解雇にはどのような種類があるか

人事労務

 解雇にはどのような種類がありますか。

 解雇の種類は、大きく分けて、普通解雇と懲戒解雇に分かれ、懲戒解雇の前に諭旨解雇(諭旨退職)制度を設ける企業も少なくありません。普通解雇の中にも、整理解雇があります。
 労働基準法の解雇手続き上からは、即時解雇、予告ある解雇の区分があり、雇用保険の上では、いわゆる会社都合解雇と労働者の責めに帰すべき重大な事由による解雇などに分かれます。いずれの解雇に対しても厳しい法的規制があり、留意すべき点が多数あるため、慎重な対応が求められます。

参照:「希望退職や早期退職者優遇措置を導入する場合の留意点

解説

懲戒解雇とその他の解雇の区別と相違

懲戒解雇の意義

 懲戒解雇は、懲戒処分の中で極刑として位置付けられ、多くの場合は、以下にあげた深刻な不利益を伴います。  

  1. 解雇予告手当なしの即時解雇(労働基準法20条1項ただし書)
  2. 退職金も没収ないし不支給
  3. 雇用保険法上でも自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を受けた者として、雇用保険法23条の特定受給資格者に該当しないことになる
  4. 経歴上、懲戒解雇を受けたという社会的汚名を背負う

 ④について、一定の業界では(たとえば生命保険の営業職員等)、あらかじめ同意に基づき、業界内で公開され、同じ業界での再就職は不可能となるなどの不利益が生じ、この点は最大の不利益とも言えます(これらの要素が検討された例として千代田事件・東京地裁平成19年5月30日判決・労判950号90頁)。

 しかし、法理論的には、①の即時解雇の点も、労働基準法20条1項ただし書の「労働者の責めに帰すべき事由」との同一性まではなく、その事前認定の煩雑さを回避すべく予告手当付の懲戒解雇も多く、②の退職金も、最近の裁判例・学説は、この問題を切り離して検討する傾向にあります。③の雇用保険法上の「自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇」も前述の労働基準法の「労働者の責めに帰すべき事由」と同様の問題があります。そこで、懲戒解雇の本質的な意義は④の経歴上、懲戒解雇を受けたという社会的汚名を背負うことにあると指摘されています(菅野和夫「労働法」(第11版補正版)664頁(弘文堂、2017))。  

懲戒解雇規制へ労働契約法の適条

 懲戒解雇は、懲戒処分であると同時に解雇の性格を兼有しています。そこで、懲戒解雇の規制に関する労働契約法上の適条として、労働契約法15条のみか、労働契約法16条のみか、両条の重畳適用かが問題となり得ます。しかし、労働契約法15条の基礎となったダイハツ工業事件(最高裁昭和58年9月16日判決・判時1093号135頁)も懲戒解雇事案であったことなどを踏まえるならば、同条の規制対象には懲戒解雇も当然の射程としており、適条としては、労働契約法15条のみで足りると解されます(岩出誠「労働法実務大系」565頁(民事法研究会、2015))。  

諭旨解雇(諭旨退職)

 多くの場合、退職届や辞表の提出を一定期間勧告し、即時退職を求め、催告期間内に勧告に応じない場合は懲戒解雇(普通解雇の例もある)に付するものです。中には、上記期間経過前に退職届等の提出がない限り、自動的に懲戒解雇となる例もあります。
 他方、懲戒解雇より、一等低い処分と位置付け、退職届や辞表の提出を設けることなく、諭旨解雇(諭旨退職)の辞令を出す制度を設ける例もあります。日本ヒューレット・パッカード(地位確認等請求)事件(最高裁平成24年4月27日判決・労判1055号5頁)ではかかる諭旨退職の効力が問われました。
 仮に、諭旨退職と呼んでいても、会社の意思表示により、労働契約を解除する点では解雇にあたり、労働基準法20条等の規制を受けることになります。

懲戒解雇事由がある場合の普通解雇

懲戒解雇事由に該当する場合の普通解雇

 懲戒解雇事由に該当する場合に、より軽い普通解雇を行うことは、普通解雇事由の包括条項を利用しても可能ですが、仮にかかる構成を用いなくても、労働契約の解釈上も当然に許されています。高知放送事件(最高裁昭和52年1月31日判決・労判268号17頁)は、「就業規則所定の懲戒事由にあたる事実がある場合…、本人の再就職など将来を考慮して、懲戒解雇に処することなく、普通解雇に処することは、それがたとえ懲戒の目的を有するとしても、必ずしも許されないわけではない」としています。

 なお、同判決は、さらに、「普通解雇として解雇するには、普通解雇の要件を備えていれば足り、懲戒解雇の要件まで要求されるものではない」としています。しかし、同判決自体が、実際には、労働者に有利なあらゆる事情を総合かつ最大限に考慮して、「社会的相当性」を厳格に解し、結論的に解雇を無効と判断し、解雇を厳しく制限する態度を示しています。

懲戒処分の相当性判断と同様の要素の考慮

 そもそも、普通解雇に関する解雇権濫用法理を定める労働契約法16条による相当性の判断要素としても、労働契約法15条に基づく懲戒処分の相当性判断で利用される、比例原則(犯した行為と制裁との均衡)、平等取扱いの原則(過去の同様の行為への処分との均衡)、弁明の機会の付与等が求められることが多くなっています(前掲・岩出608頁)。たとえば、非違行為につき、何らの告知もせず、また聴聞の機会も与えないまま即時解雇することには相当性がないとした北沢産業事件(東京地裁平成19年9月18日判決・労判947号23頁)などが典型例でしょう。

 解雇事由発生時期と解雇の時間的間隔(大阪府保健医療財団事件・大阪地裁平成18年3月24日判決・労判916号37頁等)なども、解雇の相当性判断の要素として機能しています。この点、厚生労働省・平成17年9月15日付「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」報告書も、「労働者の軽微な非違行為の繰り返しを理由として解雇を行う場合には、事前に一定の警告が必要である」としており、この事情は労働契約法16条の相当性判断でも重視されています。
 ただし、労働者に解雇事由惹起への反省や改善への態度や見込みもなく、信頼関係を破壊するような行為があった場合には、解雇権濫用を認めない傾向があります(小野リース事件・最高裁平成22年5月25日判決・労判1018号5頁等)。

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