米国特許訴訟における弁護士費用の敗訴者負担とは

知的財産権・エンタメ

 米国特許訴訟における弁護士費用の敗訴者負担について教えてください。

 米国特許法では、裁判所は、例外的場合において、勝訴者による合理的な弁護士費用の回復を認めることができる、との規定があります。弁護士費用の回復が認められる「例外的」な場合について、2014年に連邦最高裁判決が解釈を示しています。

解説

米国特許法における弁護士費用に関する規定

 米国特許法285条は、特許訴訟における弁護士費用の負担について「例外的場合において、裁判所は、勝訴者による合理的な弁護士費用の回復を認めることができる」(The court in exceptional cases may award reasonable attorney fees to the prevailing party.)と規定しています。この規定は、裁判所がその裁量において、「例外的場合」(exceptional cases)には、敗訴者に一定の弁護士費用負担を命じることができるとするものですが、いかなる場合が「例外的」な場合に該当するのかは、解釈に委ねられていました。

「例外的場合」に関する解釈

2014年の連邦最高裁判決前の状況

 米国特許法285条に基づく弁護士費用の敗訴者負担について、2014年の連邦最高裁判決がなされる前の巡回控訴審裁判所(CAFC)では、

  • 敗訴者に不正な行為があったこと
  • または、

  • 訴訟上の主張について客観的根拠がないにもかかわらず、主観的な悪意を持って当該主張がなされたこと

という要件を課し、敗訴者についてすべての要件が充足された場合にのみ、勝訴者の弁護士費用を(合理的な範囲で)負担させることができる、としていました。
 また、CAFCは、当該要件の立証のためには、明白かつ確信を抱かせるに足る証拠(clear and convincing evidence)が必要であるとの基準を適用していました。
 かかるCAFCの基準では、(不正行為の場面を除くと)立証となる要件において客観的要件と主観的要件の双方の充足が必要となる点、および、立証のハードルが高いという点から、弁護士費用の敗訴者負担が認められる場合は極めて限られていたといえます。

2014年の連邦最高裁判決の内容

 2014年4月29日に、連邦最高裁は、2つの事件(Octane Fitness LLC v. ICON Health & Fitness Inc., 134 S. Ct. 1749Highmark Inc. v. Allcare Health Management System, Inc., 134 S. Ct. 1744)において、前述のCAFCによる基準を否定する判断を示しました。

 まず、連邦最高裁は、弁護士費用の敗訴者負担を命じる際に、不正行為や主観的悪意の立証は必ずしも必要ではないとしました。そして、訴訟における主張が、他の事案と著しく異なる(stands out from others)場合や、訴訟追行の態様が不合理(unreasonable)な場合には、米国特許法285条にいう「例外的」場合に該当し得ると述べて、裁判所の総合衡量による広い裁量を認めました
 さらに、立証のハードルについても、CAFCが課していた「明白かつ確信を抱かせるに足る証拠」の基準よりも低い、証拠の優越(preponderance of evidence)の基準が適用されるべき、とされました。

 加えて、第一審裁判所である連邦地方裁判所による弁護士費用の敗訴者負担の判断の適否について、控訴審は、裁量権の濫用の基準によって審査すべきと、連邦最高裁は述べています。これにより、弁護士費用の負担に関する第一審裁判所の判断は、容易に覆らなくなったといえます。

2014年の連邦最高裁判決の影響

 2014年の連邦最高裁判決により、弁護士費用の敗訴者負担が命じられる可能性は高くなったと評価されています。特に、特許が侵害されていないということを認識しつつ、あるいは、容易にそのことを認識し得たにもかかわらず特許侵害訴訟を提起した原告に対して、被告が防御に要した弁護士費用の負担を命じる可能性が高くなり、かつ、かかる命令を行った第一審裁判所の裁量が広く肯定されて、控訴審裁判所でも尊重されるようになったといえます。

 この判断は、いわゆるパテントトロールによる訴訟提起を牽制する効果を有していたといえますが、同時に、米国において特許訴訟を提起する原告においては、提訴前に侵害の成否についてより慎重な検討が求められるようになった、という側面も存在します。すなわち、特許権者としては、特許の侵害が成立するという内容の、特許専門家(弁護士)の意見書・鑑定書を、訴訟提起前に取得するなどの対応をとることが望ましいといえます。

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