懲戒処分にはどのような種類があるか

人事労務

 懲戒処分にはどのような種類がありますか。

 戒告、譴責、減給処分、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇が一般的だと思われます。しかし、就業規則で上記とは異なる懲戒処分が規定されていることもあります。また、就業規則に規定されていない懲戒処分を科すことはできません。したがって、必ず、就業規則を見て、どのような懲戒処分が規定されているのかを確認してください。

解説

懲戒処分の種類

 懲戒処分として、戒告、譴責、減給処分、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇を就業規則で定めることが多いのではないかと思います。しかし、実務上、上記とは異なる懲戒処分が規定されていることもあります
 たとえば、譴責と戒告はよく似ているので、戒告が定められていないこともあります。他方、出勤停止の期間により、1か月未満のものを出勤停止、1か月以上のものを懲戒休職・停職と区別することもあります。定期昇給やベースアップ等の給与改定時における昇給を停止する懲戒処分として、昇給停止を定めることもあります。
 さらに、就業規則で懲戒処分として規定されていない懲戒処分は懲戒処分として科すことができません。たとえば、出勤停止を懲戒処分として科したければ、出勤停止が懲戒処分として就業規則に定められていることが必要です。したがって、就業規則でどのような懲戒処分が定められているのか、必ず確認をするようにしてください。

懲戒処分の具体的な内容

 上記1で挙げた代表的な懲戒処分の具体的な内容について解説していきます。

懲戒処分の具体的な内容

戒告(かいこく)、譴責(けんせき)

 戒告および譴責は、いずれも、労働者に反省を求め、労働者を将来に向けて戒める懲戒処分で、懲戒処分の中では最も軽い処分として位置づけられています。戒告では、口頭での反省が求められるにとどまり、譴責では、書面での反省が求められるのが一般的です。そのため、戒告の方が軽い処分と位置付けられています。
 書面での反省を求める方法として、始末書の提出を求め、自己の非違行為を確認・謝罪し、将来同様の行為を行わないことを誓約することを記載させることが一般的です。
 ところで、実務上、懲戒処分を下すかどうかを判断するための前提として、労働者に事実経過や顛末を報告させるため「始末書」という題名の書類を提出させることが散見されます。しかし、これでは懲戒処分を下すかどうかの決定をする前に譴責という懲戒処分が下されたかのような誤解を招きます。したがって、労働者に事実経過や顛末を報告させるための書面の題名は顛末書報告書とし、始末書と区別する運用を心掛けることが望ましいでしょう。

減給(げんきゅう)

 減給とは、労働者が本来労務提供の対価として受け取るべき賃金の額から一方的に一定額を差し引く処分をいいます。減給については、労働基準法上の以下のような規制があるので、注意が必要です労働基準法91条、昭和23年9月20日基収1789号、昭和25年9月8日基収1338号)。

  1. 1回の額(すなわち、1件の懲戒事案についての減給額)が平均賃金の1日分の半額を超えてはならない。
  2. 数件の懲戒事案について減給処分を科す場合、その総額が一賃金支払い期において現実に支払われる賃金の総額の10分の1を超えてはならない。

 なお、遅刻、早退や欠勤した場合にそれに応じた額が給与からカットされますが、これは、労働義務を履行しなかったことに応じて、ノーワーク・ノーペイの原則労働義務の履行があって初めて賃金請求権が発生するという原則)に基づいて行われるもので、減給と異なります。また、配置転換や降格に伴い基本給の額が減ることがありますが、これは配置転換や降格に伴い基本給の額が変動するという雇用契約の条件に基づいて行われるもので、これも減給と異なります。

出勤停止(しゅっきんていし)

 出勤停止とは、労働契約を継続しつつ、非違行為に対する制裁として一定期間、労働者の就労を禁止する処分をいいます。出勤停止期間中は賃金が支給されず、勤続年数にも通算されないのが一般的です。出勤停止の上限について法律上の規制はありませんが、実務的には、1週間から1か月が多いように思われます。出勤停止の期間により、1か月未満のものを出勤停止、1か月以上のものを懲戒休職・停職と区別することもあります。

 なお、出勤停止と区別すべきものとして、自宅待機があります。これは、懲戒処分に関する調査のため、自宅待機を命じ、労働者を一定期間出社させない措置のことをいい、業務命令に基づくもので、懲戒処分ではありません。自宅待機中の給与の支払いの要否については別稿にて説明する予定です。

降格(こうかく)

 (懲戒処分としての)降格とは、服務規律に違反した労働者に対する制裁として、役職、職位、職能資格等を引き下げる処分をいいます。

 降格と呼ばれるものとして、「懲戒処分としての降格」以外に、「人事上の措置としての降格」があります。懲戒処分としての降格の場合、就業規則上の根拠が必要で、懲戒事由に該当しなければならない他、懲戒権濫用の有無について裁判所による審査がなされます労働契約法15条)。他方、「人事上の措置としての降格」については、就業規則上の特別な根拠は必ずしも必要ではないですが、人事権濫用の有無について審査がなされます

諭旨解雇(ゆしかいこ)

 諭旨解雇とは、労働者に対し一定期間内に退職届の提出を勧告し、勧告に従い退職届が提出された場合は依願退職扱いとし、提出されない場合は懲戒解雇とする処分です。諭旨解雇の場合にも、懲戒解雇と同様、退職金の一部または全部が支給されないことがあります。

懲戒解雇(ちょうかいかいこ)

 懲戒解雇とは、懲戒として行われる解雇のことをいい、懲戒の中で最も重い処分です。懲戒解雇は制裁罰として行われるため、普通解雇とは区別されています。

 就業規則上、解雇の予告またはそれに代わる解雇予告手当の支払いをせずに即時に行うと書かれていることが多いです。しかし、労基署長による除外認定を得ずに、解雇の予告および解雇予告手当の支払いを省略してしまうと労働基準法違反となるので(労働基準法20条1項ただし書、20条3項、19条2項)、注意が必要です。この点については、別稿で説明をします。

 懲戒解雇の場合、退職金の全部または一部不支給を伴うことが多いと思います。ただし、退職金の全部または一部を不支給とするためには、就業規則や退職金規程等において、その旨を定めておく必要があります。また、退職金の全部または一部を不支給とすることができるのは、長年の労働の価値を抹消・減殺するほどの背信行為が存在する場合に限られると解されています(トヨタ車体事件・名古屋地裁平成15年9月30日判決・労判871号168頁小田急電鉄事件・東京高裁平成15年12月11日判決・判時1853号145頁等)。

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