く意義とは何か?といった観点も欠かせない。海外との比較をすると、日本の労働環境の特質があらためて浮き彫りになった。

山下氏
欧米では会社員であったとしても個人的な目標を重視するワーカーが多いのに対して、日本では会社に所属したりコミュニティの一員となっていることに喜びを感じる人が多く、働く意義を見出しづらい国民性があるのかもしれません。

村上氏
米国出張中は様々なバックグラウンドを持った人が集まっており、強制的に自分は何をしているのかを説明する機会が多々生じるので、日常的に内省する場面がありました。このように海外ではローコンテクストですが、他方日本では相手の言外の意味をくみとるハイコンテクストな社会です。そこに働く意義への認識の違いがあるように思います。


今後働き方はますます変化していくことが予想されるが、それに対して会場からは「ワークスタイルは本当に変動するのか?」と疑問の声もあがった。

矢澤氏
トップが制度を変えようとしても、中堅管理職にとっては仕事が増えるからやりたくないと言います。ミドル層が新しい働き方を推進していく姿勢がないことを社員も認識していて、「世の中で働き方の変化があるけれど、今のままの働き方でも給料が変わらないのであれば、うちの会社はそのままだろう」と感じている人も少なくないと思います。

山下氏
一部の大企業が動き出せば、系列企業やライバル企業も含めて、横並びに変わっていくのが日本の企業動向の特徴です。ただ働き方のルールが変わっただけではダメで、上司の振る舞いひとつでルールが実行されないこともしばしばで、ルールと実際の運用は別な問題になりがちです。

村上氏
海外だと意思決定者が一人に定まっており、それが不明な場合はすぐに確認する習慣があります。その分決定のスピードが早いので、日本もそうなるとよいですね。

会場内の参加者アンケートの集計は、スティックライト型のIoTデバイス「いいちこ棒」を用いて行なわれた。回答に合わせて色とりどりのLEDが点灯する

会場内の参加者アンケートの集計は、スティックライト型のIoTデバイス「いいちこ棒」を用いて行なわれた。回答に合わせて色とりどりのLEDが点灯する

出社する理由は会社のカルチャーに浸りたいから

場所や時間に縛られずに勤務するテレワークも試みられている。会場の調査では、テレワークを活用している人とその経験が無い人が半々という結果に。さらに「会社と自宅以外にも働く場がありよく使う」「会社の外でも仕事をしたいし、できなくては困る」といった意見も多く聞かれた。

久我氏
働く時に会社に行く意味って何ですかね?打ち合わせをするために会社へ行っている気がしているので、「今日は打ち合わせがないから会社へ行かずに、カフェで仕事をしよう」というのもアリだと思うのですが。

山下氏
今は思い立ったらどこにいても働けるので、わざわざ会社へ行くのはそのカルチャーに浸って感化されるためといった、スピリチュアルな理由によるものが増えてきています。

矢澤氏
毎日会って顔を見合わせることは、チームビルディングの観点からも大事ですよね。

河原氏
サンフランシスコのAirbnbという会社に行ったことがありますが、社員が好き勝手に働いているのに出社率はものすごく高いと社員から聞いたことがあります。理由は皆Airbnbが好きだからです。デザインが命の会社でカルチャーや哲学もしっかりしているので、働きがいを感じやすいのだと思います。

村上氏
シリコンバレーへ行くと、皆自社のロゴが入ったTシャツを身につけていますよね。

古川氏
当社の本社がある大手町では、スーツ姿のサラリーマンがたくさん歩いていますが、私服なのは自分くらいなので、変な人だと思われている気がします(笑)

矢澤氏
サラリーマンはスーツを着なければ怒られるからそうしているだけで、会社愛でも何でもないから違和感があります。好きな服を着れば感情だけでなく行動にも良い影響が表れますよね。

久我氏
スーツを着なければいけないとか、社章を付けなければならないとかって、誰が決めているんですかね?

河原氏
それに疑問を持たないくらい浸透してしまっているのでしょうね。別に「スーツを着なさい」と就業規則に書いてあるわけでもない。ただ、日本の人って心の隅に「想像上の誰かに忖度して、その誰かに怒られないように振る舞う」という世界観がある気がします。会社という箱に個人が束縛されない時代が来ると思うので、会社と個人の関わり方も見直されるのかもしれません。

村上氏
たとえば会社側が「当社ではスーツの着用が義務付けられています」という風に事前に告知するのはどうですか。最終的には会社とのカルチャーフィットが大切なので、求職者がその会社のカルチャーを吟味し、好きか嫌いか判断する時間を設けるとよいと思います。

写真左から、古川剛也氏、山下正太郎氏、久我一成氏

写真左から、古川剛也氏、山下正太郎氏、久我一成氏

システム化でより人間らしい仕事ができるように

働き方改革の中でも「生産性向上」は重要なキーワードのひとつだが、OECDが毎年公表する労働生産性の世界ランキング結果において日本は下位が続く。企業では限られたリソースでも大きな成果が得られるよう、生産性を高める取り組みがなされている。 就業時間については柔軟に認める企業が増えつつあるが、気になるのは従業員を支える人事的な制度面だ。

河原氏
パフォーマンスの高い人に業務が集中して、その量をこなすためにはある程度残らざるを得ず拘束時間が長くなるものの、人事評価は横並びとなってしまうといった事象も、会社によっては起こりそうです。

村上氏
現場で出来るかぎり頑張ろうとするのはある意味真面目とも言えますが、管理職側からすれば「結果的に仕事を回せているのだから、リソースは足りているだろう」と見えてしまいます。むしろ定時であがって回らない仕事は、やりきれないと主張することが大事です。それでもなお人を補充してもらえなければ、上層部のせいですからね。

矢澤氏
海外だと平気で「これは自分の仕事じゃないから」と言われることもありますね。

河原氏
日本だとジョブ・ディスクリプションで職務が明確化されていないので、人事異動などで配転すると突然仕事量が増えることもありそうです。


また、人工知能の普及で生産性が高まるとも言われている。「人工知能によって自分の仕事が奪われるのではないか?」という報道も見られるところ、会場アンケートでは「人工知能にはできない仕事ができている」と感じている人が多数見受けられた。

村上氏
「単純労働をしていると人工知能に仕事が奪われる」と思う人も少なからずいるのではないでしょうか。実はそれは勘違いで、人工知能はパターンマッチングを得意としているので、真っ先に取って代わられるのはたとえば名探偵の推理や直感といった領域です。
ホワイトカラーで仕事をしている人の方が、二者択一で判断するものが多い分、意外と早く仕事が無くなるかもしれません。

矢澤氏
そういった技術によってシステム化が進めば、人間はもっと人間らしい仕事が出来るようになってくると思うんですよね。人工知能で代替されるという危機感は、自らの能力を活かした自分らしい仕事とは何かを考えるきっかけにもなりそうです。

村上氏
人工知能に勝てなくなったら、究極ルール自体を変えたらよいと思います。人間のルールは人間にしか作れないから、この先ハッピーに生きられるように社会の仕組みを構築していくことができれば、あまり心配しなくてもよい気がします。

写真左から、河原あず氏、村上臣氏

写真左から、河原あず氏、村上臣氏

河原氏は最後に、「どうしても唯一の答えを求めがちですが、100人いたら100通りの答えがあるわけですよね。今回のイベントのように、働き方とは何かを問い続けるのが大事なのではないでしょうか」と述べて、イベントは締めくくられた。

(取材、構成:BUSINESS LAWYERS 編集部)

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