共同著作になる要件

知的財産権・エンタメ

 当社が制作する小冊子の中で、ある町についてとりあげることになり、現地在住のA氏にコーディネートを依頼しました。A氏は取材先の選定やスケジュール調整の他に、町の歴史や現状についての説明や、参考資料を提供してくれました。記事にはA氏から聞いた内容も反映したため、記事原稿をA氏に見てもらい、さらにアドバイスも受けました。できあがった記事について、A氏は共同著作者として権利を持つのでしょうか。

 本件の記事に対してA氏が創作的に関与しているのであれば、A氏は共同著作者として本件記事について権利を持つことになります。ただし、A氏が語った内容がほぼそのまま記事になっている場合や、記事原稿に対するA氏のアドバイスに創作性が認められるような事情がない限り、本件におけるA氏の関与はいずれも補助的なものと思われます。その場合は、A氏が本件記事の共同著作者になることはないでしょう。

解説

共同著作物とは

共同著作物の定義

 著作権法上、2人以上の者が共同して創作した著作物であり、その各創作者の著作物に対する寄与分を分離して個別的に利用することができないものは、「共同著作物」とされています(著作権法2条1項12号)。

 共同著作物となるための要件は(1)共同で創作したこと(2)分離利用が不可能であること、の2つです。

【共同著作物となるための要件】

共同著作物となるための要件

結合著作物

 共同著作物と区別すべきものとして、「結合著作物」があります。結合著作物とは、創作に関与した創作者が複数いるものの、各創作者の寄与を分離して、それぞれ個別に利用することができる著作物です。結合著作物の典型例として、歌詞と楽曲があります。作曲家と作詞家が協力し相談しながら1つの作品を作り上げていく場合、上記(1)の「共同で創作したこと」という要件には該当すると思われますが、完成した歌詞と楽曲はそれぞれ独立して利用することが可能ですから、上記(2)の「分離利用が不可能であること」という要件は満たさないことになります。

 また、1冊の本の中のイラストと説明文について、その形態によって共同著作物になる場合も結合著作物になる場合もあると判断した裁判例もあります(「だれでもできる在宅介護」事件・東京地裁平成9年3月31日判決・判時1606号118頁、東京高裁平成10年11月26日判決・判時1678号133頁)。

共有著作権

 共同著作物と似た概念として「共有著作権」もあります(著作権法65条)。これは、1つの著作物の著作権を複数の著作権者で共有している著作権です。共同著作物の著作権も共有著作権に含まれますが、共有著作権の対象となる著作物は、共同著作物には限りません。

創作性の程度

どの程度関与すれば「創作」したことになるのか

 共同の著作物になるかどうかの重要なポイントの1つは共同で「創作」したことなので、どの程度関与すれば「創作」したことになるのか、創作性の程度が問題になります。

 この点については、通常の著作物とは異なる基準が適用されるという見解もありますが、一般的には、通常の著作物について著作権を取得するために必要とされる創作性と同じ程度の創作性があれば足りると考えられています。共同著作物の場合は複数の者が関与していますので、その各人について、創作したといえる程度の関与があるのか考慮する必要があります。

設例の場合

 設例の場合、A氏が関与した行為として(1)取材先の選定やスケジュール調整、(2)町の歴史や現状についての説明、(3)参考資料の提供、(3)記事原稿に対するアドバイス、などがあげられています。

 このうち、(1)取材先の選定やスケジュール調整や(3)参考資料の提供については、創作的に関与したとはいえないでしょう(「男たちよ妻を殴って幸せですか」事件・東京地裁平成16年2月18日判決・判時1863号102頁)。

 (2)町の歴史や現状についての説明に関しては、「文書作成への関与の態様及び程度により、口述者が、文書の執筆者とともに共同著作者となる場合、当該文書を二次的著作物とする原著作物の著作者であると解すべき場合、文書作成のための素材を提供したに過ぎず著作者とはいえない場合などがある」と述べたうえで、インタビューを受けて記事作成のための素材を提供したに過ぎない場合には創作的に関与したとはいえない、と判断した裁判例があります(「SMAP大研究」事件・東京地裁平成10年10月29日判決・判時1658号166頁、東京高裁平成11年5月26日判決)。

 また、(4)の記事原稿に対するアドバイスに関しては、単にそこに含まれる語句について指摘や修正をしたり、具体的な修正の指摘をせずに下線等を引いて注意を喚起したに過ぎない場合は、共同著作者になり得る程度にまで創作的に関与したとはいえないと思われます(「事実性と妥当性」事件・京都地裁平成16年11月24日判決・判時1910号149頁)。
 一方で、アドバイスにおける創意工夫や精神的操作の程度によっては、原稿に対してアドバイスをしたことが創作的関与のレベルに達しているとみなされる場合もあると思われます(「英訳平家物語」事件・大阪高裁昭和55年6月26日判決・無体例集12巻1号266頁)。

 いずれにせよA氏の関与を具体的に検討する必要がありますが、一般論として、設例のようなA氏の関与が「創作的」と認定されるためのハードルは高いといえるでしょう。

共同著作物の利用

 ある著作物が共同著作物である場合には、著作権のうち、財産権については共同著作者の共有となります。この場合、著作権の行使には他の共有者の同意を得なければならないなどの制約があります(著作権法65条)。また、著作者人格権についても、著作者全員の合意によらなければ行使できません(著作権法64条)。

第64条 共同著作物の著作者人格権は、著作者全員の合意によらなければ、行使することができない。
2 共同著作物の各著作者は、信義に反して前項の合意の成立を妨げることができない。
3 共同著作物の著作者は、そのうちからその著作者人格権を代表して行使する者を定めることができる。
4 前項の権利を代表して行使する者の代表権に加えられた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

第65条 共同著作物の著作権その他共有に係る著作権(以下この条において「共有著作権」という。)については、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡し、又は質権の目的とすることができない。
2 共有著作権は、その共有者全員の合意によらなければ、行使することができない。
3 前二項の場合において、各共有者は、正当な理由がない限り、第一項の同意を拒み、又は前項の合意の成立を妨げることができない。

 設例の記事がA氏との共同著作物ということになると、会社が小冊子を利用する時にA氏の同意を得る必要がある場合が出てきます。上で述べたように、A氏が共同著作者になるかどうかは具体的な関与の程度によって決まりますが、会社が記事について単独で著作権を持つことを確実にしておきたいのであれば、著作権の帰属について、あらかじめA氏から承諾を得ておくとよいでしょう。

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