在宅勤務制度を導入する場合の留意点

人事労務
織田 康嗣弁護士

 当社では、社員の多様な働き方を図るべく、在宅勤務制度(テレワーク)を導入しようと考えています。しかし、テレワークによって、いわゆる中抜け時間の問題が生じることを懸念しています。テレワークにおける社員の労働時間をどのように管理すればよいのでしょうか。また、テレワーク中に社員がケガをした場合の労災保険の適用の有無についても教えてください。

 テレワークを行う労働者が労働基準法上の労働者に該当する場合、労働基準法や労働者災害補償保険法などが適用されます。使用者は労働者の労働時間を適切に管理することが必要ですが、中抜け時間については、たとえば、休憩時間や時間単位の有休として取扱うことが考えられます。

 また、テレワーク中に労働者がケガをした場合も、労働契約に基づいて事業主の支配下にあることによって生じた災害である限り、業務上の災害として、労災保険給付の対象となります。

解説

テレワークとは

 テレワークとは、情報通信技術(ICT = Information and Communication Technology)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことです。

 一般に、テレワークの形態について、以下の3つの分類ができるとされています。

  1. 在宅勤務
    労働者の自宅で勤務を行う勤務形態
  2. サテライトオフィス勤務
    労働者の属するメインのオフィス以外に設けられたオフィスを利用する勤務形態
  3. モバイル勤務
    ノートパソコンや携帯電話等を活用して臨機応変に選択した場所で業務を行う勤務形態

 平成30年2月22日に、テレワークに関する新しいガイドライン(「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」)が厚生労働省より公表されました。
 同ガイドラインは、テレワーク実施の際の留意点が詳細に書かれており、実務上参考になります。

労働基準関係法令の適用

 テレワークを行う場合であっても、労働基準法上の労働者については、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法などの労働基準関係法令が適用されます。

 労働基準法上の労働者とは、「職種の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」と定義づけられ(労働基準法9条)、①使用従属性と②賃金性から判断されることになります。

 ここでいう、「使用される」といえる典型例は、仕事依頼に対して断ることができず、業務の内容や遂行の仕方・方法について指揮命令を受け、就業場所や就業時間が拘束され、業務遂行を他の人に交替させることができないなどといった事情がそろう場合です(岩出誠「労働法実務大系」〔民事法研究会、2015〕8~9頁参照)。

労働時間管理について

使用者の責務

 使用者は、労働時間を適正に把握するなど、労働時間を適切に管理する責務を有しています。したがって、テレワークを実施する際にも、一定の場合を除き、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に基づき、適切に労働時間管理を行う必要があります。

中抜け時間について

 説例でもあるように、テレワークを実施すると、在宅で労働者が一定時間業務から離れる「中抜け時間」の問題が生じることが懸念されます。

 このような場合の対処法について、前記「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」では、中抜け時間について、「使用者が業務の指示をしないこととし、労働者が労働から離れ、自由に利用することが保障されている場合には、その開始と終了の時間を報告させることにより、休憩時間として扱い、労働者のニーズに応じ、始業を繰り上げる、又は終業時刻を繰り下げることや、その時間を休憩時間ではなく、時間単位の年次有給休暇として取扱うことが考えられる」としています。

 このような対応をする場合の留意点ですが、始業時刻や終業時刻の変更を行うことがある場合には、労働時間変更条項を就業規則に記載しておく必要があります。この場合、繰り上げて早出した時間分について終業時刻を繰り上げて早退すれば、時間外労働は発生しませんが、早出したにもかかわらず、終業時刻が繰り上げた時間相当分の早目の時刻以降となれば、早出残業の問題となります(岩出誠「労働法実務大系」〔民事法研究会、2015〕254頁参照)。

 また、時間単位の年休を設けるには、労動基準法39条4項により労使協定が必要となりますが、その場合には、事業場の過半数代表者と上限日数、時間数、対象労働者の範囲についての労使協定が必要となることにも注意が必要です(労働基準法39条4項各号)。

テレワークを導入する際に検討すべき制度

(1)フレックスタイム制

 フレックスタイム制とは、労使協定などの一定の要件を充足したうえで「始業及び就業の時刻をその労働者の決定に委ねる」労働時間制のことをいいますが(労働基準法32条の3)、テレワークにおいても、本制度を活用することが可能です(たとえば、オフィス勤務の日は労働時間を長く、一方で在宅勤務をする日の労働時間を短くして家庭生活に充てる時間を増やす等)。

(2)事業場外みなし労働時間制

 みなし労働時間制とは、従業員の労働時間について、厳密に実労働を算定することなく、実際の実労働時間にかかわらず、所定ないし一定の労働時間勤務したものとみなして定額の賃金を支払う制度をいいます。テレワークにより、労働者が労働時間の全部または一部について事業場外で業務に従事した場合において、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難なときは、事業場外労働のみなし労働時間制(労働基準法38条の2第1項)が適用されます。

 なお、テレワークにおいて、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難であるというためには、以下の各要件を満たす必要があるとされています。

  1. 情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと
  2. 随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと

 ただし、「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」によれば、“回線が接続されているだけで、労働者が自由に情報通信機器から離れることや通信可能な状態を切断することが認められている場合、会社支給の携帯電話等を所持していても、労働者の即応の義務が課されていないことが明らかである場合等は「使用者の指示に即応する義務がない」場合に当たる”と柔軟に解されている点に注目すべきです。

(3)裁量労働制

 業務の遂行方法が大幅に労働者の裁量に委ねられる一定の業務に従事する労働者について労働時間のみなし制を定めたもの裁量労働時間制です(労働基準法38条の3、4)。裁量労働制の要件を満たし、制度の対象となる労働者についても、テレワークを活用することが可能です。

労働災害について

 労災保険給付は、業務上の災害に対して支給されますが、その該当性については、①「業務」といえるか(業務遂行性、②業務「上」の災害といえるか(業務起因性の2点から判断されます。テレワーク中に労働者がケガをした場合も、労働契約に基づいて事業主の支配下にあることによって生じた災害であれば、業務上の災害として、労災保険給付の対象となります。

 したがって、純粋な私的行為が原因である災害であれば、業務上の災害にはならないことになります。

おわりに

 テレワーク導入の効果として、ワークライフバランスの実現はもちろん、労働生産性も向上するといわれていますが、その一方で、作業能率の管理や自身の健康管理など、労働者の自律性も求められます。
 また、テレワーク実施にあたっては、本稿で述べた労働時間管理だけではなく、情報セキュリティの確保等の課題もあります。

 したがって、テレワークを効果的なものにするには、その導入の目的を明確にして労働者の自律性を確保するとともに、使用者も適切な作業環境を整備する必要があります。

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