著名ブランドの商品や古い映画ポスターを撮影で利用する際の注意点

知的財産権・エンタメ

 商品のCM映像やポスター、パンフレットの中で、商品イメージを演出するために様々な小道具を使用しています。高級車や有名ブランドの香水瓶など、形が特徴的で車種やブランドがすぐわかる商品を使うこともありますし、映画会社から撮影用に借りた古い映画のポスターを使うこともあります。このような小道具の使用が法的に問題になることはあるのでしょうか。

 車のデザインや香水瓶の形は、通常は著作物として保護はされておらず、また物のパブリシティ権は認められていませんので、撮影に小道具を使うことは一般的に法的な問題はありません。ただし、オリンピックのロゴのように使用方法が厳格に決められているマークには注意してください。
 映画のポスターの著作権については映画会社の許可でクリアされると思われますが、被写体となっている俳優・女優のパブリシティ権には留意が必要です。

解説

著名ブランドの商品を撮影で使用することについて

 CMその他の販促素材の撮影においては、主役となる商品だけでなく、イメージを作るために様々な既製品を小道具として使うことがあります。結論としては問題になる可能性は低いのですが、どのような法律が検討対象となりうるか解説したいと思います。

(1)著作権

 車のデザインや香水瓶が著作物である場合、これらを写真撮影することは著作物の複製にあたるので著作権侵害が成立する可能性があります。
 従来は、本来意匠法によって保護されるべき工業製品の形態(応用美術)は、著作権法2条2項にいう美術工芸品に該当しない限り「美術の著作物」に該当しないと考えられてきましたが、近時の裁判例には応用美術であっても創作性があれば、「美術の著作物」に該当すると判断したものもあります(TRIPP TRAPP事件・知財高裁平成27年4月14日判決・判時2267号91頁等)。

 通常の自動車の形状は、機能から必然的に一定の形にならざるを得ず、創作性が認められる余地は少ないと思われます。香水瓶は、創作性を発揮する余地がより大きいので、形によっては著作物性が認められる可能性があると思われます。

【「美術の著作物」に該当するとされた製品「TRIPP TRAPP」】

「美術の著作物」に該当するとされた製品「TRIPP TRAPP」

出典:「TRIPP TRAPP事件・知財高裁平成27年4月14日判決・判時2267号91頁」46頁

(2)意匠権

 商品の形状は、意匠登録されている場合があります。意匠登録されている場合、意匠権者から実施を許諾されていないにもかかわらず、第三者が業として(個人的または家庭内での利用を除くという意味)登録意匠またはそれに類似する意匠を製造・販売等を行った場合には、意匠権の侵害となります。

 もっとも、意匠登録されている商品形状に対する意匠権侵害が成立するのは、他人が、同じまたは類似する形状の商品を製造・販売する場合です。CMやパンフレットの被写体として商品を使用する場合には意匠権侵害は成立しません

(3)商標権

 商品形態そのものに自他商品識別力が認められるようなケースでは、商品形態を商標登録することも可能です。たとえば、コカコーラのボトルや、ヤクルトの容器などは立体商標として登録されています。ただし、その商品の機能を確保するために不可欠な形状の場合には、商標登録は認められません。

コカ・コーラのボトルやヤクルトの容器等の立体商標

 なお、CM、ポスター、パンフレット等の被写体となった商品の形態が商標登録されているとしても、小道具として使用されている場合は、制作された作品がその商品形態を自社の商品の商標として使用しているわけではないので、商標権侵害は成立しません

(4)パブリシティ権

 特定の自動車や香水瓶をわざわざ小道具として選んで撮影に使用する場合、使用の態様によっては、それらの商品が持っている、視聴者を引き付ける魅力(顧客吸引力)を利用しているといえるかもしれません。

 「顧客吸引力」と聞くと「パブリシティ権?」と思う方もいるかもしれませんが、パブリシティ権とは、人の氏名・肖像等が有する顧客吸引力を排他的に利用する権利をいい、人以外の動物や物については認められていないので、自動車や香水瓶に関しては問題となりませんギャロップレーサー事件・最高裁平成16年2月13日判決・民集58巻2号311頁等)。

古い映画ポスターの利用について

(1)著作権

 映画ポスターの中には映画の1シーンが利用されている場合が多いので、映画の著作権が問題になります。また、ポスター制作のためにさらにデザインが施され、あらたに写真撮影がされている場合が多いので、ポスター独自の著作権も考える必要があります。

 本件の事例では映画会社から撮影の小道具として映画ポスターを借りていますので、映画会社との契約上、必要な利用態様が許諾されていれば問題ありませんが、CM制作会社の所有物やスタッフの私物であるポスターを利用するような場合には、著作権者へ許諾を得る必要があるでしょう。

(2)パブリシティ権

 映画のポスターには、出演する俳優・女優が大きく写っている場合が少なくありません。このようなポスターを利用するにあたっては、パブリシティ権について検討する必要があります。

 日本法では「パブリシティ権」という権利が規定されているわけではありませんが、従来、複数の下級審裁判例において、パブリシティ権が一定の要件のもと法的に保護されると認められてきました。

 ピンク・レディー事件の最高裁判決(最高裁平成24年2月2日判決・民集66巻2号89頁等)は、パブリシティ権の意義に関し、(i)個人は、人格権に由来する権利として、その氏名、肖像等をみだりに利用されない権利を有し、(ii)肖像等が、商品の販売等を促進する顧客吸引力を有する場合、かかる顧客吸引力を排他的に利用する権利たる「パブリシティ権」も、上記の人格権に由来する権利に含まれる、と判示しました。そのうえで、顧客吸引力を有する者の肖像等の無断使用であっても、正当行為等として受忍されるべき場合もあると判示したうえで、具体的には「専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合に」違法なパブリシティ権侵害となるとの判断基準を判示しました。

 また、「専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合」として、以下の三類型があげられました。

  1. 肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用する場合
  2. 商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付す場合
  3. 肖像等を商品等の広告として使用する場合

 さらに補足意見では、「専ら」基準について、「例えば肖像写真と記事が同一出版物に掲載されている場合,写真の大きさ,取り扱われ方等と,記事の内容等を比較検討し,記事は添え物で独立した意義を認め難いようなものであったり,記事と関連なく写真が大きく扱われていたりする場合には,「専ら」といってよく,この文言を過度に厳密に解することは相当でない」と述べられています。

 本判決の第二審が示した「専ら」基準では、ほとんどの目的が顧客吸引力の利用であっても、その他の目的がわずかでも存在すれば、パブリシティ権侵害が否定されてしまうのではないか」との懸念に対して、本判決では、そのようなケースはパブリシティ権侵害と実質的に判断される可能性があると示唆されている点も、実務上参考となると考えられます。

 上記の判断基準に照らすと、映画のポスターがあくまでも小道具の1つという存在感で背景として利用されている程度であればリスクは低いと思われますが、映画ポスターが大きく写っている場合には、パブリシティ権が問題になる可能性があります。思わぬところでクレームを受けないように、事前の検討を欠かさないようにしましょう。

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