著作物をデータベース化する際に注意すべき侵害行為

知的財産権・エンタメ

 当社では、業界情報誌のデジタル版を購読しています。関係部署内の端末であれば自由に閲覧できるというライセンスです。情報を効率的に活用するために、過去記事全文をデータベース化してイントラネットに置き、関係部署内の端末からアクセスできるようにしたいと考えていますが、問題はあるでしょうか。情報誌の目次のみをアップする場合はどうでしょうか。

 社内のイントラネットに置く場合、同一構内であれば公衆送信にはあたりません。ただし、データベース化するために複製行為が行われるので、個々の記事の複製権の侵害に該当すると考えられます。また、情報誌における素材の選択または配列に創作性が認められる場合には、編集著作物の著作権侵害にあたらないかどうかという検討も必要です。

解説

著作物をデータベース化する際に注意すべき侵害行為

編集著作物とは

 雑誌や新聞、または百科事典のように、多くの記事や項目がまとめられている編集物については、掲載されている個々の記事や項目の著作権の他に、編集物全体の保護の有無についても注意する必要があります。編集物の中でも「素材の選択又は配列によって創作性を有するもの」は、編集著作物として保護されているからです(著作権法12条1項)。

 著作権法には編集物の定義はありませんが、著作権法上、個々の素材が著作物であることは要求されていないので、複数の著作物を編集したものに限らず、単なる事実やデータのように著作物にならない情報を編集したものも、素材の選択または配列によって創作を有する編集物であれば、著作物(編集著作物)として保護されることになります。個々の素材が著作物ではない編集物の例として、電話帳や単語帳などがあります。

 なお、編集物と同様に情報を整理したものとして、データベースがあります。データベースについては著作権法上に定義があり、「論文、数値、図形その他の情報の集合物であって、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したもの」を意味します(著作権法2条1項10の3)。著作権法は、データベースを編集著作物とは別個に保護しています。データベースが「情報の選択又は体系的な構成によって創作性を有するもの」である場合には、著作権法の保護を受けます(著作権法12条の2)。

編集著作物の創作性

 「素材の選択や配列によって創作性を有する」といえるためには、素材の選択または配列が具体的に表現されたものについて、ありふれたものではないという程度に作者の個性が発揮されていることが必要です。英単語がアルファベット順に配列されている場合には配列に創作性があるとはいえませんが、単語をグループ毎にまとめて並べているような場合は、創作性が認められる可能性があります。なお、編集著作物は「あくまでも具体的な編集物に具現化された編集方針を保護するもの」であって、具体的な編集対象物を離れた編集方法それ自体をアイデアとして保護するものではありませんケイコとマナブ事件・東京地裁平成16年3月30日判決・裁判所ウェブサイト参照)。

 設例の業界情報誌は、掲載する情報や、図表、写真などの選択や配列の創作性の程度によっては、編集著作物性が認められる可能性があると考えられます。また、目次の個々の項目(記事のタイトル)は著作物ではない可能性が高いですが、項目の選択と順列に創作性がある場合は、目次全体が編集著作物として保護される可能性があると考えられます。

編集著作物の著作権侵害

 編集著作物は、それを構成する個々の素材とは別個の著作物です。したがって、設例の情報業界誌が編集著作物だとしても、編集著作物の成立が素材に含まれる著作物の著作権に影響を与えることはなく、編集著作物の著作権は、編集された素材である著作権に及ぶことはありません(著作権法12条2項)。

 著作物を素材とする編集著作物の場合、個々の素材を独立して利用する場合には編集著作物の著作権者の権利は問題になりませんが、素材の選択または配列の創作性を有する部分を利用するのであれば、素材である著作物の著作者の権利が働くと同時に、編集著作物の著作者(編集者)の権利が働くことになります。設例のデータベースについては、業界情報誌に含まれる個々の記事が、元の誌面とはまったく別個に選択され構築されているのであれば、各素材の著作権について検討すれば足ります。

複製権の侵害

 一方、誌面や目次が編集著作物にあたり、複数の記事や図表などがレイアウトされた誌面がそのままデータベースに入っている場合や、目次をそのまま利用する場合、これらをアップロードすることは複製行為であるため、個々の記事に加え、編集著作物についても複製権侵害の問題が生じます。著作権における「私的使用」とは、「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること」と規定されており(著作権法30条1項)、会社内における使用目的は私的使用には含まれないと解されているからです。

 参照:「新聞記事をコピーして社内で利用することの問題点

イントラネット環境下でのポイント

 著作権法上、公衆送信とは、公衆によって直接受信されることを目的として、無線通信または有線電気通信の送信を行うことをいいますが、プログラムの著作物以外の著作物の場合、同一構内における送信は公衆送信にはあたらないと規定されています(著作権法第2条1項7の2)。したがって、イントラネットが同一構内にのみ設置されている場合には、情報誌の記事や目次をイントラネットにアップロードしても、公衆送信権の侵害にはなりません。ただし、前述のようにイントラネットに記事や目次をアップロードする際に複製が行われるので、イントラネットへの掲載であっても、複製権の侵害は免れないことになります。

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