役員退職金制度の概要と廃止をする場合の留意点

人事労務

 役員退職慰労金制度とはどのようなものでしょうか。また、役員退職慰労金制度を廃止する際の留意点にはどのようなものがありますか。

 役員退職慰労金制度を設けるか否かは企業の自由な判断に任されています。役員退職慰労金制度を設けている場合でも、最低、原則として、株式会社では、役員退職慰労金を支払うためには定款の定めまたは株主総会の決議が必要であり、監査役や監査役会設置会社においては、監査役や監査役会の協議が求められ、指名委員会等設置会社においては、報酬委員会が決定することに留意した定めをおかなければなりません。

 役員退職慰労金制度の廃止については、法的には株主総会に慰労金議案を出さないというだけのことですが、監査役(会)の意見を聞いたうえ、取締役会で決議して廃止することが多いようです。実務的な問題として、廃止する場合、役員退職慰労金制度廃止前にすでに役員として在任していた期間に対応する同制度上の退職慰労金想定額について、打ち切り支給をする会社が多いようです。その際に、一種の代償措置として、ストックオプションを導入する例も増えています(日経ヴェリタス「ストックオプション 自社株高で報酬、株主目線も意識」(2017年6月25日付)参照)。

 なお、以下では、紙幅の関係もあり、一般的な、公開会社で監査役会設置会社を前提として解説しておきます。

解説

役員退職慰労金制度の概要

 役員退職慰労金制度を設けるか否かは企業の自由な判断に任されています。役員退職慰労金制度を設けている場合でも、最低、原則として、株式会社では、役員退職慰労金を支払うためには定款の定めまたは株主総会の決議が必要であり(会社法361条1項)、監査役や監査役会設置会社においては、監査役や監査役会の協議が求められ(会社法387条2項等)、指名委員会等設置会社においては、報酬委員会が決定することに留意した定めをおかなければなりません(会社法409条3項)

 通常は、取締役に対する役員退職慰労金を支払うためには、株主総会での、役員退職慰労金規程に基づき、具体的な額の決定は、取締役会の決議をもって代表取締役に一任するとされ、同規程が株主の知り得る状態になっていれば適法とされています(最高裁昭和58年2月22日判決・判時1076号140頁等でも上記の実務を承認しています)。

役員退職慰労金制度の廃止 

役員退職慰労金制度廃止の状況

 しかし、最近の大企業やいわゆる機関投資家の動きでは、各種のアンケート調査などによると、役員退職慰労金制度を廃止し、または廃止する予定の会社は、上場会社の約7割に及んでいるとも報じられています。役員退職慰労金制度の廃止については、法的には株主総会に慰労金議案を出さないというだけのことです。しかし、監査役(会)の意見を聞いたうえ、取締役会で決議して廃止することが多いようです。

 法的には求められていませんが、実務的な問題として、役員退職慰労金制度を廃止する場合、役員退職慰労金制度廃止前にすでに役員として在任していた期間に対応する同制度上の退職慰労金想定額について、打ち切り支給をする会社が多いようです。その際に、一種の代償措置として、ストックオプションを導入する例も増えています。

打ち切り支給をする時期の問題

 上記打ち切り支給をする場合については、同支給をする時期が問題となります。税務的に、役員を退職する際に受給しない場合には、退職金等に関する税額控除の特典が受けられません。そこで、最終の取締役退任時に支払う旨の規定を役員退職慰労金規程の廃止に関する附則等で定め、その旨を株主総会で決議したうえで廃止をしておけば新たな総会決議は不要でしょう。

 その旨の決議を経ないで、事実上、株主総会に慰労金議案を出さずに、同総会で慰労金制度の廃止を報告したに留まるような場合で、最終の取締役退任時に上記打ち切り支給をする場合には、改めて同支給に関する株主総会の決議が必要です。しかし、前述のように役員退職慰労金制度の廃止の流れが益々強まる中で、上記廃止報告から相当な期間が流れ、株主構成にも変化がある中で、その決議が可決される保障はありません。その場合に、上記打ち切り支給をする請求権を認める裁判例は見当たりません(江頭憲治郎『株式会社法〔第7版〕』(有斐閣、2017)465頁注(27)参照)。

 あり得るのは、「オーナー取締役が退任取締役に対して事前に支給約束(支給基準の作成がこれにあたる)をした場合には、前者個人は、株主総会で決議を成立させる旨の一種の議決権拘束契約を後者との間で締結したと見られ、その義務を懈怠すれば損害賠償責任を負うと解すべき」(佐賀地裁平成23年1月20日判決・判タ1378号190頁)との見解があります。しかし、これに反対の裁判例もあるうえ(大阪高裁平成16年2月12日判決・金判1190号38頁)、会社自体の責任を問うことは困難です(江頭・前掲465頁参照)。

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