映像コンテンツ制作における原作のライセンス契約時に留意すべきポイント

知的財産権・エンタメ

 ある原作を基に映像コンテンツを制作しようと思っています。許諾者(ライセンサー)である権利者(原作者等)との間で、映像コンテンツ制作のために使用許諾契約(ライセンス契約)を締結する際にどのようなポイントに留意すべきでしょうか。

 留意すべきポイントとしては、(1)ライセンス契約の対象の確定、(2)二次利用の可否・範囲、(3)著作者と著作権者が分かれている場合の対処、(4)期間、(5)対価、(6)地域・言語、(7)クレジット表記、(8)監修・クリエイティブコントロール、(9)帳簿・記録の閲覧(監査)、(10)原作素材や作者のプロフィール等の使用、(11)続編の扱いなどが主としてあげられます。これらを協議・確認のうえ、ライセンス契約書に反映することが重要です。

解説

映像コンテンツに関する契約とは

 映像コンテンツに関する契約と一言で言っても、たとえば、今回のような映像コンテンツを制作するにあたっての原作の権利保有者との間で締結する使用許諾契約(ライセンス契約)もあれば、できあがった映像コンテンツをベースにした商品化のためのライセンス契約など多岐にわたります。そしてその取引内容によって、同じライセンス契約でも注意すべきポイントは異なってきます。以下では、映像コンテンツ制作における原作のライセンス契約について、主な留意ポイントを解説します。

主な注意ポイント

(1)ライセンス契約の対象を確定する

 そもそもライセンス契約の対象が何かを明確にして確定する必要があります。これは、①映像コンテンツの原作の確定と、②許諾対象となる利用行為、つまり制作する映像コンテンツの確定とに分かれます。

①映像コンテンツの原作の確定

 まず、原作が漫画、小説、アニメ、ゲームなのかというジャンルの確定や、たとえば漫画であれば、そのシリーズすべてが対象なのか、一部なのか、スピンオフ作品・外伝等も含まれるのかといった範囲の確定が必要になります。最近では、元の漫画家とは異なる作者が(元の作者の原案、脚本ないし監修のもと)作画しているスピンオフものなども少なくありません。そのような場合、ライセンス契約を締結しようとしている許諾者(ライセンサー)がその作品についても映像制作に必要な権限を持っているのか等の確認も必要になってきます。

 また、「原作」と捉えているものにさらに原作がある可能性もあります。たとえば、いわゆるラノベ(ライトノベル)をベースにしたアニメや、漫画をベースにしたゲームなどです。この場合は、「原作」と考えている作品の原作(原著作物)がないか、あればその権利は誰が有しているのか、許諾権限をライセンサーが持っているのか等の調査も必要になります。さらに、ライセンシーとしては、将来、原作の関連作品が出てきた場合にこれを対象とするのか等も詰めておいて契約書に反映できるとよいでしょう。

②許諾対象となる利用行為(制作する映像コンテンツの確定)

 制作することができるのはアニメやCGアニメなのか、実写なのかというジャンル確定のほか、映像コンテンツが劇場公開されるのか、ネット配信されるのか、テレビ放送されるのか等、ライセンス契約によって作ることができる映像コンテンツの属性・利用方法を明確にして確定することが必要です。また、映画であれば何作まで作ることができるのか、その他の動画であれば何話ないし何シーズンまで作ることができるのか、といった点の確定も重要です。

(2)二次利用の可否・範囲を確定する

 前記(1)の②と重なる部分があるかもしれませんが、ライセンス契約に基づいて制作された映像コンテンツをどのように二次的に利用することができるのか、という点の確定も重要です。つまり、たとえば映画であれば、テレビで放送したりDVD等にして販売したりすることができるのか、ネット配信が可能なのか等、その可否と範囲の確定です。また、商品化(グッズのほか、ゲーム化等)、出版(小説化)等の可否・範囲の確定も重要です。

(3)著作者と著作権者が分かれている場合の対処を検討する

 ライセンス対象である原作について、著作者と著作権者とが分かれているというケースもよくあります。たとえば、原作が漫画の場合、原作の著作者はその漫画家であるが、その著作権はその漫画家自身の個人会社が有していたり、出版社が有していたりといった具合です。このようなケースでは、ライセンス契約自体はそのような著作権者(個人会社や出版社等)と結ぶことになりますが、著作者はこれとは別人格ですので、ライセンシーとしては、ライセンス契約で想定されている各種の利用行為(映像制作や商品化等)が原作の著作者の有する著作者人格権(同一性保持権等)を侵害しないように対処することが大事になります。

原作が漫画の場合

 このための方法としては色々とありえますが、たとえば以下のようなものが考えられます。

  1. ライセンス契約の契約当事者に著作者も入れ、ライセンス契約の内容を確認・同意した旨付記したうえでサインしてもらう。
  2. ライセンス契約とは別途、ライセンス契約に基づく利用行為に関する著作者人格権の不行使について著作者に同意してもらい、その書面を提出してもらう。
  3. ライセンス契約上、著作者人格権の侵害がない/侵害が生じない旨の表明保証や、万が一問題が起きた場合の紛争解決条項を規定する。

