有期労働契約の更新・雇止めに関する留意点について

人事労務
岩城 方臣弁護士

 当社では、契約期間を1年と定めて契約社員を雇用し、契約期間が満了する度に更新しています。契約は自動更新ではなく、対象となる契約社員と面談を行って、勤務成績や能力を考慮して更新の有無を判断し、また、契約を更新する契約社員に対しては、契約更新に関する当社の基準を口頭で説明したうえで、更新を行っています。
 このように当社では契約更新の手続をきちんと踏んでいるものと考えていますが、契約社員の契約更新や雇止めについて、他に留意点があれば教えて下さい。

 契約更新の有無や更新の判断基準は、口頭だけでなく、労働条件通知書などの書面によって、労働者に対して明示する必要があります。また、契約が3回以上更新されていたり、1年を超えて継続して雇用されている労働者を雇止めする場合は、少なくとも契約満了の30日前までに雇止めの予告を行い、労働者が求める場合は更新拒否の理由を記載した証明書を交付しなければなりません。
 また、平成25年4月1日以降に開始した有期労働契約が更新されて通算5年を超えた場合は、労働者が使用者に申し込めば、期間の定めのない労働契約に転換(無期転換)します。通算5年を超えて有期労働契約の更新を予定する場合は、無期転換後の労働条件や社員区分を、あらかじめ就業規則等で整備しておくことが重要です。

解説

有期労働契約とは

 有期労働契約とは、たとえば1年契約や6か月契約など、期間の定めのある労働契約を指し、パート、アルバイト、契約社員、嘱託社員など、その呼び方にかかわらず、契約期間(終期)が決まっていれば、有期労働契約となります。
 有期労働契約の場合、使用者は、原則として、契約期間の満了をもって労働契約を更新せずに終了させること(雇止め)ができます
 しかし、契約の更新手続きが形骸化していたり、短期間に反復して契約が更新されている場合などは、雇止めが認められず、労働者との間に、従前の契約と同一条件の有期労働契約が成立することがあります(労働契約法19条)。さらに、毎回更新手続きを行っていても、通算の契約期間が5年を超えていると、後述のように、労働者が希望すれば、無期労働契約が成立することがあります(労働契約法18条1項)。  

有期労働契約の期間の上限

 有期労働契約の期間の長さについて、原則は、上限が3年とされています(労働基準法14条1項)。ただし、法が定める高度の専門的知識等を有する労働者との間に締結される労働契約や、満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約については、特例として、上限が5年とされています(労働基準法14条1項1号・2号)。

厚生労働省の告示

 有期労働契約については、雇止めに関するトラブルを未然に防止するために、厚生労働省が「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」(平成15年厚労省告示357号)(以下、「基準」といいます)という告示を出しています。

雇用契約書への記載事項

 使用者は、有期雇用契約締結時に、①契約更新の有無(自動的に更新する、契約する場合があり得る、契約の更新はしない等)、および②契約更新に関する判断基準(労働者の勤務成績・能力、従事している業務の進捗状況、会社の経営状況等)を労働者に明示しなければなりません。そして、これらの事項については、労働基準法施行規則により、始業・終業時刻、休日・賃金等に関する事項とともに、「書面」による明示が義務づけられています(労働基準法施行規則5条)。実務上は、労働条件通知書の交付などの方法による明示が想定されます。

更新後の契約期間への配慮

 雇入日から1年を超えて継続雇用された労働者に対し、有期労働契約を1回以上更新した後に契約更新をする場合、使用者は、契約の実態や労働者の希望に応じて、契約期間をできるかぎり長くするよう努力義務が定められています(基準3条)。

雇止めに関する基準

 更新があることを明示されている有期労働契約について、合計3回以上更新されているか、1年を超えて継続して雇用されている労働者との契約を更新しない場合には、少なくとも契約の期間が満了する30日前までに、雇止めの予告をしなければなりません(基準1条)。
 また、雇止めの予告後や雇止め後に、労働者が更新拒否の理由について証明書の交付を請求した場合には、使用者は、遅滞なく証明書を交付しなければなりません(基準2条)。明示すべき雇止めの理由は、「契約期間の満了」とは別の理由とすることが必要で、たとえば「前回の契約更新時に、本契約を更新しないことが合意されていたため」、「担当していた業務が終了・中止したため」、「業務を遂行する能力が十分ではないと認められるため」等の理由が考えられます。

改正労働契約法による5年ルール

どのような内容か

 平成25年4月1日に施行された改正労働契約法18条1項により、平成25年4月1日以後に開始した有期雇用契約が更新されて通算5年を超えた場合に、労働者の申込みがあれば無期雇用契約に転換するという制度(いわゆる「5年ルール」)が導入されました。

改正労働契約法による5年ルール(契約期間が3年の場合の例)

出典:厚生労働省「労働契約法改正のあらまし

 通算契約期間の計算については、原則として、有期労働契約の期間が満了してから次の有期労働契約が締結されるまで6か月以上の空白期間がある場合は、いったんリセットされて空白期間後の労働契約から新たに通算契約期間が算定されます(いわゆる「クーリング」)。

通算契約期間の計算

出典:厚生労働省「労働契約法改正のあらまし

 このようなクーリングがなされないまま、通算の契約期間が5年を超えた場合に、労働者が無期雇用契約への転換を申し込むと、申込み時の有期労働契約が終了した翌日から、直前の有期労働契約と同一の労働条件により無期労働契約が成立します。
 使用者は、労働者の申込みを拒絶することはできませんし、無期転換を申し込まないことを契約更新の条件とするなど、あらかじめ労働者に無期転換申込権を放棄させることもできません。また、定年後の再雇用社員・嘱託社員についても5年ルールは適用されます。

対応はどうすればよいか

 たとえば、平成25年4月1日に開始した有期労働契約については、法が定める要件を満たせば、最短で平成30年4月1日以降に、労働者に、無期労働契約への転換権が発生することになります。
 転換後の無期労働契約については、労働協約・就業規則・個々の労働契約等により、無期転換前と異なる労働条件を定めることができます
 無期転換後の社員区分や労働条件については、会社の状況に応じて様々なものが考えられますが、代表的なものとして以下の3パターンがあげられます。

  1. 契約期間のみを無期とし、その他の労働条件は直前の有期労働契約時と同一とする方法
  2. 無期転換者を、既存または新設の「多様な正社員区分(職務限定社員、エリア社員等)」に移行させ、その区分の労働条件を適用する方法
  3. 無期転換者を既存の正社員に移行させ、正社員と同等の労働条件を適用する方法

 無期転換者にどのような労働条件を定めるにせよ、無期転換者が担当する業務を想定しながら、5年ルールによる無期労働契約への転換が本格化する前に、就業規則などの整備を行うことが重要となります。

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