労働時間と休憩時間を判断するポイント

人事労務
下西 祥平弁護士

 当社では、始業時間を午前9時、終業時間を午後6時とし、正午から午後1時までの1時間は休憩時間としています。ただ正午から午後1時までも顧客からの電話がかかってきますので、従業員には電話に出るように伝えていますが問題があるでしょうか。

 貴社の運用を前提とすると、正午から午後1時の間も労働基準法上の労働時間にあたります。したがって、合計すると労働時間が9時間となり、会社は1時間分については割増賃金を支払う必要があり、休憩時間を付与していないことから、労働基準法上の罰則の適用対象となってしまいます。休憩時間は、労働から解放された状態にあり、休憩時間中に労働者の行動を制約してはならず、休憩中といえども会社からの指示を受けている以上、労働基準法上は労働時間となります。

解説

労働基準法上の労働時間と休憩時間

労働時間とは

 労働時間とは「休憩時間」を除き、現に労働させる時間を指します(労働基準法32条1項)。労働基準法において、労働時間の定義はありませんが、最高裁判所は、労働基準法上の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間を指すと解しており(最高裁平成12年3月9日判決・民集54巻3号801頁など)、行政解釈においても同様に考えられています。
 指揮命令下に置かれているか否かという判断は抽象的でわかりにくいですが、一般に就業規則に定められた始業時間から終業時間の間は、使用者の指示に基づき業務を行っている時間であり労働時間にあたることが問題となることはなく、唯一休憩時間だけが労働時間から除外されるため、真に休憩時間といえるのか、それとも実質的には労働時間なのかが争われることがあります。

休憩時間とは

 休憩時間とは、労働者が労働時間の途中において休息のために完全に労働から解放されることを保障されている時間を指します。そのため、労働基準法は、休憩時間を労働者に「自由に利用させなければならない」旨規定し(労働基準法34条3項)、使用者に対し、休憩時間中に労働者の行動に制約を加えることを禁止しています。
 また、労働基準法では、使用者に対して、労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩時間を与えることを義務付けています(労働基準法34条1項)。仮に、労働基準法に定められた休憩時間を付与していない場合には、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処する旨の罰則規定も設けられています(労働基準法119条1号)。

労働時間か休憩時間なのかが問題となる事例

 労働時間か休憩時間なのかが争いになる場面として、実作業をしていない時間(不活動時間)が、使用者の指示があれば直ちに作業に従事しなければならない時間(いわゆる「手待時間」)にあたるのか、完全に使用者の指揮監督から離脱した時間(休憩時間)なのかが不明確なケースが挙げられます。このようなケースでは、使用者は休憩時間だと思っていたとしても、実際には単なる手待時間に過ぎないと判断されてしまい、労働者に法定労働時間を超える時間の労働をさせたとして、割増賃金を支払わなければならない結果になることがあります(労働基準法37条1項)。したがって、労働者が未払割増賃金の支払いを使用者に対して求める事例において争点化することが多いといえます。

不活動時間が労働時間にあたると判断された事例

事例① ビル管理人の仮眠時間

 判例では、ビル管理人の実作業を行わない仮眠時間について、仮眠室における待機と警報や電話等に対して直ちに対応することが義務付けられている場合、その必要が皆無に等しいなど実質的に上記のような義務付けがされていないと認められるような事情のない限り、仮眠時間は全体として労働時間として労働からの解放が保障されているとはいえず、会社の指揮監督下に置かれている時間にあたり、労働基準法上の労働時間にあたると判断しました(最高裁平成14年2月28日判決・民集56巻2号361頁)。

事例② マンションの住込み管理人の待機時間

 さらに、マンションの住込み管理人の実働実態に鑑み、平日の就業時間外や土曜日についても住民などの要望に対応するため事実上待機せざるを得ない状態に置かれていたとして労働時間にあたると判断し、他方日曜日・祝日は労働時間にあたらないと判断した事例もあります(最高裁平成19年10月19日判決・民集61巻7号2555頁)。

事例③ バス乗務員の待機時間

 近時の裁判例では、市営バスの乗務員において、バスがある系統の路線の終点に到着した後、別の系統の路線の始点として発進するまでの時間のうち、車内清掃等を行うのに必要な時間を除いた時間(待機時間)につき、実作業が特になければ休憩をとることができるとされていたものの、バスから離れて自由に行動することが許されているものではなく、いつ現れるかわからない乗客に対して適切な対応をすることができるような体制を整えておくことが求められていたと判断して、待機時間も労働時間にあたると判断したものも見られます(福岡地裁平成27年5月20日判決・労判1124号23頁)。

不活動時間が労働時間にあたらないと判断された事例

 他方、ガス配管工事請負会社の従業員につき、シフト担当日のうち実作業に従事した時間は労働時間と認めるが、不活動時間については、労務提供の可能性があるという意味では、従業員の行動に一定の制約が及んでいたことは否定できないことを認めつつ、①シフト担当日においては不活動時間が占める割合が格段に大きいこと、②不活動時間においては、寮の自室でテレビを観賞したり、パソコンに興じるなど自由度が高かったことなどを勘案すると、シフトの開始・終了時刻が始業時刻・終業時刻と同様の意味で拘束性を有するとは評価できず、会社の指揮命令下に置かれていた時間と評価するには足りないとして、労働時間制を否定した裁判例も存在します(東京地裁平成20年3月27日判決・労判964号25頁)。

まとめ

 以上を整理すると、労働時間にあたるか休憩時間にあたるかは、 労働者が使用者からの指揮命令を受けることなく、完全に労働から解放された状態にあり、自由に活動できると評価できるか否かによって判断されます。
 設問のケースでは、労働者は使用者から電話をとるように指示を受け、かつ電話のとれる場所に待機することを事実上強いられていることから、労働から解放されたと評価することはできないので、正午から午後1時の間も労働時間にあたってしまいます。したがって、休憩時間は労働者に対して指示をして自由な活動を制約することがないように留意する必要があります。

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