著作物にあたらないものの種類と、利用をする際の注意点

知的財産権・エンタメ

 自社サイトへのアクセスを増やすために、業界の動向について情報をまとめたページを作成しようと思います。下記のような情報を掲載する予定ですが、問題はあるでしょうか。

(1) 業界紙に掲載されていたデータやグラフ
(2) 業界に関連する新聞・雑誌の記事の見出し(各見出しをクリックすると、元記事にジャンプする)

 データやグラフは一般的には著作物ではないので、掲載しても問題がない可能性があるでしょう。ただし、購読契約を結んで購読している業界紙の記事を利用する場合は、購読契約の内容を確認しておく必要があります。記事の見出しについても、一般的には著作物にあたらない場合が多いと思われますが、利用の態様によっては、著作権侵害が成立しなくても不法行為が成立する可能性があり、注意が必要です。

解説

著作物とは

 著作権法上、著作物とは、「(1)思想または感情を(2)創作的に(3)表現したものであって(4)文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するもの」と定義されています(著作権法2条1項1号)。ここで言う「創作性」とは高度な芸術性や独創性まで要求するものではなく、創作者の何らかの個性が発揮されている程度で良いとされています。3歳の子どもが描いた絵も立派な著作物です。一方、平凡でありふれた表現や、単なる事実、またアイデア自体は著作物には該当しません。このように書くと基準が明確なようですが、実際には、著作物か否か判断に迷うケースも少なくありません。

【著作物にあたるかどうかの判断のポイント】

① 「思想または感情」があらわれているか
② 作者の個性が発揮されているか
③ 「表現」されたものか

著作物にあたらないものの例

 著作物にあたらないものの例としては以下のものがあります。

【著作物にあたらないものの例】
  1. 歴史的事実・データ
  2. ありふれた表現・題名・ごく短い文章
  3. アイデア
  4. 応用美術(実用品のデザインなど)

歴史的事実やデータ

 単なる歴史的事実やデータは、思想や感情を表現したものとはいえません。たとえば、「西暦1600年に関ヶ原の合戦があった」という歴史的な事実は、誰かが創作したものではなく実際に起こった出来事なので、誰もこの事実自体を独占することはできません。上記①「思想または感情」があらわれているか、の要素を欠くために、著作物とはいえないのです。

 もっとも歴史的事実を素材にしているからといって、司馬遼太郎の小説「関ヶ原」が著作物でなくなるわけではありません。誰もが利用して良いのは「事実」そのものであって、それを表現した文章ではないことに注意する必要があります。ノンフィクションの著作から、事実を拾い出して新たな文章を書くことは問題になりませんが、具体的な文章をある程度の長さで使うと、著作権侵害の可能性があることになります。

 「2016年に日本国内で記録された震度2以上の地震は●回」というようなデータも、客観的事実の集積であって著作物ではありません。過去数年にわたる地震の回数をシンプルに表示した棒グラフも、思想や感情の表現とはいえないでしょう。ただし、客観的データを表した図表でも、そこに創作的な工夫が施されていれば著作物にあたる可能性があるので注意が必要です。

ありふれた表現・題名・ごく短い文章

 「永年のご愛顧に感謝いたします。」「昨日からの雨もすっかり上がり、人々は爽やかな初夏の日差しを楽しみました。」などの表現はありふれたものであり、創作性(上記②作者の個性が発揮されているか、の要素)を欠くので著作物にはあたりません

 キャッチフレーズ題名、またごく短い文章は、一般的に「創作性を欠く」と判断される可能性が高くなります。しかし、文章が短いから必ず著作物ではない、ということにはなりません。俳句はわずか17音で構成されますが、著作物にあたる場合も多いでしょう。

 他方で、ある程度の長い文章であっても平凡な表現であれば著作物として保護されません。「ラストメッセージin最終号事件」(東京地裁平成7年12月18日判決・判時1567号126頁)では、相当程度の長さのある文章でも、休刊・廃刊の告知、読者に対する感謝やお詫び、新雑誌発行の告知などの内容をありふれた表現で記述したに過ぎない場合は創作性を欠くと判断されました。

 このように、どこまでがありふれた表現であり、どこから創作性が認められるのかは、個別具体的に判断されるものであり、明確な基準があるわけではありません

アイデア・コンセプト

 小説や映画、ゲームなどにおける世界観や、アニメのキャラクター設定(例:勉強もスポーツも苦手だけど頼れる猫型ロボットの友達がいる小学5年生の男の子)は、それ自体はアイデアであり、著作物として保護されていません上記③「表現」されたものか、の要素を欠くからです。ただし、実際にキャラクターを表現したイラストなどは、著作物として保護されることになります。

 なお、新商品のコンセプトや新サービスのアイデアは、それ自体は著作物でなくても、担当者達がエネルギーを注いで作り上げたもので、ビジネス的に価値が高い場合も多いでしょう。このようなコンセプトやアイデアを守りたい場合には、たとえば情報共有する相手と秘密保持契約を締結するなどの工夫が必要になります。

応用美術(実用品のデザインなど)

 一般論としては、家具、衣服、容器といった実用品のデザイン著作権では保護されません。実用品のデザインの保護のために意匠権という別な制度が設けられており、意匠として登録されている他人のデザインを自身の商品のデザインとして利用すると意匠権侵害が問題になる可能性がありますし、また不正競争防止法の問題になる可能性がありますが、著作権侵害にはあたらない場合が多いでしょう。

 もっとも、従来から、実用品のデザインでも、美術品として鑑賞の対象になるほどの美術性が高い場合は著作物になると言われており、近年、実用品だからといって要求される創作性のレベルが特に低いわけではなく、一般的な著作物の要件を満たせば足りると述べる裁判例も出てきているので(「TRIPP TRAPP事件」知財高裁平成27年4月14日判決・判時2267号91頁)、注意が必要です。

設問の検討

データやグラフを扱う場合の注意点

 データやグラフは思想や感情を表現したものではないので、一般的には著作物には該当しません。グラフの中にイラストが描かれているような場合は、そのイラスト部分に著作物性が認められる可能性もあるので、グラフ部分のみを利用する方が無難でしょう。

 ただし、購読契約を締結して業界紙を購読している場合や、会費を支払い、会員規約にしたがってマーケットデータにアクセスしているような場合は、購読契約や会員規約の規定に留意する必要があります。特に市場価値の高い入手困難なマーケットデータなどは、アクセス権限や利用範囲に関する規定を含む規約に同意した上で入手している可能性が高いので、データの利用にあたっては確認が必要です。

記事の見出し

 記事の見出しは、通常はごく短文で単に事実を表現したものであったり、ありふれた表現であったりする場合が多いので、多くの場合は、著作物にあたらないと思われます。ただし、題名の長さや、表現の創作性の程度によっては、著作物にあたる可能性もありますので、注意が必要です。

 また、記事の見出しが著作物の対象にならない場合でも、大量の見出しをそのまま掲載している、見出しのみでも有料で取引の対象となっている、掲載時期が元記事とほぼ同時期である等の事情がある場合は、元となる新聞・雑誌の発行者の利益を害するとして、不法行為(民法709条)が成立する可能性があります「ヨミウリ・オンライン事件」知財高裁平成17年10月6日判決)。記事の見出しのみの利用であっても、利用態様がネタ元の新聞・雑誌に不当な損失を与えないかどうか、検討が必要です。

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