自己都合退職をする場合の手続きは

人事労務

 自己都合退職する場合の決まった書式や方法等の手続き、予告期間の制限などはあるのでしょうか。

 自己都合退職する場合の決まった書式や方法等の手続きは、各企業で定まった書式があればそれに従うのが事務の円滑化にはなるでしょうが、それに拘束されず退職の申し出はできます。期間の定めのない労働契約であれば、原則2週間前の予告で退職できます。

解説

自己都合退職

 自己都合退職とは、文字通り、労働者の自らの意思と都合で退職することです。しかし、退職には、「退職にはどのような種類があるか」でも触れた通り、解約告知合意解約の2種類があります(本問に関する裁判例の紹介は、岩出誠「労働法実務大系」579頁以下 (民事法研究会、2015)参照)。

 いずれの場合も、自己都合退職する場合の決まった書式や方法等の手続きは、各企業で定まった書式があればそれに従うのが事務の円滑化にはなるでしょうが、それに拘束されず退職の申し出はできます。
 逆に、企業からすれば、後述の2または3のいずれかにあたる場合、特に、2の解約告知の場合は、企業所定の書式によらないことを理由に退職の無効を主張することはできません。

解約告知

 後述3-1のとおり、通常、一般の退職届は労働契約の合意解約の申し込みと解されていますが、「退職願」には民法627条に基づく解約告知の場合があります(たとえば北港観光バス(出勤停止処分等)事件・大阪地裁平成25年1月18日判決・労判1079号165頁)。

   最近、人手不足で、労働者に対して、「会社の希望に反して、従業員が、理由の如何を問わず、その後任者が採用され同人に対する引継ぎが終了するまで退職せずに引き続き会社での業務を行い、これに違反した場合には無条件で損害賠償請求を受けることを容認する」趣旨の覚書を書かされた事案で、広告代理店A社元従業員事件(福岡高裁平成28年10月14日判決・労判1155号37頁)は、明確に、「X社とYとの労働契約は、期間の定めのない労働契約であるところ、労働者からする退職の申出は、退職まで2週間の期間を要するのみであり〔民法627条1項〕、同規定は強行規定と解される」とし、「これに反するX社の就業規則ないし本件誓約書の効力には疑義がある」として効力を認めていません。

 民法627条1項が強行規定か否かには争いがありますが、長くても、3か月を超える予告期間を義務付けるのは難しいでしょう(民法627条3項。なお、改正民法627条では、同2項・3項では使用者からの解約申入れだけが適用され、労働者からの解約申入れは627条1項のみが適用される2週間に統一されています)。  

合意解約

一般の退職

(1)合意解約の原則的法律構造

 裁判例は、「退職にはどのような種類があるか」の3のように、雇用を維持する配慮から、一般の退職願を、原則として、前述2の一方的な解約告知たる辞職ではなく、会社に対する労働契約の解約に関する申込みの意思表示であると解し、会社の承認(承諾)がなされるまでの間は撤回できると考えています。
 そうすると、どんな場合に退職願への承認があったとされることになるかが問題となります。この点について、大隈鉄工所事件(最高裁昭和62年9月18日判決・労判504号6頁)は、人事部長による退職願の受理を承認の意思表示として撤回を認めませんでした。つまり、人事部長に「退職願に対する退職承認の決定権があれば人事部長が退職願を受理したことをもって雇用契約の解約申込に対する会社の即時承諾の意思表示がされたものというべく、これによって雇用契約の合意解約が成立したものと解する」としたのです。

(2)合意解約の例外的な様々な法律構造

 ただし、合意解約にも例外的な様々な法律構造があり、退職勧奨中の使用者側からの勧奨が、事実上の合意解約の誘引とされることもありますが(学校法人大谷学園(中学校教諭・懲戒解雇)事件・横浜地裁平成23年7月26日判決・労判1035号88頁)、退職条件や退職を求める程度等の具体的事情に応じて、合意解約の申込みになり、これへの労働者の受入れが承諾とされることもあります(ジャパン・エア・ガシズ事件・東京地裁平成18年3月27日判決・労経速1934号19頁)。

退職願の受理権限の有無

 結局、「退職にはどのような種類があるか」の3-2で触れたように、退職願を受け取った者が、退職の受理(退職の承認)の権限を持つかどうか、そしてそれを正式に(いわゆる「預り」でなく)受け取ったかどうかが決め手となります。たとえば、上記最高裁判決後でも常務取締役観光部長には単独で退職承認を行う権限はなかったとして、常務による退職願の受理の翌日になされた退職願の撤回が有効と認められた例も出ています。

退職・合意解約の成立時期

 退職・合意解約の成立時期をめぐっては、事実認定による判断で争いになる場合が少なくありません。たとえば、X銀行(解雇無効確認)事件(東京地裁平成17年10月7日判決・労経速1918号11頁)では、会社の就業規則において「職員が退職を申し出て会社の承認を得たとき」に退職する旨定められ、3月8日に原告が退職届を提出し、11日に会社が承認決定をしたものと認められるところ、その後原告が欠勤し、連絡がとれなくなったため、19日に原告の妻に退職の手続き、私物整理のため本人に連絡をとりたい旨伝えているところ等から、遅くとも19日の時点では原告は退職の承認があったことを知りまたは知ることのできる状態にあったとして、信義則上、会社による退職承認の意思表示は同日原告に到達したと同視すべきであるとされ、会社の退職承認により雇用契約の合意解約の効力を生じ、その後の退職の意思表示の撤回は効力がないとされています。
 退職手続き中に連絡不能になった従業員への実務的対応上参考となりますが、行方不明の場合には疑問があります。

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