海外展開でどうやって良いビジネスパートナーと巡り合うか

知的財産権・エンタメ

 当社は、これまで日本で製品を販売していましたが、この度、ベトナムに販路を求めて進出する予定です。その際に、現地で販売を展開してくれるようなパートナー企業を探しています。どうやったら、良いビジネスパートナーとなる企業を見つけられるでしょうか。

 現地でパートナーとなる候補の企業と知り合った際に、実際にそのパートナーと組むかどうかは、しっかりと検討して決める必要があります。知り合った相手が、自社とビジネスパートナーとして組み、将来永続的に協力関係を築くことができる会社かを、見極めるためにも、以下のようなポイントに注意して選定をするとよいでしょう。

  • 現地に行って、自分で情報を集めること
  • 複数チャンネルでの情報、現地の情報を収集すること
  • 現地同業者へのヒアリングを行うこと
  • 「オーナー」のキャラクターを把握すること
  • 紹介者の属性を考えること
  • 特に損得に関することについては、しっかりと細部の合意も形成すること

解説

現地パートナーの必要性

 外国でビジネスを展開する際に、その国の企業と合弁して会社を設立したり(ジョイントベンチャー)、販売代理店になってもらったり、製品のメンテナンスやロジスティックを任せる協力会社になってもらったりということは、しばしば必要となるところです。

 もちろん、独資の会社(自社の100%子会社)を設立して事業展開をするということも、十分に考えられます。独資の場合、経営方針をめぐって不毛な対立が生じたり、合弁会社を通じて営業秘密を合弁パートナーに吸い取られてしまうといったリスクがありませんので、そういった点では、メリットがあります。しかし、一方で、現地での販路開拓やサプライチェーンの構築、メンテナンス体制の構築、ロジスティックの確保などを自力でやらなければならないことになりますので、独資で展開するためには、そういったことに対応できる体制を整える必要があります。

 このような点から、特に中小企業においては、現地企業と合弁したり、販売代理店になってもらうなどの方法で、現地パートナーを活用することが、選択肢の一つとして重要となってきます

良い現地パートナーと組む必要性

 大手企業であっても、組むべき相手を間違えて、最終的には撤退や縮小に追い込まれたり、重要な営業秘密を盗られてしまったり、といったことは、頻繁に起こっています。もちろん、これらのリスクは、契約のスキーム作りや、知的財産権の活用、営業秘密戦略などでかなりの部分を回避することができますが、やはりビジネスを広げていくうえで、痛手になることは間違いありません

事例1

 A社は、ある国で、現地のB社と合弁を組んで小売りチェーンを展開していましたが、価格帯、販売方法などについて意見が合わず、合弁会社が勝手に経営方針を決めてしまうなどのトラブルが発生しました。

 また、B社は、合弁会社の利益を調整するために、仕入れをB社の関連会社から行うように密かに調達ルートを変更してしまい、これによって合弁会社が高値で仕入れをした結果、利益が出ない状態になり、配当もありませんでしたが、A社には、現地の言語を理解できるスタッフがおらず、現地の言語で作成された伝票類や一時帳簿の検証ができなかったため、これに気づきませんでした。

 最終的に、A社は、合弁会社の実質的なコントロールができなくなってしまい、収益も上がらなかったことから、撤退することとなりましたが、上記のように、B社によって意図的に合弁会社の価値が圧縮されていたため、極めて安い価格でA社が保有する合弁会社の株式をB社に譲渡することとなり、大きな損害を被りました。

事例2

 A社は、ある国で自社商品を展開するにあたり、現地企業であるB社と販売総代理店契約を締結しました。その後、長年にわたってその国で販売を続け、顧客も増えて売り上げも安定していきました。

 ところが、ある年から、ぱったりと発注が来なくなりました。不審に思って調べてみると、B社が勝手に類似品を製造して、A社商品と同じ名前で販売をしていることが判明しました。A社は、B社に対し、製品のメンテナンスの必要性などから、かなりの技術情報を教えていたところ、B社は、それを基に、地元の他社に類似品を安価で製造させたようです。
 さらに調査したところ、もともとA社の製品につけていた製品名についても、B社が勝手に現地で商標登録をしてしまっていたことが判明しました。

