パロディと著作権の考え方

知的財産権・エンタメ

 商品CMの中で、誰もが知っている童謡の替え歌を使いたいと思っています。原曲は古い外国の民謡なので著作権の心配はないと思いますが、何か問題になる可能性はあるでしょうか。

 著作権の保護期間が切れているような古い楽曲でも、歌詞が翻訳されている場合、訳詞家の権利が残っている可能性があるので注意が必要です。訳詞が著作権で保護されている場合は、パロディだからといって法律上特別な扱いはないので、替え歌の歌詞が元の歌詞の翻案権を侵害していないか検討が必要です。

解説

楽曲について著作権を持つ者は誰か

 童謡の中には古くからある作者不詳の民謡がベースになっているものがあります。著作権法上著作者が不明でも著作権保護の対象になりますが、作品公表の翌年から50年が経過した時点で保護期間が満了します。

 参照:「著作物の保護期間と保護期間が満了した著作物の利用

 古い民謡が原曲であれば、原曲の著作権保護期間は終了していると思われますが、曲が古くても後年歌詞がつけられている場合や原曲が外国民謡で訳詞が行われている場合は、作詞家や訳詞家が著作権を持ち、しかもその保護期間が存続している可能性があるので、注意が必要です。

替え歌と著作権

 通常の替え歌は、曲はそのまま利用し、歌詞についてはオリジナルに手を加えたものです。歌詞・訳詞が著作権で保護されている場合、著作権者に無断で歌詞に手を加えれば、翻案権(著作権者が、勝手に著作物を変えることを禁止できる権利)の侵害にあたることになります(著作権法27条)。著作者人格権の1つである同一性保持権著作権法20条)の侵害にあたる可能性も高いでしょう。

 参照:「著作権侵害の判断基準(デザインの「パクリ」を題材に)

 もっとも、いわゆる「替え歌」が常に著作権法上NGになってしまうとは限りません。翻案権侵害にしても、同一性保持権の侵害にしても、そこで問題になる行為は「改変」です。「改変」というからには、「オリジナルに手を加えた」ことが必要です。歌詞付きの楽曲の場合、楽曲の著作物と歌詞の著作物がそれぞれ別個に存在しています。メロディーはそのまま使い、歌詞はオリジナルとは似ても似つかないものを新たにつけるというタイプの替え歌であれば、楽曲に対しても歌詞に対しても「改変」行為があったとはいえないと思われます。

 ただし、完全に新しい歌詞をつける場合でも、歌詞の内容によっては問題になる可能性がないわけではありません。著作権法には、「著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為は、その著作者人格権を侵害する行為とみなす」という規定があります(著作権法113条6項)。オリジナルの楽曲に作曲家の社会的名誉や声望を害するようなあまりにも下劣な歌詞がつけられた場合には、作曲家の名誉声望保持権を侵害すると認定できる余地もあると思われます。

小説のパロディ

 パロディは替え歌だけではありません。たとえば「有名な小説の続編を勝手に書くとどうなるのか」という問題があります。小説の場合、続編では一般的に「本編」のキャラクターや設定を使うことになると思われますが、キャラクターの性格や小説の設定は抽象的な概念であって、それ自体は、著作権法で保護されている「著作物」ではありません。したがって、他人の書いた小説の続編を勝手に書いても、原作の創作的表現を再現するような事情がない限り、著作権侵害には該当しないと考えられます。

漫画のセリフの書き換え

 別のパロディのパターンとして、漫画のセリフを勝手に書き換える、というタイプのものもあります。ユーザーが漫画・アニメの1コマや、テレビ番組のキャプチャを「お題」としてアップし、これにほかのユーザーが面白いセリフをつける、という人気サイトもあります。

 著作権の観点から見ると、漫画・アニメの1コマを無断でアップロードすれば、作品の著作権者が持っている複製権著作権法21条)や送信可能化権(アップロード権)(著作権法23条)を侵害することになります。また、放送番組のキャプチャについては、放送事業者、つまりテレビ局が持っている放送番組の複製権(著作権法100条の2)を侵害することになります。この場合の複製には、写真等による複製も含まれるからです。

 参照:「録画した映像を自社ウェブサイトに掲載する場合の問題点

 また、漫画のコマに含まれたセリフの一部を空白にして、別の言葉に言い換える場合は、漫画の著作物に対する翻案権や、漫画家の同一性保持権を侵害する可能性があります。

パロディの種類 侵害行為に該当する
(可能性のある)法律
備考
替え歌
  • 翻案権(著作権法27条
  • 同一性保持権(著作権法20条
  • 名誉声望保持権(著作権法113条6項)
  • 歌詞・訳詞が著作権で保護されている場合、著作権者に無断で歌詞に手を加えると、侵害行為にあたる
  • オリジナルの楽曲に作曲家の社会的名誉や声望を害するようなあまりにも下劣な歌詞をつけた場合、作曲家の名誉声望保持権の侵害にあたる可能性がある
勝手に小説の続編を書く
  • 名誉声望保持権(著作権法113条6項)
  • 原作の人物設定・背景事情等を利用しても、原作の文章の創作的表現を再現するような態様がない限り、著作権(複製権・翻案権)侵害には該当しない原作者の社会的評価を下げる場合には、名誉声望保持権の侵害の可能性がある
漫画のパロディ(原作と同じ主人公が登場する別作品)
  • 複製権(著作権法21条
  • 翻案権(著作権法27条
  • 同一性保持権(著作権法20条
  • 名誉声望保持権(著作権法113条6項)
  • 漫画のパロディの場合は、原作のキャラクターのビジュアル(創作的表現)を忠実に再現することが多く、この場合は原作品の複製権・翻案権侵害にあたる可能性が高い
漫画のセリフの書き換え
  • 複製権(著作権法21条
  • 翻案権(著作権法27条
  • 同一性保持権(著作権法20条
  • 名誉声望保持権(著作権法113条6項)
  • 絵については複製
  • セリフの書き換えが翻案権侵害にあたる可能性がある
放送番組のキャプチャに勝手にセリフをつける
  • 放送事業者の複製権(著作権法100条の2
  • 放送番組の写真等による複製も侵害行為にあたる

パロディは保護されるべきか

 パロディは原作を利用しつつ、そこに新たな価値を付し創作的な工夫を加えて送り出される作品です。そのようなパロディを単なる著作権侵害として扱うことが適当なのかという議論があります。実際に、他国の著作権法の中にはパロディを明文で認める法律も存在していますし、米国著作権法の下では多くのパロディが「フェアユース」として認められています。

 しかし、現在の日本の著作権法には、パロディを著作権侵害から除外できる根拠規定がありません。一方、日本では、著作権法上はパロディに対する救済規定がないとしつつ、たとえばパロディの宝庫ともいえる同人誌の多くは、「ファンがすることだから」と権利者により大目に見られてきました。

 著作権侵害・著作者人格権の侵害に対する刑事罰は、権利者が告訴しなければ起訴できない親告罪ですし、損害賠償や差し止めといった民事上の救済手段も、権利者でなければ請求はできないので、権利者がパロディを黙認している限りは現実的な問題になる可能性は低いといえます(ただし、TPP関連の著作権法改正では、一定の条件を満たす著作権侵害については非親告罪となることが規定されているので、今後はより一層の注意が必要です)。

 参照:「著作権を侵害した場合、どのような罰則があるか

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