日本でフェアユースは適用されるのか

知的財産権・エンタメ

 食品添加物についての市民集会で配布されていたチラシに当社のマスコットキャラクターが同業のX社のマスコットキャラクターを踏みつけているイラストが描かれているのを発見しました。添加物の多いX社の商品より当社商品を推奨する趣旨のようで、そのこと自体は嬉しいのですが、著作権侵害ですし、当社はその会社とは良好な関係にあることもあり、使用を控えて欲しいと要望したところ、フェアユースに該当するという理由で断られました。フェアユースとはいったいどういうものなのでしょうか。

 フェアユースはアメリカ法に基づくもので、日本法にはこれに該当する規定はありません。日本法には著作権の例外規定がありますが、本件のような利用はそのいずれにも該当しませんので、その旨を告げて使用の停止を求めるべきです。

解説

フェアユースとは

 フェアユースとはアメリカ著作権法に定められている著作権の例外規定のひとつです。イギリス法にも同様の規定がありますが、ここではアメリカ法について説明をします。

 アメリカ著作権法は「批評、解説、ニュース報道、教授(教室における使用のために複数のコピーを作成する行為を含む)、研究または調査等を目的とする著作権のある著作物のフェア・ユース(コピーまたはレコードへの複製その他106条に定める手段による使用を含む)は、著作権の侵害とならない」と定めており、さらにフェアユースとなるか否かの判断基準の例として、以下の4項目を掲げています。

【フェアユースとなるか否かの判断基準の例】
  1. 使用の目的および性質(使用が商業性を有するかまたは非営利的教育目的かを含む)
  2. 著作権のある著作物の性質
  3. 著作権のある著作物全体との関連における使用された部分の量および実質性
  4. 著作権のある著作物の潜在的市場または価値に対する使用の影響

 このアメリカ法の規定を踏まえると、本件ではフェアユースにあたる可能性はあるかもしれません。

日本法におけるフェアユース

 アメリカ法のフェアユースの規定は、さまざまな事情を総合的に考慮して著作権侵害にあたるかどうかを判断する、いわば包括的な例外規定です。しかし、日本の著作権法はこのような包括的な例外規定は設けず、著作物の種類、使用の目的、使用態様などに応じて個別具体的な例外規定を列挙しています。ですから、そのどれかに該当しない限り著作権侵害ということになります。著作権の例外規定については「社内プレゼンで他社の広告写真や有名なキャラクターを資料に入れてもよいか」を参照ください。

 今回の市民集会でのマスコットキャラクターの利用は、著作権の例外規定のどれにも該当しませんので、著作権侵害ということになるでしょう。

 ですから、フェアユースにあたるから著作権侵害にならないという反論には法的根拠がないということになります。裁判例でも、「ラストメッセージin最終号事件」(東京地裁平成7年12月18日判決・判時1567号126頁)の判決などでフェアユースの法理は否定されています。

【ラストメッセージin最終号事件(東京地裁平成7年12月18日判決・判時1567号126頁)】
 休刊または廃刊となった雑誌の最終号の表紙、イラスト等とともに挨拶文を複製してまとめた書籍を発行したことが、フェアユース(公正使用)にあたり著作権侵害にあたらないとする被告の主張が排斥された事例。

 参照:「著作物にあたらないものの種類と、利用をする際の注意点

権利濫用の法理

 なお、日本法でもフェアユースと同様の機能を果たすことが期待されているものに「権利濫用の法理」があります。

 これは、法律上認められる権利であっても、それを行使することが具体的な事情の下で正当な範囲を逸脱していると判断される場合に、権利行使を認めないものです。民法1条3項の「権利の濫用は、これを許さない」という規定がその根拠で、著作権侵害訴訟でも傍論としてではありますがその適用を認めた裁判例もあります。

 あまりにも軽微で、著作権行使をする必要性もないと思われるような侵害行為に対する著作権侵害については、権利濫用として著作権行使が認められない場合もあるでしょう。

 本件は、マスコットキャラクターを使用する必要性がない事案ですし、ブランドの価値を守るためにもこのような利用方法を黙認することはできないでしょう。特に本件の利用方法は良好な関係にあるX社の製品を揶揄するようなものですから、会社として使用を控えるよう要求することは当然だといえます。ですから、権利の濫用にも該当しないでしょう。

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