 A社としては、この国での販路を完全に奪われ、撤退を余儀なくされることになりました。

現地パートナーを見つけるきっかけ

 現地パートナーを見つけるきっかけは、様々ですが、代表的なところでは、以下のようなところかと思われます。

  • 日本貿易振興機構(JETRO)や地方自治体現地事務所などの紹介または商談会等の企画
  • 地方自治体などが設置する海外展開支援機関での紹介
  • 銀行の駐在員事務所の紹介または商談会等の企画
  • 日本からの視察や派遣ミッションに付随するマッチングイベント
  • 現地で行われる展示会や商談会など
  • 留学生OBなど、日本にネットワークを持つその国の人脈の利用
  • 現地の県人会、商工会、交流団体など
  • 日本での知人や取引先からの紹介
  • 有料コンサルタントによる紹介
  • インターネットや報道などを見ての飛び込みアプローチ

 上記のいずれの方法でもよいのですが、大切なのは、知り合った相手が、自社とビジネスパートナーとして組み、将来永続的に協力関係を築くことができる会社かを、しっかりと見極めることです

現地パートナーを選定する際の注意点

 現地パートナー候補と知り合った際に、実際にそのパートナーと組むかどうかは、しっかりと検討して決める必要があります。
 最終的には、経営判断ではありますが、以下のようなポイントに注意して選定をするとよいでしょう。

現地に行って、自分で情報を集めること

 最終的な経営判断をする人は、自分でその国に行き、現地の情報を自分で確認する必要があります。現地に行かなければわからない温度感や情報も、非常に大切です。パートナーの候補企業には何度も訪問したほうが良いと思いますし、業界やマーケットの状況なども自分で見て、どういった課題があるのか、温度感がどうなのかを、しっかりと見極める必要があります

複数チャンネルでの情報、現地の情報を収集すること

 海外で情報を収集するためには、一つの事柄について、複数の情報ソースから情報を得ることが基本です。ある会社の評価について知りたい場合、紹介者からの情報のみならず、同業者からのヒアリング、現地でのインターネット上などでの評判、消費者や購買層からの評価など、複数の情報ルートから情報を得るようにしましょう

 そのためには、その国のスタッフに協力してもらうことが必要です。紹介先や利害関係のあるところからの紹介ではなく、別ルートで、短期でも良いので協力してくれる現地人スタッフを確保し、上記のようなリサーチをしてもらうことは、非常に有効です。

現地同業者へのヒアリングを行うこと

 現地同業者内の評判も、ぜひ押さえておきたいところです。現地人スタッフがいれば、同業者へのヒアリング、業界団体への挨拶と知人作りなども、それほど難しくはない場合が多いと思います

「オーナー」のキャラクターを把握すること

 オーナー企業の場合、オーナーの経営姿勢、過去のビジネスの実績、過去にどのような仕事をしてきたかなどをしっかりと把握し、自社の社風にあうかどうかも、検証が必要です

 一方、オーナーは人間ですので、オーナーとの相性が良好であったとしても、相続やM&Aなどでオーナーが変わることはしばしばあるところです。オーナーとの良好な人間関係だけに頼らず、しっかりとした契約や知的財産の整備などを並行して進めておくことも重要です。

紹介者の属性を考えること

 紹介者が、紹介することによって利益を得るタイプの有料の紹介である場合は、長期的な視野がなく、短期的な視野に基づいて話を進めてしまうことも、時折散見されるところです。一方、紹介者が、その後も長くビジネスに関与して利益を得るタイプである場合は、比較的長期的な視野に基づいて紹介してくれる傾向があります

 また、現地に駐在した経験のある人からの「人脈」に基づく紹介は、有効に活用すべきではありますが、一方で、駐在していた時期が古かったりすると、すでに「人脈」も古くなっていることもありますので注意が必要です。そのあたりは、「複数チャンネル」の情報ソースで、紹介された人脈の鮮度や有効性を検証する必要があります

特に損得に関することについては、しっかりと細部の合意も形成すること

 ビジネスパートナーとトラブルになる理由で、最も多いのは、おそらく、最初に「そんなことは決めていなかった」というものではないかと思います。

 「赤字が出たらどうするか」、「利益が出たときの再投資と配当の比率をどうするか」、「販売方法についての意思決定はどうやって行うのか」、「経理や監査はどういった体制で行うのか」、「M&Aや相続で会社の支配権が移動したらどうするのか」など、様々な条件を決めておく必要がありますが、これらが十分に決められておらず、結果としてトラブルになってしまっている、といったような場合です。

 長いビジネスの中では、色々なことが起こります。あらゆる事態を想定して、あらかじめ決めておくことで、かなりのトラブルを回避できるものです

 日本風の、「定めなき事項は、双方誠実に協議する」といった姿勢は、かえってトラブルを呼んでしまうものだということを、海外ビジネスでは肝に銘じておきたいところです。

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