録画した映像を自社ウェブサイトに掲載する場合の問題点

知的財産権・エンタメ

 当社の社員が、放送されていた映画を録画して自宅で見ていたところ、主人公の自宅の場面で当社の製品である家具が大きく写っているのを見つけました。非常に魅力的な映像だったので、その場面を当社のウェブサイトに掲載しようと考え、映画の著作権者に問い合わせをしたところ、快諾してくれました。影像を入手するのも面倒なので、社員が録画した映像を編集して使ってしまおうかと思いますが、構わないでしょうか。

 放送局は著作権法の「放送事業者」(著作権法2条1項9号)として、放送した影像については、「放送事業者の権利」(第4章第4節)を有しています。社員が家庭で楽しむために録画した映像を会社のウェブサイトに掲載することは、放送事業者の複製権(著作権法98条)の侵害となります。よって、その映画を放送した放送局の許可も得る必要があります。

解説

放送事業者の権利とは

 「公衆送信」(著作権法2条1項7号の2)のうち、公衆によって同一の内容が同時に受信されることを目的として行う無線通信の送信を「放送」といい(著作権法2条1項8号)、放送を業として行う者を「放送事業者」といいます(著作権法2条1項9号)。テレビ放送は「放送」、そしてテレビ局は「放送事業者」の典型例です。
 放送事業者は、自分で製作した番組については著作権を有していますが、本件のように既存の映画を放送している場合は、映画に対して著作権を有しているわけではありません。
 しかし、著作物である放送番組の伝達に重要な役割を果たしているという観点から、著作権法では実演家、レコード製作者、有線放送事業者と共に、著作隣接権という、著作権に類似した権利が認められています

放送事業者の権利の内容

 放送事業者の権利は以下のとおりです。

権利の名称 どのような権利か 具体的内容
複製権 無断で複製されない権利 テレビ・ラジオの放送(放送を受信して行われた有線放送の場合を含む)を、「録音・録画」したり、テレビの画像などを「写真などの方法によりコピーすること」に関する権利(著作権法98条)。
録音・録画したものをさらにコピーすることにも権利が及びます。
再放送権・有線放送権 無断で再放送・有線放送されない権利 放送を受信して、それをさらに放送・有線放送することに関する権利(著作権法99条)。
送信可能化権 無断で送信可能化されない権利 放送(放送を受信して行う有線放送の場合を含む)を受信して、インターネット等で送信するために、サーバー等の自動公衆送信装置に「蓄積」「入力」することにより、「受信者からのアクセスがあり次第『送信』され得る」状態に置くことに関する権利(著作権法99条の2)。
いわゆる「ウェブキャスト」のように、受信した番組を録音・録画せず、(サーバー等を通じて)そのまま流す場合が対象です。
テレビ放送の公の伝達権 無断で受信機による公の伝達をされない権利 テレビ放送を受信して、画面を拡大する特別の装置を用いて、公衆に見せることに関する権利(著作権法100条)。
放送番組を超大型テレビやオーロラビジョンなどに映し出して公衆に見せる場合が対象です。

 本件では、社員が録画していた映画を編集してウェブサイトに掲載するための映像を作成する過程で複製をすることになりますから、複製権の侵害となってしまいます。なお、放送事業者の送信可能化権は受信した番組を録音・録画せずそのまま流す場合が前提ですので、録画したものをウェブサイトに掲載しても送信可能化権の侵害とはなりません。

私的使用目的の複製物の目的外使用

 著作権の例外規定の多くは放送事業者の権利にも準用されていて、私的使用目的の複製(著作権法30条1項)もその1つです(著作権法102条1項)。ですから、社員が家庭で放送番組を録画したことは、私的使用目的の複製として放送事業者の複製権の侵害にはなりません。
 ただし、著作権については、私的使用目的の複製として作成した複製物を、私的使用目的以外の目的のために使用すると複製を行ったものとみなされ(著作権法49条1項)、その結果複製権の侵害となります。放送事業者の複製権についてもこれと同様の規定があり、私的使用目的の複製として作成した複製物を使って、放送された音や影像を公衆に提示すると、複製を行ったものとみなされ(著作権法102条9項1号)、その結果放送事業者の複製権の侵害となります

まとめ

 既存の映像や音を利用したい場合には、著作権者から許諾を受けると共に、影像や音源そのものも提供を受けるようにした方がよいでしょう。放送番組などを録音・録画したものを使うのは避けた方がよいです。

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