キャラクターと著作権の関係

知的財産権・エンタメ

 当社のパンフレットの中で、古今東西の名探偵が当社の製品の秘密を解き明かすというコーナーを企画しています。登場させようとしている名探偵の中には、エルキュール・ポアロ、金田一耕介、三毛猫ホームズ、名探偵コナンなど、著作権がまだ切れていないものも含まれています。このようなパンフレットを作っても大丈夫でしょうか。

 小説の登場人物については基本的に問題ありません。マンガやアニメのキャラクターを登場させる際にはそのビジュアル面を使わないようにしてください。なお、キャラクター名は商標登録されている場合があるので、商標権にも注意してください。

解説

キャラクターは著作物か - ポパイ事件判決 -

 小説ではシャーロック・ホームズやハリー・ポッター、マンガではのらくろやドラえもんや両津勘吉など、古今東西を問わず人気作品には魅力的な主人公やそれを取り囲む様々な登場人物、キャラクターがつきものです。作品はこれらのキャラクターが絡み合いながら物語が進んでいくものですが、作家の中には、ある程度キャラクターが決まると途中から作家の手を離れてキャラクターが勝手に動き出すということを言う方もいます。

 では、このようなキャラクターは著作物として保護されるのでしょうか。
 実は、この点について判例は否定的に考えています。マンガ「ポパイ」の主人公であるポパイの絵をモチーフにした図柄を使用した商品を販売していた業者に対し、ポパイの著作権者が著作権侵害を理由に提起した裁判がありました(ポパイ事件)。この事件の最高裁判決(最高裁平成9年7月17日判決・民集51巻6号2714頁)は、具体的な漫画を離れた登場人物のいわゆるキャラクターを著作物ということはできないとしました。その理由は、キャラクターといわれるものは、漫画の具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念であって、具体的表現そのものではなく、それ自体が思想または感情を創作的に表現したものということができないということです。

 ただし、この判決では、ポパイの絵に対して原作の絵(美術の著作物)についての複製権の侵害を認めています。その理由として、複製というためには、第三者の作品が漫画の特定の画面に描かれた登場人物の絵と細部まで一致することを要するものではなく、その特徴から当該登場人物を描いたものであることを知り得るものであれば足りるとしています。つまり、特定のコマに描かれたものと同じでなくても、ポパイの特徴と酷似した絵を描けばポパイの著作権侵害になるというわけです。

 このように、キャラクターについては、マンガやアニメなどにおけるビジュアル面については著作権が成立しますが、それを離れた抽象的なキャラクターには著作権は成立しないわけです。

 参照:

キャラクターの利用

ビジュアル面を伴わない利用

 ポパイ事件判決を前提とすると、小説に登場するキャラクターの利用、またマンガやアニメに登場するキャラクターでもビジュアル面を伴わず文字だけで登場させる場合には著作権侵害の心配はないということになります。

 モーリス・ルブランの小説で日本国内では「アルセーヌ・ルパン対シャーロック・ホームズ」として知られている作品があります。登場するのは確かにホームズに似た名探偵ですが、原題ではその名前は「シャーロック・ホームズ」ではなく「エルロック・ショルメ」ですし、ホームズとショルメには細かな違いもあります。この背景にドイルからルブランに対する抗議があったのかは研究者の間でも諸説あるようですが、著作権法上は小説にホームズを登場させてもドイルの著作権侵害にはならないということになります。

ビジュアル面を伴う利用

 他方、マンガやアニメのキャラクターをイラスト等のビジュアル面を伴う態様で登場させる場合には注意が必要です。複製権侵害が成立するためには「その特徴から当該登場人物を描いたものであることを知り得るものであれば足りる」というポパイ事件判決を前提とすると、名探偵コナンと酷似するキャラクターを描いてしまうと著作権の侵害にあたる可能性があります。

 コミケ、同人誌、コスプレなどの世界では、マンガやアニメの人気キャラクターをよく目にしますし、それが著作権侵害として訴えられたという話は聞きません。それを踏まえると、今回のような事例も著作権侵害にあたらないのではないかと思うかもしれません。しかし、コミケなどの世界も実は著作権法的にはグレーで、ただ一定の範囲では黙認している著作権者が多いというのが実情です。しかし、企業が商品パンフレットなどに使用していることを黙認する著作権者はまずいないでしょう。ですから、企業活動の一環として利用するのは避けるべきです。

 なお、著作権問題ではありませんが、キャラクターの名前は商標登録されていることがあります。たとえば「名探偵コナン」という言葉については株式会社集英社小学館プロダクションが、「POIROTポワロ)」という言葉についてはアガサクリスティリミテッドが商標登録をしています。商品パンフレットなどにキャラクターを登場させる場合には商標権侵害にならないように気をつける必要もあります。

【キャラクターの利用について】

ビジュアル面を伴わない利用 キャラクター名など文字だけ利用する場合には著作権侵害にあたらない。
ビジュアル面を伴う利用 複製権の侵害にあたる可能性があるため注意が必要。 当該キャラクターと細部まで一致していなくても、その特徴から当該登場人物を描いたものであることを知り得るものであれば侵害行為となる。
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