開発委託したコンピューター・プログラムを変更する際の注意点

知的財産権・エンタメ

 当社では、他社に開発委託してもらったコンピューター・プログラムを会社の基幹システム内で使用しています。この度、業務フローの変更に伴ってシステムの手直しが必要になったのですが、小さな変更なので社内のエンジニアに対応させようと思っています。また、最初の委託先は開発費用が高かったので、次期システムの開発の際には、今のシステムをベースに他社に開発委託をしたいと思っています。何か問題はあるでしょうか。

 現在使用しているシステムにおけるコンピューター・プログラムの著作権が、開発側(ベンダー)と依頼主であるユーザー企業のどちらに帰属しているかで結論が変わります。ユーザー企業がプログラム全体の著作権者である場合にはプログラムに変更を加えることは原則として自由ですが、ベンダーが著作権を持っている場合は、契約上特に規定がない限りプログラムの変更についてベンダーの承諾が必要になるので、注意が必要です。

解説

コンピューター・プログラムの著作権に関する原則

 コンピューター・プログラムは、著作物として著作権法上の保護を受けています。したがって、著作権者に無断で複製や改変することはできないのが原則です(著作権法21条、27条)。

 一方で著作権法は、プログラムの著作物の特質に配慮して、プログラムのユーザーの便宜のために、プログラムの所有者に対して一定の範囲でプログラムを複製、翻案することができる旨を規定しています(著作権法47条の3)。

 参照:「押さえておきたいコンピューター・プログラムの利用に関連する著作権問題

著作権法47条の3
  1. 対象はプログラムの著作物
  2. プログラムの著作物の所有者に認められている
  3. 自ら当該著作物を電子計算機において利用されるために必要と認められる限度」における複製・翻案が認められている

 もっとも、著作権法47条の3で認められる「複製」はプログラムを使用するためにハードディスクにインストールする、バックアップコピーをとるといった行為に限られ、「翻案」はバグの修正のように、その翻案を加えなければプログラムが正常に機能しない時に必要と認められる範囲の軽微な変更に限られるという解釈が一般的です。システムに新しい機能を追加したり、使い勝手を向上させるために画面のデザインを変更したりする行為は、「プログラムをコンピューターで使用するために必要と認められる限度」は超えているといえるでしょう。
 なお、著作権法47条の3はプログラム自体について適用されるものであり、システムの開発委託を行った際にベンダーから提供されることが多い設計書などのドキュメントは含まれないことにも注意が必要です。

 設例にある次期システムの開発のための変更はもちろん、当初のシステムがコンピューター上で問題なく動いたのであれば、業務フローの変更に伴うプログラムの変更は、たとえ軽微な変更でも「プログラムをコンピューターで使用するために必要と認められる限度の翻案」は超えていると考えられます。そこで、会社がこのような変更をプログラムに加えられるかどうかを考えるにあたっては、まず、会社がシステムの著作権を持っているかどうか検討する必要があります。

誰がコンピューター・プログラムの著作権を持つか

 では、コンピューター・プログラムの著作権は、誰が持つことになるのでしょうか。

ユーザー企業の社員がシステム開発した場合

 ユーザー企業が社員としてシステムエンジニアを雇用していて、社員にシステム開発を委託する場合には、著作権法の職務著作の規定(著作権法15条2項)がありますので、プログラムの著作者は、原則として社員個人ではなくユーザー企業であり、著作権もユーザー企業に帰属することになります。

 参照:「退職した社員が作成した資料を使っても著作権の問題はないか

外部のベンダーがシステム開発した場合

 開発委託契約を締結して外部のベンダーに開発を委託したプログラムの場合、プログラムの著作者はベンダーになります。そこで、プログラムをユーザー企業に引き渡した後の著作権は誰が持つのかという問題が生じます。開発を委託したユーザー企業の立場から見れば、どんな権利に基づいてそのプログラムを使用できるのかという問題です。

(1)著作権譲渡を受ける場合

 1つ目のパターンは著作権譲渡です。開発委託契約の規定としては、ユーザー企業からベンダーに対して対価が支払われることにより、プログラムの著作権がベンダーからユーザー企業に移転するというような規定が多いです。著作権譲渡をしても著作者人格権は譲渡できませんが、この点については、「ベンダーは著作者人格権を行使しない」という規定を入れる場合が多くみられます。

 参照:「外注して制作した映像の著作権者は誰なのか

 なお、コンピューター・プログラムの場合、著作権譲渡にあたってはプログラムに改変を加える権利も当然に譲渡する意図だと思われますが、その場合は、翻案権を譲渡する旨を明記する必要があります(著作権法61条2項)。具体的には、「全ての著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む)を譲渡する」と書けば良いでしょう。

 上記のような規定に従って著作権の譲渡を受ければ、ユーザー企業は、納品されたコンピューター・プログラムに改変を加えることも可能です。

外部のベンダーがシステム開発した場合(著作権譲渡を受ける場合)

(2)著作権譲渡を受けない場合 - ライセンス型

 2つ目のパターンは、ライセンスの付与を受けるパターンです。制作されたコンピューター・プログラムの著作権はベンダーが持ち続け、ユーザー企業は、ベンダーから許諾を得てコンピューター・プログラムを使用するという権利関係になります。

 特定のコンピューター・プログラムの制作を委託された場合、たとえ契約書に明記がなくても、完成しユーザー企業に引き渡されたコンピューター・プログラムを、作業指示書等に記載された範囲で使用することについては、当事者間で合意があると言える場合がほとんどでしょう。
 しかし、ユーザー企業内で改変を加えて使っても良いのか、ベンダー以外の会社に委託して改変を加えて良いのか、といった点については、ベンダーとユーザー企業の間で理解が異なる可能性がありますので、著作権譲渡を受けることができない場合には、ユーザー企業の権利について慎重に明確に規定しておくことをお勧めします。

 なお、コンピューター・プログラムの開発委託の場合、著作権譲渡にもいくつかのパターンがあります。完成したプログラムの全ての著作権がユーザー企業に譲渡されていれば安心ですが、プログラムの中で汎用性がある部分はベンダーが著作権を保持し、ユーザー企業のニーズや業務に合わせて追加したモジュールなどについてはユーザー企業に帰属させたり、ベンダーとの共有としたりするパターンも多く見られます。この場合、ベンダーが著作権を有している部分についてはユーザー企業はライセンスによって使用させてもらっていることになるので、ライセンス型と同様の注意が必要です。

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