古いCMを再利用する場合、出演者に再度許可を得る必要はあるのか

知的財産権・エンタメ

 当社の古いCMの一部を新しい商品のCMの中で使いたいと思っています。一度出演者の許可を得て撮影した映像をその後利用する場合、あらためて出演者の許可を得る必要はないと聞いたのですが、本当でしょうか。

 CMは「映画の著作物」であり、実演家が映画の撮影に参加することに同意して録音・録画された実演については、その映画の著作物がさらに録音・録画されることについて、実演家の録音・録画権、放送権、譲渡権等は及ばないと規定されています。ただし、この原則が契約で排除されている場合も少なくありません。CMを再利用する場合、出演契約との関係で、出演者からあらためて許諾を得る必要がある場合が多いと思われます。

解説

コマーシャル映像の著作権

 著作権法上「映画の著作物」とは劇場公開される映画だけを意味するわけではありません。「映画の著作物」には「映画の効果に類似する視覚的または視聴覚的効果を生じさせる方法で表示され、かつ、ものに固定されている著作物」が含まれ(著作権法2条3項)、テレビ映画、ビデオソフト等も含まれます。コマーシャル映像(CM)も、著作権法上は映画の著作物(著作権法10条1項7号)に該当します。

 映画の著作物の著作者は映画製作者(映画の製作に発意と責任を持つ者)であり(著作権法29条1項)、CMの場合は、広告主が映画製作者にあたる場合が多いと思われます(ケーズデンキ事件・知財高裁平成24年10月25日判決・ジュリ1450号6頁)。

 広告主がCM映像の著作権者である場合、映像著作権の点で言えば、原則として広告主である会社はCM映像を自由に利用することができます。ただし、CMには、素材として音楽、俳優などの出演者、時にはキャラクター等が使用されている場合が多く、映像の著作権以外の著作権・肖像権が混在している場合が多いので注意が必要です。

ワンチャンス主義

 CMに俳優などの出演者がいて、演技をしている場合はどうでしょうか。俳優は、著作権法上「実演家」として自身の演技について、録音・録画権など一定の権利を持っています。

 参照:「チャリティコンサートの映像を利用する際の注意点(実演家人格権・著作隣接権)

 しかし、実演家の重要な役割に照らして実演家に権利を与えて保護する意義がある一方、映画のように多数の実演家が関連する作品については、出演した実演家全員に対して長期間にわたって許諾権を与えてしまうと、許諾が得られないために結局その映画の利用がほとんど不可能になるという事態が懸念されます。
 そこで、著作権法は、実演家の重要な役割に照らし、実演家に著作隣接権を与えて保護をはかると同時に、実演家の権利(実演の利用を許諾する権利)については、対象となる実演が最初に利用される時だけ認めるといういわゆる「ワンチャンス主義」を広く認めています。

 ワンチャンス主義が端的に表れている例として、実演家が映画の撮影に参加することに同意して演技をする場合、「映画の著作物」に録音・録画された実演については、その映画の著作物がさらに録音・録画されることについて、実演家の録音・録画権、放送権、譲渡権等が及ばないと規定されています(著作権法91条2項、92条2項2号ほか)。俳優が映画に出演する場合には、当然、その俳優から録音・録画権の許諾を受けて俳優の実演(演技)が録音・録画されているので、その後その映画をDVDにする場合には、あらためて出演した俳優の許諾を得る必要がないことになります。

ワンチャンス主義

注意点

CMの場合

 ただし、ワンチャンス主義の原則が契約で排除されている場合も少なくありません。CMの場合、通常は、出演契約においてCMの利用期間や利用媒体が明確に決められています。合意されたCM利用期間後にCMを再利用したい場合には、出演者の許諾をあらためて得ることが必要です。
 CMは、出演者が持つ経済的な価値(顧客吸引力)をストレートに利用する場面なので、過去の映像を無断で新しいCMに利用すると、パブリシティ権の関係でも問題になるでしょう。

 参照:「著名ブランドの商品や古い映画ポスターを撮影で利用する際の注意点

テレビ番組の場合

 なお、テレビ番組も、ライブでない限りは一度収録(録音・録画)され、編集を経たうえで放送されています。もっとも、すべてのテレビ番組が、映画同様、出演者による録音・録画権の許諾に基づいて収録したと言えるわけではありません。
 放送事業者には、出演者から録音・録画の許諾を得なくても、「自己の放送のために」実演を一時的に録音・録画できる権利が認められており(著作権法44条)、さらに放送の許諾には、契約で特に定めない限り録音・録画の許諾を含まないという規定があります(著作権法63条、103条)。放送の許諾のみしかない場合は、ワンチャンス主義が適用されませんので、そのテレビ番組をDVD化する場合には、あらためて出演者(実演家)の許諾を得ることが必要ということになります。

コンテンツの更新情報、法改正、重要判例をもう見逃さない!メールマガジン配信中!無料会員登録はこちらから
  • facebook
  • Twitter

関連する特集