デザイン会社やデザイナーが仕事を受ける場合に注意すべきポイント

知的財産権・エンタメ

 あるデザインの仕事をクライアント(ないし広告代理店等)から受けるに際して注意すべきポイントは何でしょうか。

 まずそのデザインが何の法律によって保護されるものなのかを認識しておくことが大事です。また、再委託の可否、下請法の適用の有無、対価と支払方法、デザインの権利の帰属、クレジット表記、ポートフォリオ等への利用の可否なども確認し、合意して、それを契約書等に残すことが重要です。

解説

デザインとは

 デザインには、プロダクトデザイン、グラフィックデザイン、ウェブデザイン、空間デザイン等々、実にさまざまなものが含まれています。それぞれのデザインの分野によってクライアント(ないし広告代理店等)の委託者も違えば他の関係者や商流もまったく異なります。
 そのため、細かい点でいえばそれぞれ注意すべきポイントが異なるとは思いますが、以下では、このようなデザインの仕事の受託に共通してあてはまるであろう注意すべきポイントを述べます。

 なお、以下では説明の便宜上、デザイン会社(法人)、デザイン事務所、デザイナー(個人)を、総称して「デザイン受託者」と呼ぶことにします。

自分(自社)のデザインは何の法律によって保護されるのかを把握する

 上記のとおりさまざまなタイプのデザインがありますが、デザインの種類によって保護されるべき法律も異なってくるといえます。

 たとえば、デザインの種類でみると、グラフィックデザインであれば主として著作権法による保護が考えられます(勿論、そのグラフィックの特性によっては、後述のように意匠法や商標法による保護も考え得るところではあります)。ウェブデザインは、中身についてはプログラムの著作物としての保護が考えられるほか、そのプログラムが具現化された表現(ウェブのレイアウトやグラフィック等)自体もプログラム著作物とは異なった次元での著作物として保護されることもあると考えられます。
 また、プロダクトデザインについては、いわゆる「応用美術」の著作物性という論点1がダイレクトに問題になることの多い領域でしょうし、意匠法による保護も考え得るところです。

【デザインの種類からみた保護】

デザインの種類 法的な保護
グラフィックデザイン
  • 著作権法による保護
  • そのデザインの特性によっては意匠法(※)や商標法(※)による保護
ウェブデザイン
  • 中身:プログラムの著作物としての著作権法による保護
  • ウェブのレイアウトやグラフィック等:著作物としての著作権法による保護
プロダクトデザイン
  • 著作権法による保護
    (ただし、「応用美術」の著作物性が問題になる可能性がある)
  • 意匠法(※)による保護

※保護されるためには法律に基づく所定の手続が必要

 他方、デザインの特徴・特性でみると、デザインが何らかの課題を解決している場合はそのアイデアの側面が特許法や実用新案法で保護されることも考え得るところです。そのほか、物品に関するデザイン(操作画面等の物品の画面デザインを含みます)については意匠法に基づく意匠登録による保護が考えられます。また、企業ロゴや商品ロゴ等、出所表示・識別機能を果たすもののデザインであれば、(厳密にはデザインのクリエイティブ面そのものを保護しているのではなく、標識にあらわれている営業上の信用を保護するものですが)商標法に基づく商標登録による保護も考え得るところです。ただし、これらの特許法、実用新案法、意匠法、商標法については、出願・審査・登録等の所定の法律上の手続を経て初めて保護されるものですし、それぞれ保護しようとしている対象が法律によって異なります。

【デザインの特徴・特性からみた保護】

デザインの特徴・特性 法的な保護
何らかの課題を解決しているデザイン
  • アイデアの側面:特許法(※)、実用新案法(※)による保護
物品に関するデザイン(物品の画面デザインを含む)
  • 意匠法(※)による保護
出所表示・識別するもののデザイン(企業ロゴ、商品ロゴ等)
  • 商標法(※)による保護
    (ただし、デザインのクリエイティブ面そのものを保護しているのではない)

※保護されるためには法律に基づく所定の手続が必要

 なお、以上のほかにも商品等表示や商品形態に関わるデザインについては、ケースによっては不正競争防止法による保護が問題となるでしょう。
 クライアントとの仕事にあたっては、契約の交渉の前提として、また自分(自社)のデザインの保護のためにも、そもそも自分(自社)のデザインが何によって保護されているのか、保護され得るのか(保護されるために出願・審査・登録等の手続が必要なのかも含みます)についてしっかりと把握しておくことが重要です。

再委託の可否について確認する

 クライアントとの契約に際して、デザインを再委託してよいのか、また再委託するためにクライアントの事前承諾を必要とするのか、事後承認や事前報告ないし事後報告でよいのか等もしっかりと詰めておく必要があります。というのも、デザインの仕事はデザイン受託者だけで完結するとは限らず、むしろ、デザイン受託者が受けたデザインの仕事の一部を第三者に再委託することも多いからです。また、クライアントから出される業務委託契約書にはデフォルトで再委託禁止の条項が入っていることも多く、あまり深く意識せずに再委託をしてしまうことによって契約違反をしてしまっていたということも珍しくはありません。

