「サイト・ブロッキングは日本でも適法」と米国弁護士、著作権侵害サイトへの対策となるか

知的財産権・エンタメ

「オンライン上の著作権保護 サイト・ブロッキングの政策的正当化及び手順」と題したセミナーが、2月に明治大学駿河台キャンパスで開催された。セミナーの主催は明治大学知的財産法政策研究所、日本知財学会コンテンツ・マネジメント分科会との共催だ。

同セミナーでは、米国バージニア州 コロンビア特別区の弁護士であり、米映画協会(MPAA)の海外管轄団体、モーション・ピクチャー・アソシエーション(MPA) ヴァイスプレジデントのマイケル・シュレシンジャー氏が日本におけるオンライン上での著作権侵害の状況や、著作権侵害を抑制する手段としてのサイト・ブロッキングを紹介し、海外の動向と日本に導入する正当性を語った。

サイト・ブロッキングとは、著作権侵害を行っているウェブサイトへのアクセスをインターネット・サービス・プロバイダ(ISP)が遮断する措置であり、海外で導入が進んでいる。日本では児童ポルノ対策のために導入されてはいるものの、オンライン上の著作権侵害を防止するための制度としては導入されていない。

海賊版サイトによる日本の漫画市場への被害の大きさが報じられ、著作権侵害サイトへの対策について注目が集まる中、シュレシンジャー氏は「サイト・ブロッキングはオンライン上の著作権侵害に対処する最も有効な方策の1つ」と持論を展開した。

日本における著作権侵害の状況

日本における著作権侵害の状況についてシュレシンジャー氏は、「深刻な状況」と語った。

MPAの調査によれば、2017年12月だけで著作権侵害サイトへのアクセス回数は5,000万回、2億ページビューを超える。これはあくまでMPAが問題視したサイトへのアクセス回数に限られており、調査対象外のサイトの中には、より深刻な被害をもたらしているものもあるという。

一方で、消費者は著作権侵害サイトに対してどのような印象を持っているのだろうか。Ipsos Connectが2017年9月に実施した調査によると、著作権者の許可なくコンテンツの共有を許すウェブサイトに対して、①日本政府が措置を取ること、②検索エンジンの検索結果から除外すること、③著作権侵害サイトへの広告出稿を避けることについて大多数が同意したという。

世界42か国で導入されるサイト・ブロッキング

サイト・ブロッキングは、EU、イギリス、オーストラリアなどの42カ国で導入されている。また、インターポールなどの国際機関もサイト・ブロッキングを行うことができる。

各国が一律の制度設計をしているわけではなく、裁判所命令に基づく「司法的サイト・ブロッキング」と行政命令に基づく「行政的サイト・ブロッキング」を導入するなど、違いは見られるが、共通しているのはインターネット・サービス・プロバイダ(ISP)に対して「無過失」アプローチを取っていることだ。
「無過失」アプローチによって、ISPが侵害サイトに対してサイト・ブロッキングを講じた場合、侵害サイトやユーザーによる著作権侵害に対してISPは責任を問われないことになる。

シュレシンジャー氏によると、世界中のISPはサイト・ブロッキングに対して、積極的な立場を取りつつあるという。これは、著作権侵害サイトへの大量のトラフィックが自分たちの帯域に重い負荷をかけ、ビジネスモデルを阻害し、プラットフォームのセキュリティを下げると認識しているからだ。

サイト・ブロッキング導入の目的は、日本と同様、児童ポルノ対策のために導入した国もあれば、著作権侵害、投資詐欺、テロ関連サイト、賭博への対策など様々。著作権侵害対策のために導入された一例として、シュレシンジャー氏は韓国の例をあげ、「コンテンツの輸出に積極的な政府の考えとも関連しているのではないか。サイト・ブロッキングの効果を実証するものと願っている」と思いを込めた。

サイト・ブロッキングの効果

サイト・ブロッキングには①著作権侵害的アクセスを減らす、②著作権侵害サイトを減らす、③合法的なコンテンツへのアクセスを増やす、3つの効用がある。

カーネギー・メロン大学の調査によると、2014年11月に英国内の53の著作権侵害サイトをブロックすることにより、侵害サイトへのアクセス率が90%減少。ブロックされていない海賊版サイトについても、そのアクセス率に増加は見られず、ブロックによる影響を受けた全ユーザによる海賊行為は合計で22%減少し、合法的なストリーミング・サイトへのアクセス率は10%増加したという。

MPAが実施した調査によれば、サイト・ブロッキングが導入されている他の国でも同様の結果が確認されている。

サイト・ブロッキングをより効果的なものとするために、シュレシンジャー氏は「著作権侵害サイトの運営者はドメイン変更などの手法によってブロックを回避する。このような状況でも、迅速かつ効率的に対処できることを確保する手順を有することが重要だ」と述べた。

会場からはサイト・ブロッキングとノーティスアンドテイクダウン1の違いについて質問の声があがった。シュレシンジャー氏はノーティスアンドテイクダウンの効用を認めつつも、手続の煩雑さや、過去の事例を参考とし、著作権侵害サイトが深刻化する現状において、ノーティスアンドテイクダウンが機能しないケースもあると答えた。

日本におけるサイト・ブロッキング導入の課題

日本では、内閣府が設置した知的財産本部(IPSH)において、2016年にサイト・ブロッキングの検討を決定し、2017年にその誓約を再確認した。しかし、日本でサイト・ブロッキングを導入するにあたり、日本国憲法21条2項および電気通信事業法4条に該当するのでは、という懸念の声もあり、通信の秘密やプライバシーに関する問題点が指摘されている。

この点についてシュレシンジャー氏は「ISPは、サイト・ブロッキングによって秘密情報の知識を得ることや、その情報を盗んだり利用したりすることはなく、通信についての秘密やプライバシーを侵害することはない」と持論を述べた。

この問題を考えるにあたり重要な判例がドイツ連邦最高裁判所の判決2だ。この判決では、サイト・ブロッキングがドイツおよびEU法に基づくプライバシー権を侵害せず、ドイツ憲法に違反しないと示している。プライバシー権の目的である、「公衆ではなく特定のアドレスへと向けられる通信の機密性の保護」はダウンロードデータの公共的提供またはそれらへのアクセスをブロックすることによっては影響されない事となる。

シュレシンジャー氏は最後に、「サイト・ブロッキングが導入され、係争が可能になれば我々も日本に協力をしたい」と思いを語った。


  1. 権利侵害を主張する者からの通知により、プロバイダが、権利侵害情報か否かの実体的な判断を経ずに、当該情報の削除等の措置を行うことにより、当該削除に係る責任を負わないこととするもの。 ↩︎

  2. GEMA v Deutsche Telekom, BGH, Urteile v. 26, 11, 2015 - I ZR 3 /14 und I ZR 174/14. ↩︎

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