写真をめぐる著作権のトラブルをどう防ぐか? 写真を利用する企業と写真家が知っておきたい法律上の注意点

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 著作権に関するトラブルを目にすることは多いが、中でも写真をめぐる問題が後を絶たない。トラブルのパターンとしては、企業が自社サイト等に利用した写真が写真家の著作権を侵害してしまうケースと、写真家が撮影した写真に他の著作物や群衆が写り込んでしまったケースがある。

 トラブルを起こさないためにどうするべきか、万が一問題が生じた場合にどう対応するべきか、著作権に詳しい三宅坂総合法律事務所の野間自子弁護士に聞いた。

企業側による無断利用問題

企業のサイト、パンフレット等で写真を無断使用することは法的にどのような問題となりますか。

 他人の撮影した写真を無断使用した場合、著作権法で認められる例外規定の要件を満たさない限りは、原則として、著作権および著作者人格権の侵害となります。

 著作権侵害と認定された場合、差止め請求サイトからの削除・パンフレットの回収および廃棄等・著作権法112条)、損害賠償請求(民法709条、同法719条、著作権法114条など)、場合によっては謝罪公告掲載など名誉回復等の措置の請求(著作権法115条)を受ける可能性があります。

 また著作権侵害に対しては、民事的な制裁だけではなく、刑事罰もあり、 最高10年以下の懲役または(および)1000万円以下の罰金が科されることになります(著作権法119条など)。これは当該企業だけではなく、その担当者や責任者にも及ぶ可能性があります。

 したがって無断使用は原則として避けるべきです。

 もっとも著作権法では、30条以下に著作権者の許諾がいらない形態の使用方法を列挙しています。このうち企業のサイトやパンフレットで該当しそうなものは、引用(著作権法32条)や後述の付随対象著作物の利用(著作権法30条の2)、公開の美術の著作物等の利用(著作権法46条)などです。これらの規定する要件に該当する場合は、著作権者の承諾は不要となります。

写真の無断使用で問題となったケースはどのようなものがありますか。

 近年では、東京地方裁判所平成27年4月15日判決があります。

 これは写真エージェンシーである原告が自社サイトで公開している写真を被告のウェブサイトに無断使用されたということで著作権侵害等を理由に損害賠償を請求した事案です(訴訟提起時点で被告は写真の使用自体は中止していました)。被告は別のサイトから写真を取り込んだなどと主張しましたが、原告側で被告の主張する別のサイト等を特定しなくても原告のHP上に掲載された写真と一致する写真の枚数が多いこと等侵害行為の態様から裁判所はほぼ全面的に原告の主張を認めました。この判決のポイントは以下の通りです。

  1. 識別情報や権利関係の不明な著作物の利用は著作権等を侵害する可能性があるので控えるべきであると明示した点
  2. 著作権等の侵害を惹起する可能性があることを十分認識しながら当該著作物をあえて利用した場合は単なる過失にとどまらず、少なくとも未必の故意を認めるのが相当とした点

 権利関係を確認せず無断使用した者に対して、裁判所は厳しい態度で臨んだと評価できると思います。

写真家から無断使用の連絡を受けた場合、企業はどう対処すべきでしょうか。

 まず掲載した写真の使用を一時的に停止すべきです。連絡を受けた後も漫然と使用を継続した場合は、故意による著作権侵害と認定されるリスクがあります。

 そして事実関係をきちんと調査して、連絡をした写真家が権利者であることの確認がとれ、例外規定の要件にも該当せず、かつその写真家の許諾も得ていなかったような場合は、使用を中止すべきです。もちろん、改めてその写真家に対して許諾を得るように交渉するのも1つの方法です。また 損害賠償請求を受けた場合は、少なくとも訴訟リスクを回避するために合理的に算定される額の使用料相当額は支払うべきです。

問題を防ぐためにどのような点に留意すべきでしょうか。

  写真を使用する前に必ずその写真の権利関係を確認して権利者から許諾を得ることです。なお、前述の例外規定の要件に該当するような使用方法であれば許諾は不要です。

 権利者が見つからないような場合はその写真の使用はあきらめて、自社で撮影する、自社で写真家に依頼して撮影する、写真エージエンシーが貸し出している写真を利用するのが安全といえます。

カメラマン側の留意事項

写真の背景に絵画や写真等の著作物(付随対象著作物)が入っている場合、その著作物の著作権者の許諾も必要ですか。

 平成24年の著作権法改正によって、30条の2が新設され、 下記の要件すべてを満たす場合は、付随対象著作物の著作権者の承諾が不要となりました。その要件は以下のとおりです。

  1. 写真撮影等の対象となる事物と分離が困難であること、すなわち、創作時の状況に照らして付随対象著作物を除いて創作することが社会通念上困難であると客観的に認められること。
  2. 付随対象著作物がその写真著作物における軽微な構成部分であること。
  3. 付随対象著作物の著作権者の利益を不当に害することにならないこと、すなわち著作権者の著作物の利用市場と衝突せず、また、将来における著作物の潜在的販路を阻害しないこと。

 したがって、例えば、本来意図した撮影対象でなく、背景に小さくポスターや絵画が写った写真をブログに掲載するような場合などは著作権者の承諾は不要ということになります。

 逆に本来の撮影対象としてポスターや絵画を写してパンフレットに掲載する場合や漫画のキャラクターの顧客吸引力が利用できる態様で写真本来の撮影対象に付随して漫画のキャラクターが写り込んでいる写真を販売する場合などは上記要件に該当しないので無断使用は違法です。

群衆の写り込みについての留意点はありますか。

 肖像権とは、むやみに他人に写真を撮影されたり、それを公表されたりしないように主張できる権利であり、プライバシー権の1つと言われています。群衆の写真であっても1人1人が鮮明に特定できるような場合は、その各人に肖像権が成立する余地があります。このような場合は、原則として、その各人の承諾を得なければその写真を公表することはできません。

 また群衆の中のある人物がクローズアップされているような場合もその人物の許諾が原則として必要となります。なお、政治的・宗教的なデモやマイノリティグループのパレード等の場合、参加者によっては参加したこと自体を内密にしておきたいと考えていることもありますから特に配慮が必要でしょう。主催者から予め「撮影はご遠慮ください」との告知が出ている場合も同様です。

 それでもどうしても公表したいと考える場合は、群衆の性格、集まりの趣旨等から被写体となった人の不利益にならないか十分に検討したうえで公表に踏み切ることもあり得るでしょう。例えばお祭りの熱狂の様子などを伝えたい場合などはそうでしょう。このような場合は、群衆側の人もあらかじめ撮影されることを前提として行動していることも多いかと思います。但し、この場合、なるべく人が特定できないような加工をすることが望ましいですし、万一、クレームが入ったらただちに公表を取りやめる措置をとる覚悟も必要だと思います。

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