 さらに、デザイン事務所の場合は特にですが、デザイン会社やデザイン事務所のスタッフが従業員ではなく業務委託のデザイナーやアシスタントであることも珍しくありません。そして、このようなスタッフに対してクライアントから受けた仕事をお願いすること自体が、実は法律的には再委託に該当する点にも留意が必要です。この点は、なんとなく自分たち側の人間という感覚があるため、いわゆる「再委託」という感覚が生じず気が付きにくいので注意が必要です。

下請法の対象となる取引かを確認する

 「下請代金支払遅延等防止法」(下請法)という、下請業者の保護のための法律があります。デザインの仕事は下請法でいう「情報成果物作成委託」に該当することも多く、(「下請」という語感から勘違いされやすいですが、)実は、クライアントから直接ないし代理店を通じて受けたデザインの仕事の受託がこの下請法の対象取引となることもあります(ただし、そのほかにも、資本金の要件等を満たす必要があります。下請法の解説は、公正取引委員会中小企業庁のサイトでも確認することができます)。

 下請法では親事業者の義務や禁止行為が規定されていますので、交渉や違反行為があったときの対応のためにも、下請法の対象となる取引かを把握しておくのもよいでしょう。

対価と支払方法について確認する

 デザイン料(対価)がいくらなのか、一括払いなのか、分割払いなのかという点のほか、その支払期日(デザインの納期まで支払いがないのか)等の細かい点まで詰めておくのが大事です。特に、再委託が想定される場合、思わぬキャッシュフロー上のリスクを負うことがあります。

 また、デザイン業界においてはいまだに報酬の手形払いということも珍しくありません。この場合、早期にキャッシュが必要なため手形割引をせざるを得ないということもあり得るので、そもそも振込払いなのか、手形払いなのか、また、手形払いである場合は手形割引を想定しても問題ない金額設定なのかなど確認する必要があります。

デザインの権利は誰に帰属するのかを決める

 デザインの権利(前記2のとおり何の法律によってそもそも保護されるかは要確認です)の帰属をはっきりと決めておきましょう。実態として、このあたりはかなり曖昧に仕事が進んでしまうことも多いです。しかし、後になればなるほど紛争の可能性は高まりますし、交渉力の点からも議論しにくくなってしまいます。理想としては、仕事を始める前に権利がどちらに帰属するのかをしっかりと合意し、契約書等のエビデンスで残しておくことが賢明です。具体的には、①デザイン業務の委託者であるクライアント(ないし代理店)に帰属するのか、②デザイン受託者に留保される(つまり、権利は委託者には移転しない)のか、という点です。

 また、②デザイン受託者に留保される場合は、デザイン受託者に権利が留保されるとしても、そもそも委託の趣旨として、そのデザインをクライアントが利用することができる必要があります。このため、デザイン受託者からクライアントに対する権利の利用許諾(ライセンス)も規定する必要があります。この利用許諾では、どの範囲でいつまで使っていいのかという点のほか、どのような利用はNGであるか等も定めるべきです。

 なお、①デザイン業務の委託者に帰属する場合は、別の視点からも注意が必要です。「クライアントにデザインの権利を移転する」=「デザイン受託者も再委託先との契約上、再委託先のデザインに関連する権利をデザイン受託者に移してもらう必要がある」ということです。再委託先によってはどうしても権利は譲れないと言われることも珍しくありません(たとえば、デザイン素材に使用される写真の撮影を再委託先のカメラマンにお願いした場合における、写真の著作権など)。このような場合は、デザイン受託者とクライアントとの契約において、権利の移転の対象から明確に除外し、利用許諾形式にする等の対処が必要になります。

再委託先が権利を譲らない場合、クライアントへの権利の移転の対象から明確に除外し、利用許諾形式にする等の対処が必要

クレジット表記を明確にする

 デザイン受託者が望むクレジット表記(例:Design by ●●、Art Direction:●●、装幀:●●など多様です)がある場合、どのような場面でこのクレジット表示をしなければいけないのか、逆にいえばどのような場面では不要なのか、という範囲の確定と具体的な表記を明確にしておくことが肝要です。

ポートフォリオ等への利用の可否を確認する

 デザイン受託者がこれまでしてきたデザインの仕事・作品をポートフォリオとして公表したり潜在的クライアントに見せたりすることは、デザイン受託者自身のビジネス上、ブランディングという観点からも非常に重要なことです。デザインの権利の帰属がクライアント側にある(権利がクライアントに移転してしまっている)ようなケースでは、このようなポートフォリオ等での利用に関する許諾を得ない限り、勝手に発表したりすることはその(クライアントに移転した)デザインの権利の侵害になりかねません。
 そこで、あらかじめ、ポートフォリオや自社サイトの過去実績等として公表等することへの同意を得ておくことが肝要です。


  1. 「応用美術」とは、実用に供する物品に応用される美的な表現物などといわれたりします(法律上、特に定義されている用語ではありません)。この論点についてはここでは深くは立ち入りませんが、簡単にいえば、通常の著作物に比べて著作権法で保護されるためのハードルが高いと考えるべきか否かという論点です。 ↩︎

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