 このうち、最後の③は、著作権者であるライセンサーに著作者人格権に関連する最終的な責任を負ってもらうというもので、手当としては①から③の中で一番迂遠で弱いものです。ライセンシーのリスクヘッジとしては、当然ながら①や②が望ましいといえます。ただ、交渉力や時間・費用の制限、著作者自身がどのような人物か等、案件ごとの事情によって、次善の策として検討されるべきものだといえます。

(4)ライセンスの期間を確認する

 ライセンス契約の期間をどのように設定するのか、という問題です。映像コンテンツの制作期間のみならず、その映像コンテンツの公開/配信/放送期間や二次利用の期間もカバーすることができるような期間設定となっているかに注意する必要があります。

(5)対価を設定する

 ライセンス契約に基づく対価(許諾料)をいくらにするのか、一括払い式にするのか、分割払い式にするのか、また、二次利用に関するロイヤルティ(許諾料)をどのように設定するのか(想定される二次利用ごとに料率が異なるのが通常です)、その計算式等を確定する必要があります。また、特に海外との契約の場合には一定事由が生じると払うことになる成功報酬が規定されることもありますので、その計算方法もしっかりと詰めて規定する必要があります。

(6)利用する地域・言語を確定する

 制作された映像コンテンツに関して、二次利用も含めてどの地域で利用することができるのか、また、映像コンテンツに使用することができる言語は何か、吹き替えや字幕で使用可能な言語は何か等も確定する必要があります。特に地域・言語は、その原作に基づく他の利用(外国における映像化等)と競合しないかという観点からライセンサーも気にするポイントですので、事前にしっかりと詰めておくことが重要です。

(7)クレジット表記を明確にする

 制作されるコンテンツや二次利用による商品等にどのようなクレジット表記を付さないといけないのか、という事項も明確にする必要があります。クレジット表記はライセンサーないし著作者にとっても重要な事項ですが、著作者人格権への配慮という意味でライセンシーにとっても重要な事項です。
 なお、映像制作のライセンス契約で議論となるクレジット表記としては、必ずしもⒸマークのような著作権表記のみならず、プロデューサー表記であったり、原作表記であったりと、多様なものがありえます。

(8)監修・クリエイティブコントロールを明確にする

 映像コンテンツの内容や二次利用の方法・内容の監修にどこまでライセンサーが関与することができるのか、という事項を明確にすることも重要です。これはライセンサーの立場としては必ず規定すべきものですが、ライセンシーとしては、どの範囲までライセンサーの承認を得なければならないのか(たとえば、キャスティング、脚本にも承認が必要なのか等)、それは事前承認なのか、事後承認でよいのか、または協議事項で足りるのか等を詰めておく必要があります。

(9)帳簿・記録の閲覧(監査)の方法等を明確にする

 ライセンサーの立場としては、ロイヤルティが正確に計算されているかは重要な関心事項であり、映像コンテンツの利用(二次利用を含みます)の収支をチェックすることができることが重要となります。そのため、帳簿・記録の閲覧・謄写権限やその方法等が規定されることが多いです。ライセンシーとしては、事務手続の緩和のため、帳簿閲覧等の手続に回数制限を設けたり、事前の通知を求める等、十分な監査対応ができるような手続をあらかじめ決めておくことが肝要となります。

(10)原作素材や作者のプロフィール等の使用範囲を明確にする

 映像コンテンツやその二次利用のための広告・宣伝において、作者のプロフィールを使用したり、原作の素材を使うこと(たとえば、原作が漫画の場合、その漫画の一場面をそのまま、ないしは改変して使用するなど)が想定されます。ライセンシーとしては、想定される使用素材やその使用範囲がライセンス契約でカバーされていることを明確にしておくことが肝要です。なお、宣伝・広告に使われる素材の監修権限を規定されることも珍しくないので、前記(8)の留意事項がここでもあてはまります。

(11)続編の扱いを明確にする

 前記(1)②とも関連しますが、続編制作の可否(優先交渉権にとどまるケースもあり得ます)や、その制作のタイムリミット、続編が制作された場合のライセンス契約の期間延長の規定・その起算点(たとえば続編の制作が完了した日や、はじめてその続編が公開/放送/配信された日等)を規定しておくことも重要です。

最後に

 以上、映像コンテンツ制作に関するライセンス契約に特有の主たる注意ポイントを概説しましたが、実際の案件では上記に書かれたもの以外にも、各案件特有の注意点等があり得る点にはご留意ください。

 また、日本においては今回のようなライセンス契約が一般的ですが、外国の権利者との間の契約では、法制度や業界慣習の違いなどから、そもそも契約の建付けがライセンス契約ではなく、(映像コンテンツの制作に関する)権利譲渡契約である場合もあります。さらに、この場合、外国の当事者との契約ですので、契約言語の正本が何かや、準拠法、裁判管轄(または仲裁規定)などにも留意する必要があります。

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