著作物の保護期間と保護期間が満了した著作物の利用

知的財産権・エンタメ

 会社のCMを制作するにあたり、公表から50年以上が経過した古い映画や、作者が亡くなってから50年が経過している漫画の一場面を利用したいと思っています。著作権の保護期間は満了しているので、自由に使えると考えてよいでしょうか。

 著作権の保護期間は、多くの場合、著作者の死後50年ですが、映画については現行法では公表後70年となっています。保護期間が延長された際にすでに保護期間が満了していた映画については、保護が復活するわけではないので、正確な公表年を確認しましょう。海外の映画であれば戦時加算の有無も確認が必要です。漫画の方は保護期間を満了していると思われますが、改変すると著作者人格権との関連で問題になる可能性があります。

解説

著作権の保護期間

 著作権の保護期間は著作者の死後50年間、と覚えている人も多いでしょう。日本の著作権法における著作権の保護期間は、著作物の創作の時に始まり、映画の著作物(保護期間は公表後70年)を除き、原則として「著作者の死後50年間」存続すると規定されています(著作権法51条)。

 正確に言うと、保護期間は著作者が亡くなった日が属する年の翌年から起算されるという規定になっており(著作権法57条)、亡くなった日から50年ちょうどで保護期間が満了するわけではありません。たとえば漫画家のやなせたかしさんは2013年10月13日に亡くなりましたが、50年間の保護期間は、2013年10月14日ではなく2014年1月1日から起算され、2063年12月31日まで続くことになります。

 また、著作権法は保護期間について上記を原則としつつ、この原則とは異なる様々な例外的な取り扱いも定めています。主要な保護期間の規定を整理すると下記のようになります。

著作権の保護期間に関する主な規定の整理

著作物のタイプ 保護期間 条文
(著作権法)
注記
原則 著作物一般 著作者が著作物を「創作したとき」に始まり、著作者の「生存している期間」+「死後50年間」 51条
例外 無名で公表された著作物 公表後50年(死後50年経過が明らかであれば、その時点まで) 52条
変名(ペンネーム)で公表された著作物 公表後50年(死後50年経過が明らかであれば、その時点まで) 52条 変名が著名な作家のペンネームで、その作家の変名として知られている場合は原則による。
団体名義の著作物 公表後50年(創作後50年以内に公表されなかったときは、創作後50年) 53条
映画の著作物 公表後70年(創作後70年以内に公表されなかったときは、創作後70年) 54条
新聞・雑誌等の継続的刊行物,に掲載された著作物 原則として保護期間は「死後50年」
保護期間が「公表後50年」とされるものは、各号・各冊の公表から50年
(連載小説のように著作物の一部分ずつが発行され一定期間内に完成するものは、最終部分の公表から50年)
56条 新聞・雑誌などの編集著作物で保護期間が「公表後50年間」とされるものも同様。

古い映画の著作権保護期間

 現行著作権法による映画の著作物の保護期間は、2004年改正法により公表後50年間から70年間に延長されました。しかも、映画の著作権保護期間については、現行著作権法(1971年1月1日施行)のほか、旧著作権法による保護を考慮する必要があります。

 旧著作権法による映画の著作物の保護期間は、著作者の死後38年、ただし団体名義のものについては発行または興行から33年、と規定されていました。現行著作権法の施行時に旧著作権法によって保護されていた著作物については、現行著作権法による保護期間よりも旧著作権法による保護期間の方が長い場合には旧著作権法による保護期間が適用されることになるので、確認が必要です。

 なお2004年の法改正時には、1953年に公表され、改正前著作権法に基づくと2003年12月31日に保護期間が満了する予定になっていた映画作品について、2004年改正法の適用があるのかどうか争われました。この問題については、最高裁により「2003年12月31日に著作権が終了した作品については、2004年1月1日施行の改正法は適用されない」、つまり保護期間は延長されないという結論が出ました(最高裁平成19年12月18日判決・民集第61巻9号3460頁)。

戦時加算

 外国の古い作品については、特別な注意が必要です。アメリカ・イギリスなどの個人・団体が第二次世界大戦前、または大戦中に取得した著作権については、通常の保護期間に約10年間の戦争期間(1941年12月8日から平和条約発効時まで。米英については3,794日間)を加算して保護されるからです(戦時加算)。大戦中に取得した著作権については、著作権取得時から平和条約発効までの期間が加算されます。

保護期間満了後は好きに使って大丈夫か

著作者人格権の問題には留意が必要

 著作権保護期間が満了すれば、基本的にその著作物は誰でも自由に利用できますただし、著作者人格権の問題には留意が必要です。

 著作者の権利は、人格的な利益を保護する著作者人格権と、財産的な利益を保護する著作権(財産権)の2つに分かれます。そして、著作者人格権には「公表権」、「氏名表示権」、「同一性保持権」という3つの権利があります。それぞれの内容についてはこちらの表を参照ください。

権利の名称 どのような権利か 条文
(著作権法)
公表権 自分の著作物でまだ公表されていないものを公表するかしないか、するとすれば、いつ、どのような方法で公表するかを決めることができる権利 18条
氏名表示権 自分の著作物を公表するときに、著作者名を表示するかしないか、するとすれば、実名か変名かを決めることができる権利 19条
同一性保持権 自分の著作物の内容または題号を自分の意に反して勝手に改変されない権利 20条

 また、著作者の名誉・声望を害するような著作物の利用は、著作者人格権を侵害する行為とみなされており(著作権法113条6項)、名誉・声望保持権と呼ばれることもあります。

 参考:「外部のデザイナーが作成したデザインの著作権をすべて買い取るときの注意点

著作者の死後も、著作者人格権の侵害にあたるような行為は禁止されている

 経済的な権利である著作権と異なり、著作者人格権は著作者だけが持っている権利(一身専属権)で、譲渡したり相続したりすることはできないので著作権法59条)、著作者人格権は、著作者の死亡によって消滅することになりますが、著作者の死後も、著作者が生きていれば著作者人格権の侵害にあたるような行為は禁止されています著作権法60条)。

 著作権が消滅している作品であっても、著作者の意に反した改変や、著作者の名誉・声望を害するような方法での利用は著作権法で禁じられていることになります。もっとも、死後の人格権侵害が行われた場合、差し止めやその他の名誉回復のための措置を請求できる人は著作者の一定範囲の遺族に限られているので(著作権法116条1項)、著作権の保護期間が満了したような古い作品の場合は、死後の著作者人格権侵害の現実的なリスクは低いといえるでしょう。

保護期間延長の可能性

 2016年12月に環太平洋経済連携協定(TPP)の承認案と関連法案が成立しました。関連法案の中には保護期間延長を含む著作権法の改正案も含まれています。保護期間の延長については反対論も強かったのですが、TPPでの合意内容に従い、改正法案では著作権の保護期間を70年としています(改正法案51条以下)。

 ただし、TPP関連法案は、原則として、TPPが日本について効力を生じる時に施行されることになっています。トランプ大統領の誕生によりTPPの行方が霧に包まれているのはご存知の通りです。執筆時現在では、米国を抜いた11か国でのTPP発効を目指す動きもありますので、保護期間延長の可能性についても引き続き留意が必要です。

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