著作権を侵害した場合、どのような罰則があるか

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 当社の商品について、ある会社の代理人弁護士からその会社の著作権を侵害しているというクレームが入りました。当社の顧問弁護士の見解では、微妙なところはあるが著作権の例外規定の要件を満たし、著作権侵害にはあたらない可能性が高いのではないかということでしたので、依頼をし、弁護士同士での交渉に入りました。
 その際、先方の弁護士から、当社を地元県警に著作権侵害で刑事告訴するとの連絡が入りました。著作権について刑事告訴とはどういうことなのでしょうか。また、刑事告訴された場合、どのような事になるのでしょうか。

 著作権を侵害した場合、捜査機関による捜査を経て最終的に罰金刑や懲役刑といった刑事罰を科される刑事手続の対象となる場合があります。刑事手続は、著作権者から侵害の差し止め、損害賠償、名誉回復措置などを要求される民事手続とはまったく別の手続きで、刑事告訴はこの刑事手続が開始されるきっかけの一つです。
 刑事告訴などをきっかけに刑事手続が始まった場合、いきなり強制捜査が開始される可能性もありますので、注意が必要です。

解説

著作権侵害に対する罰則

 著作権を侵害した場合、著作権者から侵害の差し止め損害賠償名誉回復措置などを請求されます。これが民事上の手続で、訴訟提起前、そして訴訟提起後も著作権者とは当事者として主張・反論をし合い、また解決に向けた交渉をすることになります。
 これとは別に、著作権法では権利侵害罪として10年以下の懲役1,000万円以下の罰金のいずれか、またはその双方を科すという罰則が設けられています(著作権法119条1項)。また、本件のように法人の場合には3億円以下の罰金刑が科せられることになっています(著作権法124条)。さらに、著作権を侵害した以外の場合についても罰則が設けられていますが、これについては末尾の表を参照して下さい。ここでは権利侵害罪を前提に説明をすることにします。
 刑事手続の流れの概要は以下のとおりで、上から下に流れていきます。

 このように、刑事手続では、捜査機関(警察・検察)が著作権侵害が成立するかどうかの捜査を行い、その結果を踏まえて検察が最終的に起訴するかどうかを決めます。そして、起訴された場合には処罰を求める検察を相手方として刑事裁判が進められ、最終的に裁判所が有罪か無罪か、有罪の場合には刑の重さを決めることになります。

民事と刑事の手続の違い

 上述のとおり、民事手続では著作権者が相手方となりますが、刑事手続では警察・検察が相手方となり、著作権者は相手方にはなりません。本件のような刑事告訴については著作権者が関与しますが、それはあくまで捜査を開始するきっかけとなるだけで、刑事告訴が受理され捜査が開始されると、あとは著作権者が直接手続に関与することはありません。設例においても、弁護士を立てて交渉するのはあくまで民事についてで、刑事についてはそれとは関係なく進むことになります。
 もっとも、現在のところ権利侵害罪は「親告罪」といって、刑事告訴がない限り起訴することができない犯罪とされています。ただ、親告罪における告訴はあくまで起訴するための要件で、捜査の要件ではありませんから、告訴がない状態で捜査を行うことは可能ですし、現に行われています。

 ただ、著作権者が告訴をする可能性がない事件について積極的に捜査が行われる可能性は低いでしょう。また、設例のように告訴がある場合でも、民事の交渉の結果和解が成立して告訴が取り下げられれば起訴ができなくなるので、双方が弁護士を立てて交渉中の場合は、その交渉の推移を見ながら捜査を進めることが多いでしょう。
 なお、TPPの合意を受けて、現在権利侵害罪を非親告罪化する方向での法改正の作業が進められています。

故意について

 民事の損害賠償については過失による著作権侵害の場合も認められますが、刑事で処罰されるのは故意がある場合に限られます。つまり、知らず知らずのうちに行ってしまった著作権侵害については処罰されることはないわけです。ただ、この故意についてはいくつか注意することがあります。
 まず、著作権侵害については、誰かの著作権を侵害しているという程度の漠然とした認識があればよく、著作権者が誰か、ということまで認識をしている必要はありません。ですから、知らない作者のイラストを複製した場合でも著作権(複製権)侵害罪が成立します
 また、著作権侵害については明確に認識している必要はなく、もしかしたら侵害をしているかもしれない、という程度の認識でも構いません。ですから、例えば古いけれども著作権の保護期間が残っていたという作品を複製した場合、もしかしたらまだ著作権が切れていないかもしれない、という程度の認識があれば故意はあったと判断されてしまいます。

 さらに、著作権侵害かどうかの法的評価を間違えていたという場合にも故意はあったと判断されます。例えば、ある作品を複製した場合、「この程度の作品なら著作物にはあたらないから複製しても著作権侵害にならない」、「自分の作品はこの作品とは全く違うので複製権侵害にならない」、「私的使用目的の複製として著作権侵害にならない」と思っていた場合は、いずれも著作権侵害の故意はあったと評価されてしまいます。
 刑事法における「故意」は事実に対する認識・認容があったかどうかで、違法かどうかという評価についての認識・認容の有無は問題とならないからです。上記の例でいうと、著作権が成立している誰かの作品、侵害と疑われている自分の作品、自分の複製の目的や態様について認識をしていれば、それが著作物かどうか、複製といえるだけの同一性があるか、私的使用目的と評価されるかについて認識をしている必要はないわけです。

 設例においても、複製をする段階での会社の見解が、顧問弁護士と同様に「著作権の例外規定の要件を満たし、著作権侵害にはあたらない」というものであったとしても、その判断が結果的に誤りであれば、故意はあったと評価されてしまうことになります。

権利侵害罪に対する強制捜査について

 犯罪捜査には、原則として同意を得て行われる任意捜査と、同意が不要な強制捜査があります。
 強制捜査の典型例が身体を拘束する逮捕・勾留と、証拠を確保するための捜索・差押です。これらの強制捜査は、被疑者の逃亡と犯罪に関する証拠の隠滅を阻止するために行われます。特に、証拠の隠滅が容易な事案では、犯罪の捜査が行われていると気付かれた場合に被疑者や関係者によって隠滅工作が行われてしまう危険性が高いので、捜査機関としては気付かれないように準備を進め、不意打ちで強制捜査を行うのが常識です。

 権利侵害罪については、関係する証拠が被疑者の管理下にあることが少なくありません。例えばPCを使った複製権侵害の事案などでは重要な証拠は被疑者のPCの中に保存されています。このような証拠を確保するためには、被疑者がデータを消去したりPCそのものを破壊したりする暇を与えずいきなり強制捜査から入ることになります。
 設例においても、複製に関する証拠は基本的に社内にあるわけですので、隠滅される前にいきなり強制捜査が入ったとしても全くおかしなことではありません。
 現に、株式会社スクウェア・エニックスの出版物「ハイスコアガール」が、株式会社SNKプレイモアの著作権を侵害しているとして刑事告訴した事件では、設例のように双方が弁護士を立てて交渉中にいきなり捜索差押が行われました。ですから、そのような可能性もあるものと考えておく必要があります。

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