押さえておきたいコンピューター・プログラムの利用に関連する著作権問題

知的財産権・エンタメ

 当社では、パソコンソフトを正規に購入して使用しています。ソフトが壊れた場合に備えてバックアップコピーをとりたいのですが、問題はあるでしょうか。
 また、自宅勤務が認められるようになったことに伴い、個人用PCで仕事をするためにプログラムのコピーを作成したいと思っています。仕事のためのソフトなので、自分以外に使う人はいません。
 このようなコピーであれば、私的使用目的として著作権法上認められるのでしょうか。コピーを作成せずに、クラウドサーバーにプログラムをアップロードして、複数のPCで使えるようにする行為は問題ないでしょうか。

 ソフトウェアのバックアップコピーをとる行為は、著作権法上認められています。一方、私的利用目的での著作物の複製は、たとえ自分だけが使用するとしても、業務目的の場合には認められないとする見解が有力です。
 さらに、ソフトウェア購入時の契約にも注意する必要があります。クラウドサーバーにプログラムをアップロードして複数のPCで使用できるようにする行為も、ライセンス契約の内容次第では、契約違反となる可能性があると考えられます。

解説

コンピューター・プログラムの著作権に関する原則

 コンピューターソフトも、著作物として著作権法上の保護を受けています。したがって、著作権者に無断で複製することができないのが原則です(著作権法21条)。ソフトウェアを1つだけ正規購入してこれを職場の複数のコンピューターにインストールする行為は、原則として著作権侵害になります。

 著作権を侵害した場合、民事上のペナルティ(損害賠償・差し止め)と刑事上の罰則(個人の場合は10年以下の懲役・1,000万円以下の罰金のいずれか又は双方、法人の場合は3億円以下の罰金)が適用される可能性がありますので、十分な注意が必要です(著作権法119条124条)。

ソフトウェアを1つだけ正規購入してこれを職場の複数のコンピューターにインストールする行為は、原則として著作権侵害

バックアップに関する例外

プログラムの著作物

 著作権法は、プログラムの著作物の特質に配慮して、プログラムのユーザーの便宜のために、プログラムの所有者に対して一定の範囲でプログラムを複製、翻案することができる旨を規定しています(著作権法47条の3)。

著作権法47条の3
  1. 対象はプログラムの著作物
  2. プログラムの著作物の所有者に認められている
  3. 自ら当該著作物を電子計算機において利用されるために必要と認められる限度」における複製・翻案を認める
    (例)プログラムを使用するためにハードディスクにインストールする、バックアップコピーをとる

 なお、上記の条文により、プログラムの所有権を失った場合には作成した複製物は保存できないので注意してください。

プログラムによって作成・保存されたコンテンツ

 バックアップとの関係では、プログラムそのものではなく、プログラムによって作成・保存されたコンテンツについても規定があります。記録媒体を内蔵しているPCなどの複製機器を保守または修理する場合などに、内蔵メモリに複製されている画像や文書データなどの著作物を一時的に別の媒体に複製し,修理後等に機器の内臓メモリに改めて複製し直すことも、著作権法上認められているのです(著作権法47条の4)。
 もちろん、自分が創作した著作物であればこの規定の場合によらず複製できますが、第三者が著作権を持つ著作物については、この規定が適用されることになります。

業務用に購入したプログラムを自宅PCにインストールする行為は認められるか

 会社での業務用に購入したプログラムを自宅のPCにインストールする行為は、「自ら当該著作物を電子計算機において利用されるために必要と認められる限度」には該当しないと考えられます(著作権法47条の3)。では、自分が利用するためだけにインストールするのであれば、私的使用目的のための複製(著作権法30条)として認められるでしょうか。

 たしかに、私的使用目的であれば、使用する本人は、著作物の複製・翻案などをすることができます。ただし、ここでいう私的使用の範囲は「個人的又は家庭内その他これに準じる限られた範囲」という狭いものです。
 また、たとえ1部のみのコピーであっても、業務上のコピーは私的使用目的にはあたらないと一般的に考えられています。したがって、 業務のためのプログラムを自宅執務用に複製する行為は、私的使用目的の複製には該当しないと考えておいた方が良いでしょう。

ライセンス契約との関係

ライセンス契約とは

 プログラムの利用については、ライセンス契約の内容にも注意する必要があります。市販のプログラムを正規購入しても、そのプログラムの著作権の譲渡を受けたわけではありません。プログラムの著作権は開発者に留保されており、購入者は、一定の範囲でプログラムの使用を許諾されているに過ぎません。この使用の条件を定めた契約が、ライセンス契約です。

シュリンクラップ契約とクリックオン契約

 市販のソフトウェアを、パッケージで購入する場合、いわゆるシュリンクラップ契約によって使用条件が定められている場合が多くみられます。これは、プログラムの著作権者や販売業者が、ソフトの外箱などにソフトの使用条件を記載し、外箱はさらに透明なラップ等で記載事項が見えるように包装した状態で販売する方法です。
 外箱や包装には、ユーザーがパッケージを開封してソフトウェアを使用したことによってライセンス契約が成立する旨も記載されています。

 また、購入したソフトウェアをインストールする際や、オンラインでソフトウェアを購入する際には、PCの表示画面に契約条件が表示され、クリックオン契約とよばれる「使用条件に同意する」とクリックして初めてインストールできるという方法も多く見られます。

 シュリンクラップ契約にしても、クリックオン契約にしても、中身まで読んでいないという人が多いかもしれませんが、ソフトウェアの使用前に使用条件が確認できる状態になっていれば、原則として契約は有効に成立していると考えておいた方が良いでしょう。

 著作権法上認められている権利があっても、ライセンス契約がその権利を制限している場合は、原則としてライセンス契約の内容が優先されます。一方で、たとえばライセンス契約上、ソフトを複数のPCにインストールすることが認められていれば、その範囲で複製することができますので、 新たな方法での使用にあたっては、契約条件を確認することが重要です。

クラウドコンピューティングとソフトウェア

 クラウドコンピューティングでは、多くの場合、仮想化技術が用いられています。クラウドベンダーが複数のサーバーコンピューターをリソースとして用意し、複数のユーザーがネットを介して共同で利用する方法です。クラウドベンダーは、ユーザーの利用状況に応じてリソース配分を変化させたり、処理量が多い場合にはミラーリングを実施したりすることによって、快適な使用環境を維持しています。このような仮想化のため、クラウドサーバーにプログラムをアップロードすると、複数台のサーバーにプログラムがインストールされる場合があります。たとえ1人で使用する場合でも複数のライセンスが必要になるのか、やはりプログラムのライセンス契約を確認しておくことが必要です。

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