ライセンサーが他社に著作権譲渡した場合の利用について

知的財産権・エンタメ

 当社ではウェブサイト上で、A社から無償で使用許諾を受けて複数の素材を使用していました。ところが、このたびA社が保有する素材の著作権をすべてB社に売却したとの連絡が入りました。著作権譲渡を受けたB社は素材を使用している会社に使用料を請求する方針だと聞きましたが、従前どおり無償で使用することはできないのでしょうか。

 結論的にはB社の同意がない限り従前どおり無償で使用し続けることは難しいと思われます。使用料について合意ができない場合は、素材の使用を断念するしかないでしょう。A社との契約に際してはこのような事態に備えた条項を設けることも検討する必要があります。

解説

著作物に関するライセンス契約

 著作権者が有している著作権は、複製権の場合は複製行為をする権利を専有する(著作権法21条)、というように、それぞれの著作権の種類に応じた利用をする権利を専有しています。ですから、各著作権に該当する利用行為を行うと対応する著作権の侵害となります。

 参照:「著作権の基本(1)広義と狭義の著作権とは?

 その一方で、著作権者は他人に対して著作物の利用を許諾することができます(著作権法63条1項)。利用許諾に関する契約をライセンス契約といいますが、このライセンス契約により許諾を受けたライセンシーは、その許諾に係る利用方法および条件の範囲内で、許諾を受けた著作物を利用することができます(著作権法63条2項)。

 参照:「著作権ライセンス契約の留意点

ライセンサーが著作権を譲渡した場合

 ライセンシーが著作物を利用することができる権利は、あくまでライセンス契約という契約に基づくもので、契約の相手方であるライセンサーに対して主張できる権利に過ぎません。したがって、ライセンサーが著作権を第三者に譲渡した場合に、著作権を譲り受けた第三者に対してライセンス契約上の権利を主張する(これを「対抗」といいます)することはできないのが原則です。

 特許法上の専用実施権(特許法77条1項)や商標法上の専用使用権(商標法30条1項)などは第三者に対抗できるライセンス契約上の権利ですが、これらは特許庁への登録が要件とされています。しかし、著作権法にはこのようなライセンス契約上の権利の登録制度もなく、第三者に対抗できる権利についての規定もありません。

 また、特許法では登録をしないライセンス契約上の権利である通常実施権について、第三者に対抗することができるという規定を設けていますが(特許法99条)、著作権法にはそのような規定もありません。

 ですから、著作権が譲渡された場合、著作権に基づく利用権は著作権を譲り受けた第三者には対抗できないことになります。

ライセンサーが著作権を譲渡した場合

 設例でも、B社から著作権に基づいて素材の使用料を請求された場合、A社とのライセンス契約上により無償で使用ができるという権利を対抗することはできません。使用料について合意ができればB社との間で改めてライセンス契約を締結することになります。また合意ができなかった場合には、B社から要求された素材の使用は断念せざるを得ません。

著作権を譲渡したライセンサーとの関係

 設例で、素材の使用について使用料を支払わなければならなくなったり、使用そのものを断念せざるを得なくなった場合、その責任は著作権を譲渡したA社にあります。ですからA社に対しては損害賠償等を請求することができます。ただ、素材の使用ができるようになるわけではありません。

 このような場合に備えて、著作権を譲渡した場合には同時にライセンシーにも著作権を無償で譲渡するという条項を設ける方法が考えられます。この場合、ライセンサーから著作権譲渡を受けたB社とは著作権の二重譲渡という関係になり、先に文化庁への登録を備えた方が優先することになります。

 参照:「著作権の登録制度とは

 ただ、この方法でも先に登録をされてしまうとどうしようもありません。こう考えると、ウェブサイトなどで継続的に使用する素材については単なる使用許諾ではなく著作権譲渡を受けておき、いつでも登録ができるように準備しておく方がよいといえるでしょう。

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