外注して制作した映像の著作権者は誰なのか

知的財産権・エンタメ

 当社では、外部業者に委託して、会社説明会で使用する会社紹介ビデオを制作しました。ドラマ仕立てになっており参加者の評判が良かったため、ビデオを編集して会社のウェブサイトやSNSにアップしたいという要望が出ています。当社用に制作してもらい、対価も支払ったビデオなので問題はないと思うのですが、どうでしょうか?

 外部の制作会社にビデオの制作を委託した場合、権利関係について明確な合意がなければ、委託者がビデオを自由に使えるとは限りません。まずは契約内容を確認することが必要です。また、ビデオを編集する場合は、映画の著作権者だけではなく著作者の権利も問題になるので、その点も確認しておきましょう。

解説

映画の著作物における著作権者の特例

 著作権は著作物の創作と同時に保護され、原則として著作者が権利を持ちます。したがって、ほとんどの場合において著作者が最初の著作権者になるのですが、いくつかの例外もあります。

 質問の会社紹介ビデオは、著作権法上は映画の著作物にあたります。著作権法上、映画の著作者は、映画監督に限らず、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の「全体的形成に創作的に寄与した者」です。

 しかし、これらの著作者が全員著作権を持ち、映画の利用について許諾の権限を持つと結果的に映画の利用に支障を来すという配慮から、その著作者が、映画製作者(多くの場合は映画会社)に対して映画の著作物の製作に参加することを約束しているときは、映画の著作権は映画製作者に帰属すると定められています(著作権法29条1項)。

 したがって、会社紹介ビデオが完成した時点では、ビデオの著作権はビデオの制作会社に帰属している可能性が高いと思われます。

法人著作(職務著作)について

 映画の著作物のほかにも、創作者が著作者にならない例として職務著作(著作権法15条)があります。

法人著作(職務著作)
以下の条件が満たされると、著作物を創作した従業員ではなく、法人(会社)が著作者となる。

(ア) 法人の発意に基づいたとき
(イ) 法人の業務に従事する者が職務上作成するとき
(ウ) 法人が自己の著作の名義のもとに著作物を公表するとき
(エ) 法人と従業員との間の契約・勤務規則その他に別段の定めがないとき

 映画の著作者についても、たとえばビデオの美術監督が制作会社の従業員であって、職務著作として映画の創作にあたった場合は、美術監督自身は映画の著作者になりません。

制作委託の注意点

 財産権としての著作権は、一般的な財産と同様に契約等によって他人に譲渡することが可能です。では、会社紹介ビデオの制作を制作会社に委託した会社は、制作会社に所定の対価を支払い、完成したビデオの引渡しを受けたことで、有体物としてのビデオの所有権だけではなく、ビデオに関する著作権も取得したといえるのでしょうか。

 ビデオの制作委託契約の中で、ビデオの著作権が会社に譲渡されることが明記されていれば、著作権の帰属については問題ありません。
 しかし、制作委託契約に権利関係が明記されていない場合や、著作権が制作会社に明確に留保されている場合も少なくありません。
 制作対価を支払った会社は著作権譲渡の対価が当然に含まれると思っていても、制作会社では対価はあくまでも制作費であって著作権譲渡の対価は含まないと考えている可能性もあります。契約書上明確でない場合、安易に会社が著作権を持っていると思わない方が良いでしょう。

 会社が著作権を受けることを明確にするためには、契約書にたとえば「A社が制作会社に対価の全額を支払った時点で、本作品に関する著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む)及びその他の知的財産権はA社に譲渡される。」というような規定を入れておく方法があります。
 著作権法27条(翻案権)及び28条(二次的著作物に関する原著作者の権利)について特に記載しておくのは、これらの権利については、著作権譲渡の対象であることを明記していなければ譲渡されずに著作者に留保されていると推測するという規定があるからです(著作権法61条)。

 ビデオの著作権が制作会社に留保されている場合、会社は、契約上認められた範囲でビデオを利用できる権利を許諾されていることになります。「会社説明会で使うための会社紹介用ビデオ」ということなので、説明会で上映することは契約上当然に認められていると思われますが、会社のウェブサイトやSNSにアップする行為は、著作権法上も、上映とは異なる利用形態(公衆送信)になりますので、契約上認められているか確認が必要です。

改変する場合の注意点

 本件では、ウェブサイトにアップする際にはビデオを編集することも予定されています。この場合、著作権(翻案権)とは別に、著作者人格権という権利も問題になります。

 著作者人格権とは、著作物を創作した著作者が一身専属的に取得し、著作物の経済的権利(狭義の著作権)が第三者に譲渡されても、引き続き著作者が持ち続ける権利です。
 著作者人格権にも複製の権利が含まれます。

著作者人格権
  1. 公表権…公表されていない著作物を、公衆に提供し、提示する権利
  2. 氏名表示権…著作物の公衆への提供・提示に際して、実名、変名(雅号、筆名、略称その他実名に代えて用いられるもの)を表示する、またはしない権利
  3. 同一性保持権…著作物及びその題号について意に反して変更、切除その他の改変を受けない権利
  4. 名誉声望保持権…著作者人格権そのものではないが、著作者の名誉や声望を害する方法で著作物を利用する行為が著作者人格権の侵害とみなされる

 本件のビデオのようにすでに公表されている著作物について通常問題になるのは、同一性保持権(著作権法20条)と名誉声望保持権(著作権法113条6項)です。

 同一性保持権は、著作者が自身の著作物およびその題号について「自分の意に反して変更、切除その他の改変を加えるな」と言える権利であり、名誉声望権とは、著作物が著作者の意図しない形で利用されることによって名誉や声望を失うことを防ぐ為の権利です。同一性保持権は著作物に手を加えた場合に問題となりますが、名誉声望権は、たとえ著作物をそのまま利用する場合であっても、たとえば子供向けに書いた絵をアダルト向けの商品やその広告に使われたような場合には主張される可能性がある、という違いがあります。

 本件のビデオを編集して利用する場合、同一性保持権が問題となる可能性があります。また、 著作者人格権は著作権と異なり譲渡できないので、たとえビデオ制作会社から著作権の譲渡を受けていても、別に著作者が存在する場合には、著作者から著作者人格権侵害を主張される可能性がある点にも注意が必要です。著作者人格権の侵害を主張されないためには、契約書に「制作会社はA社に対して、本作品に関する著作者人格権を行使せず、また本作品の著作者に行使させない。」というような規定を入れておくと良いでしょう。このような規定の有効性については議論のあるところですが、実務上は有効として扱われています。

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