自社製品デザインと類似した他社製品を見つけた場合の対応

知的財産権・エンタメ

 他社が、当社製品と同じようなデザインの製品を販売していることがわかりました。当社製品については意匠登録をしています。当社はどのような対応を採ることができるでしょうか。

 自社の登録意匠と他社製品との類否を判断し、他社製品の販売が意匠権侵害といえる場合には、差止や損害賠償を求める警告書の送付や訴訟提起を検討することが可能です。

解説

意匠権の効力

 意匠権者は、業として登録意匠およびこれに類似する意匠の実施をする権利を専有するとされており(意匠法23条)、他人が登録意匠・類似意匠の実施を行うことは、意匠権侵害に該当します。

 意匠の「実施」とは、意匠に係る物品を製造し、使用し、譲渡し、貸し渡し、輸出し、もしくは輸入し、またはその譲渡もしくは貸渡しの申出(譲渡または貸渡しのための展示を含む)をする行為をいいます(意匠法2条3項)。

意匠権侵害の要件

 意匠権侵害というためには、以下の要件を満たす必要があります。

【意匠権侵害の要件】

① 意匠権者が意匠権を有すること

② 他社製品の意匠が登録意匠の意匠と同一または類似であること

②-1 物品が同一または類似であること

②-2 形態が同一または類似であること

③ 他社が意匠の実施(当該製品の製造、使用または譲渡等)をしていること

 上記の要件の中で、よく問題になるのは、②の点です。

物品が同一または類似であることの判断基準

 意匠は物品と一体をなすものですので、意匠が同一または類似であるというためには、意匠に係る物品が同一または類似であることが前提になります(最高裁昭和49年3月19日判決・民集28巻2号308頁)。

 物品が同一または類似といえるかどうかは、物品の用途と機能で判断されます。用途も機能も同一であれば、同一物品であり、用途は同一で機能が異なる場合は、類似物品であると解されています(大阪高裁昭和56年9月28日決定)。

 たとえば、登録意匠に係る物品が「マニキュア用やすり」で、他社製品が「爪やすり」であれば、いずれも爪の手入れ用のやすりを意味し、用途も機能も同一ですので、両者は、意匠に係る物品が同一といえます。

形態の同一または類似

 意匠法は、登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は、需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものとすると定めています(意匠法24条)。

 そして、具体的な判断基準としては、以下のように解されています。

知財高裁平成23年3月28日判決
「意匠の類否を判断するに当たっては、意匠を全体として観察することを要するが、この場合、意匠に係る物品の性質、用途、使用態様、さらに公知意匠にはない新規な創作部分の存否等を参酌して、取引者・需要者の最も注意を惹きやすい部分を意匠の要部として把握し、登録意匠と相手方意匠が、意匠の要部において構成態様を共通にしているか否かを観察することが必要である。」

 そこで、意匠の形態の類否について判断する際には、以下の点を検討することになります。

【意匠の形態の類否判断】

(1)基本的構成態様と具体的構成態様を認定する

(2)要部を認定する

(3)共通点と差異点を認定する

(4)意匠を全体として観察する

 たとえば、登録意匠が図1、他社製品が図2である場合には、以下のように判断します(いずれも、下端面に長方形状のやすりが埋設されています)。

【図1:登録意匠(マニキュア用やすり)】

図1:登録意匠(マニキュア用やすり)

出典:意匠登録第1127832号、大阪地裁平成23年9月15日判決


【図2:他社製品(爪やすり)】

図2:他社製品(爪やすり)

出典:大阪地裁平成23年9月15日判決

基本的構成態様と具体的構成態様の認定

 まず、基本的構成態様(大まかな構成)と、具体的構成態様(詳細な構成)を把握します。

 登録意匠の基本的構成態様としては、D字状の本体と、下端部に埋設するやすりからなり、本体に円弧状に盛り上がる隆起部があります。具体的構成態様としては、本体は一端が鋭角で立ち上がり他端が鈍角で立ち上がるD字形状板、隆起部は本体の鋭角で立ち上がる一端から、外周縁と一体となるように形成され、外周縁の半分を過ぎたあたりから、外周縁の内側に円弧状に盛り上がり、さらに内側に進むに従い緩やかに隆起が消失するよう面が連続するよう形成され、やすりは下端部に埋設されています。

 他社製品の基本的構成態様としては、意匠登録の基本的構成態様に加えて、本体の下側端部に穿孔部分を設け、鎖を遊貫しています。具体的構成態様としては、意匠登録の具体的構成態様に加えて、鎖は本体の鋭角で立ち上がる一端部を穿孔し、その孔に球状鎖が遊貫されており、隆起部内側の傾斜下端は、平面部との間に明確な境界を形成しています。

要部の認定

 爪やすりの性質、用途、使用態様(爪の形状を整えるための研磨具で、やすり部を備えていれば本来的な機能を果たすことができるが、全体のデザインについては種々のものが考えられ、使い勝手を左右する。片手で把持して使用する)や、出願日前の意匠公報(図3。本体がD字状で、底面部が楕円形状のやすり面となっており、本体の外周縁部付近と底面部付近が隆起し、本体側面部の中央が窪んだ形状となっているマニキュア用やすり)からすると、登録意匠において、需要者の注意が惹き付けられる要部は、本体、隆起部、やすりに係る具体的な形状であると考えられます。

【図3:出願日前の意匠公報】

図3:出願日前の意匠公報

出典:意匠登録第1098852号、大阪地裁平成23年9月15日判決

共通点と差異点の認定

 登録意匠と他社製品では、登録意匠の要部である本体、隆起部、やすりに係る具体的な形状が共通しています。
 差異点として、他社製品は、①鎖がある、②隆起部内側の傾斜下端に平面部との境界がある(図4)、という点があげられます。

【図4:他社製品の隆起部内側の傾斜下端】

図4:他社製品の隆起部内側の傾斜下端

出典:大阪地裁平成23年9月15日判決

意匠を全体として観察する

 意匠を全体として観察すれば、以下のとおり、①②の差異から受ける印象は、要部が共通していることから受ける印象を凌駕するものとはいえないと思われます。

①鎖

 ありふれた形状の球状鎖が付属していたとしても、「同じデザインで鎖付きのもの」との印象を与えるだけで、全体として異なる美感を与えるものではないと解されます。

②平面部との境界

 境界は視覚的に目立つものではなく、また、登録意匠には区切る線は存在しないものの、隆起部、隆起部内側の傾斜、平面部の各範囲が他社製品と大きく異なるわけでもないので、境界の存在によって異なる美感を生じさせるとはいえないと解されます。

 よって、登録意匠と他社製品の意匠は、視覚を通じて起こさせる美感を共通にしており、類似するといえます。

意匠権侵害の効果

 意匠権者は、自己の意匠権を侵害する者(または侵害するおそれのある者)に対し、侵害行為の差止を請求できます(意匠法37条)。また、意匠権の侵害者に故意または過失がない場合を除き、損害賠償(民法709条、意匠法39条)を請求することもできます(意匠法40条により過失は推定されます)。
 そのため、他社製品の販売が意匠権侵害といえる場合には、差止や損害賠償を求める警告書の送付や訴訟提起を検討することが可能です。

 実際の事案においては、意匠の類否の検討や、他社から意匠登録の無効を主張されないかなどについて、専門的な判断が必要になります。また、製造メーカーではなく販売店に対して警告書を送付する行為は、場合によっては不正競争防止法2条1項15号に該当する場合もあります。そのため、知的財産を専門に扱う弁護士や弁理士に相談しながら進めることが望ましいと思われます。

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