テレビ番組の映像や歌をCMに利用するときの権利処理

知的財産権・エンタメ

 新商品のCMを制作する際に、昔のテレビ番組の映像やそこに含まれる歌を利用したいと考えています。権利者からきちんと許諾を得て利用したいと思っていますが、どうすればよいでしょうか。

 テレビ等の放送番組には、放送脚本や音楽、俳優や歌手による実演といった多様な著作物や実演が含まれている場合が多く、二次使用するためには多くの権利処理が必要になる可能性があります。著作権等管理団体を利用することで効率的に権利処理を進められる場合もありますが、制作されたCMがお蔵入りすることのないように、早目に権利処理に着手することをお勧めします。

解説

最初にすべきこと-対象となる著作物・実演の確認

 第三者が制作したコンテンツを二次的に利用したい場合、まず、利用したいコンテンツにどのような著作物が含まれているのか確認することが必要です。たとえば設問のような放送番組には、放送脚本(言語の著作物)や楽曲・歌詞などの音楽の著作物、俳優や歌手による実演といった多くの著作物実演が含まれている可能性があり、その分、多くの権利者が関与することになります。

 テレビ局の局内制作の番組で二次的利用についても著作権や著作隣接権の権利処理がきちんと行われていれば、そのテレビ局から許諾を得ることで足りる可能性が高いですが、特に古い番組の場合、著作権者や出演者との契約書自体が作成されていないケースも少なくありません。このような場合には、二次利用のために各権利者から許諾を得ることが必要になります。

著作権等管理団体による管理

 著作権者の許諾を得ようと思っても、その権利者を容易に探せるとは限りませんが、このような時に利用できる仕組みとして、「著作権等管理事業者」の制度があります。著作権等管理事業者は、多くの権利を一括して管理する事業者のことです。文化庁に登録されている著作権等権利事業者は、以下のウェブサイト上で公開されています。

 参考:文化庁「著作権等管理事業者の登録状況

 文化庁のウェブサイトでは、各団体の使用料も公表されていて、委託者や利用者は規程の内容を容易に確認できるようになっています。著作権等管理事業者が関連する分野の著作権者全員をカバーしているわけではありませんが、権利処理についてどこに連絡を取ったらよいかわからない場合の相談窓口としても、知っておく価値はあるでしょう。

放送番組の二次利用に関連する可能性がある著作権等管理事業者

 上で述べたように、放送番組には、多くの著作物や実演が含まれている場合が多いので、関連する著作権等管理事業者も多岐にわたります。主な著作権等事業者を以下に整理しておきます。

【放送番組の二次利用に関する主な著作権等管理事業者】

著作物等の種類 権利者 主な著作権等管理団体
言語の著作物 小説等の原作者 日本文藝作家協会
脚本家 日本脚本家連盟
シナリオ作家協会
音楽の著作物 作曲家 JASRAC
NexTone
作詞家
実演 実演家(歌手・俳優等) 日本音楽事業者協会
芸団協(日本芸能実演家団体協議会)
レコード(音源)
作者 日本レコード協会

音楽著作権の管理事業者について

 音楽の著作物については、古くから著作権等管理事業者であるJASRAC(一般社団法人日本音楽著作権協会)を通じた権利処理が整備され、広く利用されてきました。JASRACを通じた権利処理は基本的にオンラインで行うことができるので、利用者にとって便利な制度です。

 とはいえ、JASRACが万能なわけではありません。まず、JASRACを通じて著作権の権利処理ができるのは、JASRACが権利を管理している楽曲に限られます。2001年施行の著作権等管理事業法改正により著作権管理団体の設立が従来の許可制から登録制に緩和され、現時点ではNexToneなどJASRAC以外の管理事業者も複数存在しています。

 また、JARSACについても、利用権の種類を選択して信託することも可能になりました。たとえば、演奏・放送の権利はJASRACが管理し、録音、ビデオや映画、CM、ゲームでの利用についてはJASRACの管理外という楽曲もあります。利用しようとしている楽曲とその利用形態が著作権等管理事業者によって管理されているかどうか、作品データベースを利用して最新の情報を確認することが必要です。

 また、利用したい楽曲がたとえばJASRACの管理楽曲である場合も、必ずしも使用料規程による一律の使用料が設定されているとは限りません。JASRACが包括的に権利の管理をしている曲であっても、ゲームソフトに使用する場合や、CM用の録音に使用する場合の使用料は事前に利用者と権利者が協議して決定する必要があるので、要注意です。

権利者不明の場合-裁定制度

 ほんの数年前の放送番組であっても、権利者の連絡先が判明しない場合は少なくありません。このような時に利用できる著作権法上の制度として「裁定制度」があります(著作権法67条1項、103条)。これは、権利者が不明である著作物等について、利用を希望する者が「相当な努力」を払ってもその著作権者と連絡することができないときには、文化庁長官の裁定を得て、相当額の補償金を供託することによって、権利者からの許諾を得ずに著作物を利用できるという制度です。

 申請者が「相当な努力」を尽くしたというためには、原則として著作権等管理事業者等への照会および関連する著作者団体への照会が求められていますが、文化庁は、2016年に一度裁定を受けた著作物等について権利者捜索の要件を緩和し、過去の裁定に関するデータベースを閲覧し、文化庁に照会したうえで、権利者を探す広告を日刊新聞紙または著作権情報センター(CRIC)のウェブサイト上へ掲載すれば、「相当な努力」を尽くしたことになるという方針を採用しました。権利者やその連絡先が判明しなくても是非利用したいコンテンツがある場合には、裁定制度の利用も検討してみてください。

 参考:「権利者が不明な著作物を利用したい 〜裁定制度とは〜

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